のほりひがし。 東の感想ブログ

【ネタバレ注意・あらすじ感想】映画『千年女優』映画と嘘と美化した過去でできた物語

映画感想

こんにちはの東です。
今回は映画『千年女優』について書いていきます。

2001年に公開された
今 敏(こん さとし)監督による
長編アニメーション映画です。

人は過去を、当時のまま
思い出すことはできないのだと
千代子と映画を通して感じました。

ネタバレがあるので
それでもいい人だけ進んでください。

あらすじ


KON’S TONE(今敏さんの公式サイト)より出典

たくさんの映画に出演し
大人気女優だった
藤原 千代子(ふじわら ちよこ)。
そんな彼女が突然
女優を辞めてから、30年が経っていました。

そこで彼女のドキュメンタリーを
作ろうと、立花 源也
(たちばな げんや)らが
彼女を訪ねたことで、物語が始まります。

 

登場人物・声優

■藤原 千代子(ふじわら ちよこ)
声:荘司美代子(70代)
小山茉美(20~40代)
折笠富美子

純真な千代子。
「鍵の君」を探し続けていた
彼女だったから
女優として成功したんだと思った。

けど素晴らしい映画に
出演すればするほど
彼女の記憶に与えた影響が
大きくなっていたのが見えてきます。

■立花 源也(たちばな げんや)
声:飯塚昭三
佐藤政道(青年期)

千代子の大ファン。
彼女が失くした鍵を
大事に持っていてくれた人。
彼がいてくれて本当に良かった。

■井田 恭二(いだ きょうじ)
声:小野坂昌也

源也のもとで働くカメラマン。
千代子の過去の世界でも
カメラを撮り続けていた人。
彼のカメラには、どんなふうに
映っているのかが気になっています。

■鍵の君
声:山寺宏一

なんてこったって。。。
最後まで観て思った。
彼のことはあまりに断片的で
千代子の中にいる彼は、本当の彼なのか。

 

感想

千代子の元に戻ってきた鍵

主人公は有名な女優の
藤原 千代子(ふじわら ちよこ)
彼女は映画会社の看板女優でした。

多くの作品に出演してきた
千代子のエネルギーに
なっていたのが「鍵の君」の存在です。
彼女は、彼を探し続けることになります。

きっかけは女優を引退した
彼女を、ある映画制作会社の
人たちが訪ねたことでした。

それが社長の立花 源也
(たちばな げんや)

カメラマンの
井田 恭二(いだ きょうじ)

源也は千代子の大ファンで。
昔、彼女がいた撮影現場の
スタッフとしても一応面識のある人でした。
彼女が引退して30年が経った今
彼は千代子のドキュメンタリーを
作ろうと考えます。

さらに源也は
千代子が当時、失くしてしまった鍵を
ずっと保管していたのか
届けてくれることに。

それは千代子にとって
替えのきかない
とても大切な鍵でした。
こうして2人は、彼女の昔話の中に
入り込むことになります。

 

「鍵の君」を追い続けた千代子


映画.comより出典

現実の千代子は
70代のおばあちゃん

けど昔の記憶や映画の中にいる
彼女は、当時のまま。

千代子の記憶の中に、源也や恭二が
どういうわけか入り込んで
彼女を助けていくのが楽しかった。
10代から40代までの彼女が登場します。

千代子は、学生だった頃に
1人の男性と恋に。
それが鍵の本当の持ち主である
「鍵の君」
でした。

絵描きの彼は、血を流し
警察に追われていたところ。
彼は国家に対して
反対運動をしていた人だったのです。
その最中に出会ってしまうという。
ケガをした彼を
かくまっていた千代子。
一目惚れみたいだった。

けど鍵の君の顔だけ、常に影が。
しかも名前もわからないのです。
この時点で、悲しい気持ちになってました。

千代子はもう
彼の顔を思い出せない
んだと。
そして鍵の君を
「あの人」と言う彼女

自分はその時点で、きてしまいました。

彼女の記憶の中は
出演した映画のシーンや
撮影現場、彼女の日常
鍵の君との思い出
など
色々な場面が、次から次へと流れていきます。

そこで千代子がピンチになる度
源也が助けに入るのが面白かった。
恭二は撮ったり
源也にツッコミを入れたり。笑
彼らのおかげで
彼女が過去の記憶を
辿り続けられているようでした。

 

映画のような出会いを果たした千代子。
けど別れも突然に。
追っ手が近くにいると気づいたのか
彼は鍵を落として、そのまま
行方をくらましてしまいます。

別れの様子を見ていた源也は号泣。
いつの間にか、彼女の出演した
映画のワンシーンと
記憶が混ざっていたみたいで。

走っていく汽車を見て
「必ず逢いに行きます!」って
叫ぶシーンに変わってた。
彼女のデビュー作です。

それを源也は53回観ていたらしい。笑
そこまで熱烈なファンだったのかってビビってた。
恭二も、ドラマチックだと。

2人が感動するくらいに
映画のような出会いと別れを
千代子は経験していたのでした。

彼女の記憶は
現実と映画の世界が
混ざっている
のが分かると思います。
彼女の人生の一部は
映画でできていたのでした。

そうして演じていたのは
男性を追いかける役。
彼女は映画でも
映画の外でも、常に追い続けていた
のでした。

 

満州にて、物語がまた進んでいきます。
訪れた再会の時が。
けどそれは、映画の中のワンシーンで。
鍵の君らしき人物は
声は同じでも、見た目は違う人
なのでした。

鍵も返しそびれ、相手は
「いつか約束した場所で」と。
けどそれを聞いて
彼女の頭に浮かんだのは
過去に鍵の君と
指切りをした場面

その撮影をしていた時
本当の鍵の君は
どこで何をしていたのか。

彼女の記憶は
どんどん映画と
混ざってきているのを感じてた。

そうしてやっと鍵の君を
見つけるも、顔を合わせることもなく
また引き離され。

やっとのこと逢えたのは
彼が瓦礫(がれき)に描いた千代子の絵。

けど彼女は、それと対面した途端に
倒れてしまうのでした。

 

周りに仕組まれた結婚


アニメ!アニメ!より出典

彼女は多くの作品に出演し続け
鍵の君が、映画を見て
気づいてくれるかもしれないと思っていました。

けど彼女ももう歴の長い位置に。
映画の中でも、現実を見るようにと
言われる役を演じるようになります

その相手は、千代子の
初出演の頃からの先輩女優
島尾 詠子(しまお えいこ)

詠子は自分よりも、若い千代子を
よく思っていませんでした。

そんな詠子が撮影の合間に
鍵を盗んで、千代子は大パニック。

現場にいた人たちみんなで
詠子の隠し持っていた鍵を探す事態に。

そこには当時、彼女と同じ映画会社に
勤めていた源也の姿もありました

けど詠子の持っている鍵が
見つかるはずがなく。
心に穴が空いてしまった千代子は
それまで口説かれてきた監督と
結婚することを決めます

なのにその後、詠子と監督に
はめられたことが分かるっていう
ツライ事実が発覚。

そしてそれを待っていたとばかりに
鍵の君から、手紙が届けられることに。
その持ち主が、当時彼を追っていた
警官
で、もう嫌な予感がしてました。
彼が「申し訳ない」と
謝るワケも聞かずに
彼女は北海道へと向かうことになります。

やっとのことで着いた北海道。
それでもやっぱりで彼には逢えず
彼女はとうとう宇宙へ。
どこまで追いかけるんだーって
思ってしまった。笑

彼女はどこまでも
本当にどこまでも
永遠に追い続ける気でいた
のです。

けど終わりは突然に。

千代子は北海道へ失踪した後
映画の世界に復帰したものの
すぐに引退してしまいます

どうしてだったのか。

それは彼の描いた千代子は
もう今とは違う姿の
彼女になっていたからです。
千代子は、自分の老いた姿を
見られたくなかった
ようでした。

女優をしていたのは
鍵の君に逢うため。
その理由が、無くなった彼女は
突然姿を消したのでした。

 

(※結末)千代子は何を愛していたのか


映画.comより出典

まさかって。笑
自分は観ていた間、まったく気づかず。
最後に、うっそーーーんてなってました。
全部がひっくり返った気持ちに。

ドキュメンタリーの
インタビューをしているうちに
千代子の容体は急変。
病院に運ばれたものの
もう長くはないようでした。

弱々しく、「またあの人を
追いかけていくんですもの」と話す千代子。

そうして手には
あの鍵が握られていました。
だから悲しそうにしないでと
涙ぐむ源也に話します。

そこまでなのかと
そこまで鍵の君を想ってって
またきそうになってました。

けど続いた言葉が
「だって私、あの人を
追いかけている私が好きなんだもの」
です。
その言葉にドッフーーーって。笑

そう言う彼女は
声のトーンも少し変わって
ちょっと怖かった。

宇宙の果てまでどこまでも。
千代子は死後も
本当に、追いかけ続けるのかも。
そして、会えそうになったら
また行手が阻まれる展開を
望むのかもしれません。

千代子が残したたった一言で
映画一本から受ける印象が
変わってしまう
、すごい作品でした。

けどそう思わないと
彼女も自分を保つことなんて
できなかったんだと思う。

また、過去を過去のまま
覚えている人はいません。

生きる糧にするために
美化することも、必要だと思いました。

途中、彼女の幻覚に
老婆が何度も出てきます。

すごくイヤな感じで。

けど老婆が
どうして千代子を憎んで
そして、たまらなく愛おしいと
言い続けていたのか。

若い彼女への憎しみと
追いかけている彼女への愛しさの
両方を表した言葉
なのが分かるはず。

彼女がこれを自覚したのは
きっと引退を決めた時。

そして若い姿のまま
映画の中に生き続ける彼女を
彼女自身が、たまらないくらいに愛していた
と。

もっと広い意味で言えば
それは映画を愛するということ。

映画が好きで観ている人たちの
ことにも繋がっていくという
鑑賞者の心に寄り添ってくる映画
なのでした。

 

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