のほりひがし。 東の感想ブログ

【あらすじ感想・解説】映画『ベルリン・天使の詩』見るほどに深みが増していく物語

映画感想

今回は映画『ベルリン・天使の詩』。

1987年に公開された、フランスとドイツの映画で
ヴィム・ヴェンダース監督による作品です。
ハリウッド版として
リメイクもされています。

本来、撮影予定だったはずの進行が遅れて
その間の穴埋めとして
低予算で作られた映画が、この作品。
台本なしの撮影だったらしく驚きでした。

詳しく書いてあるので
よかったら見てみてください。
監督ヴィム・ヴェンダースによる『ベルリン・天使の詩』音声解説から知ることができる50の事柄

『ローマの休日』の撮影を
手がけたアンリ・アルカンが
映像監督を務められています。
引退寸前のところを、引き止められたと。

彼のモノクロな映像表現で
詩的な言葉の重みが、増して感じてました。
戦争の惨劇が、脳裏に浮かびます。

ここから先、ネタバレを含みますので
それでも良い人だけ進んでください。

あらすじ

人間の女性に恋をした
天使のダニエルがいました。
彼は彼女と同じ人になりたいと思うけど
それは天使の死を意味することに。

ラブストーリーでありながら
生死についても、考えさせられるお話です。

 

登場人物

■天使ダミエル
演:ブルーノ・ガンツ

人のことを話している時は
少し楽しそうな表情になるダミエル。
ラストに向けての
彼の変化が楽しかったです。

天使でありながら
カシエルよりもどこか人間的な感じが。
知らず、惹かれる存在に
似ていくのを感じていました。

■天使カシエル
演:オットー・ザンダー

ダミエルと長い付き合いの守護天使。
物語の後のカシエルが
すごく気になってる。

あまり感情を出さない天使達だけど
自分が持っていた
天使のイメージと真逆で
それがおもしろかった。

■ピーター・フォーク(本人)
アメリカのドラマ
『刑事コロンボ』の主演で
実際に活躍されていたピーター・フォーク。
映画でも、その本人役で登場しています。

ピーター・フォークが
画面に映っていると
ふわっと軽くなるような
不思議な感じがありました。

■マリオン
演:ソルヴェーグ・ドマルタン

サーカスで、空中ブランコを
披露している女性。
彼女の演技を、みんなで
見守っているシーンが好きでした。
自分も少しドキドキしながら
一緒に観てた。

 

感想

人に憧れる天使


Karina CubilloによるPixabayからの画像

舞台はベルリン。
東ドイツ政府によって
建てられた、ベルリンの壁が
まだ存在していた頃のお話です。
市内は東西で分裂している状態でした。

内容はシンプルで
人間界にいる天使ダミエル
(ブルーノ・ガンツ)

人であるマリオン
(ソルヴェーグ・ドマルタン)

恋をして、人間になるというもの。

ラブストーリーでありながら
哲学的な深いことも
問われている作品
でした。
 
言葉も詩的な表現が多くて
静かにスッと入ってくるような。
だからこそ考えさせられるっていう。

心の声のシーンが多いからか
映画を観ていながら、本を読んでいる
感覚にもなってました。
 
たくさんの苦しんでいる人を
見ていながらも、人に恋をして
人間になりたいと願ったダミエル。

愛はすごいなって思ったのと
この映画は、もっと深い何かが。

人よりも自由な天使が
どうして人間になりたがったのか。

進んでいくにつれて
この映画の言う、人の素晴らしさが
少しだけわかってきます。

鮮やかな色、触れたものの感触
味、匂いなど、自分たちが
当たり前に感じているものが
天使たちにはわかないのです。

そして、この映画の天使たちは
感情の起伏がほぼありません。

笑顔も、ほんのり口角が
上がるくらいで
淡々と毎日が過ぎていきます。

一度だけカシエルが
自殺しようとしている人を救えずに
声を荒げた
けど、それっきり。

けどそれは、人の人生での出来事を
なんとかしようとしたから
で。
天使たちの間で
感情が動くことは
やっぱり少ないことが
わかる場面でもありました。

 

先に人間になった元天使

人に感化されて心が動き
自分の意思を持ち始めた天使から
人間になっていく流れがありました。

こうして先に人間になった
元天使たちが、今度は人でありながら
天使に、人間を体験する
楽しさを伝えていく
のです。

元天使であるピーター・フォーク
人として生きることに
喜びを感じていました。

自分で体験していくことに
意味があって
傍観していることに
意味はない
ということも。

与えられた五感を使って
人間を楽しみたい
なと
この作品を通して、改めて思いました。

 

映画の深く考えさせられる部分


mbllによるPixabayからの画像

子供を見ながら、ダミエルたちが
うたっていたものが
考えさせられる内容でした。

なぜ 僕は僕で君でない?
なぜ 僕はここにいて そこにいない?
時の始まりは いつ?
宇宙の果ては どこ?
この世で生きるのは ただの夢?
見るもの 聞くもの 嗅ぐものは この世の前の世の幻?
悪があるって ほんと?
悪い人がいるって ほんと?
いったい どんなだった 僕が僕になる前は?
僕が僕でなくなった後 僕はいったい何になる?

『ベルリン・天使の詩』より引用

ダミエルは生まれるまでや
死んだ後のこと

そしてカシエルは
子供から大人になるまでを
子供たちを見て
心の中で語るシーンがあります。

 
天使の姿は大人には見えません。
けど子供には
普通に見えている
のです。

人はいろなものを知ることで
神聖なものから
遠い存在になっていく
のだと
カシエルは語っていました。

カシエルは、元天使の
ピーター・フォークにも
心を開いていない様子です。

彼はきっと
ダミエルの後は追わずに
これからも天使でい続けるんじゃないかと思いました。
カシエルはダミエルと違って
生まれる前や死んだ時のことを
うたっていないからです。

彼は子供から大人になるまで。
その先はありませんでした。

 

そして、この映画に出てくる
天使たちはみんな
人と変わらない服装をしています。
色も白ではなく、全員が黒。

想像していた
幸せそうな空気はありません。
むしろ人間の方が
色々あるけど
生きることを体験している
貴重な存在
に感じました。

 
また、エンドロールの前に
「すべての かつての天使に」というメッセージがあります。

もしかしたら
この映画を観ている人は
みんな、もともと天使だったのかもしれません。

こうして一人ひとりが
語り部になり、歴史を
繋いでいっているのかもと。
そう思う映画でした。

 

リメイク版『シティ・オブ・エンジェル』

『ベルリン・天使の詩』は
連続上映期間が30週間になる程の
記録的な大ヒット作品です。

そして11年後の1998年には
『シティ・オブ・エンジェル』
というタイトルで、リメイク版が公開されてました。

主演は、ニコラス・ケイジとメグ・ライアン。

天使や、天使達が集まる
図書館はそのままに。
現代のせわしない雰囲気からか
リメイク版では
天使のまとう空気を
より感じられて、それが好きでした。

原作とは違う展開が待っています。
想像していなかった展開に
グハッとやられた東でした。

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