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【ネタバレ注意・あらすじ感想】『血の轍』15巻 静子の生い立ちを知り、真実に向けて動き出す巻

マンガ・アニメ感想

こんにちはの東です。
今回は『血の轍』第15集のことを書いていきます。

作者は押見修造
(おしみ しゅうぞう)さん。
『ビッグコミックスペリオール』
2017年から連載中です。

静子の生い立ちが明かされていきます。
これまでの彼女が
あまりにぶっ飛んでいたからか
今の時間が、やけに静かで。

嵐の前の静けさでなければいいなと。
そう思いながら、ページをめくっていました。

ネタバレがあるので
それでも良い人だけ進んで下さい。

あらすじ

田舎で暮らしていた長部家は、3人家族でした。
主人公の静一と
静一に異常な愛情を注ぐ母の静子
そして父の一郎は亡くなってしまいます。

36歳になった静一に
中学の時以来になる
静子との再会の時がやってきます。

そこには20年くらい
経っているのに
当時と変わらない姿の静子がいました。
けどそれは、本当の静子ではありません。
時々、白髪の姿がちらつくのです。

ここにきて、現実を歪めてしまう
静一の無意識のフィルターが
薄れてきていました。

大人になった静一が
今の静子と向き合う様子が
描かれていきます。

 

登場人物

■長部 静一(おさべ せいいち)
中学2年生だった主人公は、36歳に。
その彼が、静子の回想で
中学を通り越して
また幼く戻っていくことになります。
過去を知ることが
本当の意味での解放に
繋がってほしいと思いました。

■長部 静子(おさべ せいこ)
静一の母親。
すっかり見た目の変わった
静子ですが
余計なものが取れたように見えました。
彼女の生い立ちを知ると
これまでの話も、見え方が変わってきます。

■長部 一郎(おさべ いちろう)
亡くなった静一のお父さん。
静子と出会った頃からの
一郎が出てきます。
まさかこんなことになるとは
思ってもみなかっただろうなと…。

過去の一郎に、これから
長部家に起こる出来事を
伝えたくなっていました。

 

感想

現実が見えてきた静一

母、長部 静子(おさべ せいこ)
息子の静一(せいいち)にとっての
事実を合わせるために、話が進んでいく巻です。
静一がずっと見ていた
昔のままの静子は消えかけていました。

年老いた彼女をずっと
自分で作ったフィルター越しに見ていた静一。
彼の頭の中だけが
変わらずにいたのでした。
 

すっかり大人になった静一と
静子との時間が描かれていきます。
自分たちは静一の側になって、その様子を見ることに。

若いままの静子、おばあちゃんの静子。
そして可愛い猫と
頭だけが子供の静一になっている奇妙な猫にと。

静子の家にいる間
静一の目に映っていた
彼女や猫の姿は、異様なものでした。
彼の心や過去の記憶に合わせて
見えるものがグラグラと変わっていきます。

それもあってか、静子が
自分の生い立ちを話している間は
穏やかとも違う、奇妙な静けさが漂っていました。

 
彼女の過去が描かれているページは
全部がうっすらとして見えます。
静子は、自分の周りの出来事や
人などの、すべてが遠く感じるのだそう。

当時から遠く感じていたことを
更に月日が経った今に、思い返す様子。

それでも彼女の話は
分かりやすく
子供に話して聞かせるように丁寧でした。

起きた出来事を、よく覚えているのです。
静一と再会しても、目の前にいるのが
静一だと分からないのに。
彼女の中でも、静一との時間は
止まったままに見えました。

 

「これから、私の人生がはじまるの。」

読み進めていくと
彼女も静一と同じように
過去に蓋をしていたことが分かります。
静子自ら「蓋をしてただけ……」と
言って、眉を下げ微笑んでいました。

俳優になりたいと思い
東京に出てきた静子。
そして出会ったのが、一郎でした。
当時はこれまで描かれていたような
ケンカもなく。
自然な流れで結婚した2人。
その代わりに彼女と
そして一郎も、夢を諦めていました。

幸せいっぱいの結婚生活。
というには、やっぱりどこか遠く。
静子にいつも付きまとう
さみしさが埋まることはありません。
彼女がこうなった原因の
根っこには家庭環境がありました。
 

そんな彼女が
「これから、私の人生がはじまるの。」と。

過去、静一の審判の時に
彼を見捨てた静子が
口にしていたのと、同じ言葉が出てきます。

けど自分の意思で選んだ夢が
叶うことはなく。

それでも彼女は、静一という
新しい命を授かることになります。
生まれた時の感動を知った静子。

ですがその気持ちも、長くは続かず。
彼女は赤ん坊の静一と
一緒にいても「遠いの。」と
ポツリ漏らしていました。

 
静一が生まれてもなお
さみしさを感じていた静子。
それでも、彼女にとって静一は
死んだら悲しい存在でした。
静子は、妹が死んでも
涙が出ないところまできていたのです。

もう普通でないことは
明らかだけど
当時の一郎は気付いていません。
そのまま静一が誕生し
育てれば、一番に彼女の
影響を受けるのは赤ん坊でした。
 

彼女は自分のさみしさを
埋めることも、幼い静一に求めていたんだと。

そして、あの異常だった愛情は
静一に自分と同じ思いをさせまいという
彼女なりの想いなのです。
それが行き過ぎたゆえに
静一は、今もなお苦しむことに。

 
彼女の回想は続きます。
横になって聞いていた静一は
いつの間にか
彼女の過去の記憶に、入り込んでいました。

場面は、静子が幼い静一を
抱き上げ、そのまま落としたあの丘へ。
静一は静子が手放したら
斜面を転がり落ちていく状態で、幼い姿になっています。

静一の記憶にあることと
今の静子の話すことは、一致しているのか。
2人とも、これまでにない様子で
目を合わせ続けていました。

続きを促す静一。
「わかんない……」と言う静子。
そんな彼女からの
「私は、あなたをころした?」の
問いかけに、幼い静一は
目を逸らすことなく答えるのでした。

 

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