のほりひがし。 東の感想ブログ

コミック『HEAT-灼熱-』9・10巻 タオ親子の決着と、消えた630億円【あらすじ感想】

マンガ・アニメ感想

こんにちはの東です。
今回は『HEAT-灼熱-』9、10巻のことを書いていきます。

原作に武論尊(ぶろんそん)さん。
作画は池上 遼一(いけがみ りょういち)さんです。
1998年から2004年まで
連載されていた作品で全17巻に。

タオ親子のストーリーに決着がつきます。
ですが今度は、海崎の残した
630億のすべてが消え去る事件が発生。
すぐさま行方を追う唐沢たちを
次に襲ったのは、歌舞伎町で起きた大規模な火災でした。

ネタバレがあるので
それでも良い人だけ進んで下さい。

あらすじ

舞台は新宿歌舞伎町。
そこの闇金融に突然やってきた
主人公の唐沢辰巳がいました。

そんな彼は
日本最大の暴力団である
「関西山王会」や警察を相手にしても
怯むことはありません。

極道の世界では素人の唐沢が
街で名を馳せていく様子が描かれています。

 

登場人物

唐沢 辰巳(からさわ たつみ)
『新宿租界』という
ホストクラブのオーナー。
もう日々の事件が厄介すぎて
ホストクラブのオーナーだってことを
忘れる時があります。

藤巻(ふじまき)
「関西山王会」の元NO.3。
そんなに唐沢のそばに
いるのがいいんだって
唐沢といる時の藤巻を
勝男は、どう見てるんだろうと
思うことがあります。

村雨(むらさめ)
日本最大の暴力団
「関西山王会」の関東総本部長。
唐沢のそばにいたがる
藤巻を見て
村雨はまた思うことがありそうな。
いつの間にか、藤巻が
山王会と唐沢たちの間にいる
印象になってきていました。

石倉 義信(いしくら よしのぶ)
山王会を破門になり
レイモンド・タオの側についた石倉。
今回のことが、今まで彼の
してきたことをチャラにすることはありません。
それでも命懸けで助けられたりと
一人ひとりの間にあるものが
多すぎてました。

中谷 里見(なかたに さとみ)
唐沢の恋人。
彼女はタオ親子の件の後に
アメリカへ行くことを決めます。
あの唐沢にプレッシャーを
残して飛び立った里見。
また離れてしまった2人だけど
再会の時が、また楽しみになっています。

城島 陸(じょうじま たかし)
東京都副都知事であり
唐沢の仲間である
東新宿署副署長の今泉とも面識のある人。
唐沢と似たものを
持っている人物でした。

 

感想

9巻

石倉義信の欲と良心

レイモンド・タオの
お気に入りである紅(ハン)
ボコボコにされた唐沢 辰巳(からさわ たつみ)
その後も2人に
地獄を見せられた唐沢でした。

牢屋に閉じ込められ
どうすることもできないでいた時
そこに石倉 義信(いしくら よしのぶ)
現れたことで、反撃が開始します。

石倉は唐沢を助けるためだけに
動くような善人ではありません。
どさくさに紛れて
タオの一族を乗っ取る気でいるような人です。

それでも岩倉のわずかな良心が
唐沢にとって、絶大な助けとなっていました。
 

石倉はレイモンドと面識のある人です。
前は海崎 元一郎
(かいざき げんいちろう)

秤にかけられ、敗れていましたが。

けどもう海崎はいません。
ブログには書いていなかったけど
いざこざの最中に
レイモンド側の人によって
殺されていました。
 

なのでレイモンドの
懐にスッと入ることができたんだろうと。
けど彼は家族を
人質に取られている身です。
レイモンドに従う人たちは、みんなそうでした。

逆らえば家族の命が危険に。
だから心はどうであれ
逆らうことはできないのです。
 

そんな中で、最初は
唐沢の話に乗って
紅を唐沢のいる牢屋へ連れ込んだ石倉。

レイモンドが後ろについて
好き放題だった紅ですが
唐沢と1対1のバトルでは、最初から結果が見えていました。
 

レイモンドは残酷な人です。
彼にとって不要となれば
なんの躊躇いもなく殺してしまう
そういう人でした。

紅は可愛がられていた分
辛い思いをしたことがないのだと。
それを知る機会も与えられずに
唐沢と出会ってしまったのかもしれません。

そう思うと、父から
愛されることのなかった
息子のクーリー・タオですが
それは、ある意味では
幸運だったのではと。

紅の位置にいる
クーリーがいたかもしれませんでした。

 
そしてクーリーを知っている人は
彼が悪いのではなく
自分の分身に育てようとした
レイモンドこそが
悪なのをわかっていました。

けどやってしまったことは
もう取り消せないと。
あまりに多くの人を
殺してしまったことが
彼を苦しめることになります。

 

本当のレイモンド・タオ

重傷の紅を殺したレイモンドが
同じく負傷した石倉のことは
助けるという展開が。

また石倉はレイモンドと
似た部分があり、レイモンドは
自然と自分の過去を話していました。
 

唐沢の右腕を斬り落とすよう
レイモンドに、命じられた石倉。
彼に拒否権はありません。

けど彼は、ただ言われたままに
動くような人ではありませんでした。

「…オレが使いモンにならなきゃ、
それで済む話だ…」と言って
自分の胸にそれを。

唐沢も「あんた…
もっとワルだったはずだぜ」と
驚きを隠せないでいました。
 

ここにきて石倉にも変化が。
レイモンドには決して
理解できないことです。

この理解不能さと
タンの一族を
乗っ取る気でいた石倉を気に入り
レイモンドは、石倉のことを
生かしておくことにしたのでした。
 

そんな石倉が
自分の姿と重なり
レイモンドは、過去に
自分も乗っ取ることから
始まったのだと話し始めます。

なんと彼は
レイモンド・タオ本人ではなく
日本人だったのです。
 

彼はタオの持つ闇の地下金融に目をつけ
戦後の混乱期であることを
味方にし、タオの一族を
全て消し去ってしまったのでした。

そうすれば、レイモンドに
成り代わるのも簡単だと。
彼のやっていることは
ケンカではなく戦争の延長に感じています。
戦いのプロでした。

 
そんなレイモンドですが
彼にも手を出せない人がいました。
それが妹です。

彼女がいたおかげで
クーリーは、今まで生きてこれたんだと。
彼女がいなかったら
レイモンドによって殺されていた身でした。
 

「オレが、自分から手を握り返したのは、
この世で、妹しかいねェんだ!!」と
話すレイモンドは
どう見ても、心を持った人でした。

守りたいものがあるから
強くなれるって聞いたことがあります。

けど彼は子供の頃から
今でも手を握り返している
自分のことを
“弱さ”だと話していました。
 

それを聞いた唐沢も
弱さであることを否定はせず。
代わりに
「オレはその”弱さ”、嫌いじゃない……」と。

この時の、レイモンドの顔。
思いがけない言葉に
口が開いたままの
隙だらけになっていました。
 

それでも「オレや海崎に
“人間”は説けぬ!!」と
人を想う自分を、否定し続けるレイモンド。

彼はこの後
どういう選択を取るのか。
良心を取り戻してほしいなと思いました。

 
またレイモンドは長く生きている人です。
その過去には、唐沢の恋人である
中谷 里見(なかたに さとみ)
両親との接点もありました。

そして里見の両親がクーリーと
面識があったっていうのも驚きです。
けど2人は、それが原因で
殺されてしまったのだと判明。
 

この話を里見が、レイモンドから
直接聞くことになるっていう。
我慢の限界で銃口を
彼に向ける里見がいました。

けどそれを止めたのは唐沢と
そして上空から聞こえるヘリの音。
そこに乗っていたのは
レイモンドに銃口を向けるクーリーでした。

 
唐沢がいなかったら
あり得なかった展開が、次の巻で待っています。
けどこれまで親子がしてきたことが
消えることはありません。

2人分の苦しみが
本当に癒えるまでには
時間が必要だろうと。
それでもクーリーは
もうひとりではないのです。

「生きるしかねェぞ、タオ……」の言葉が響くラストでした。

 

 

10巻

唐沢のそばにいることを選んだ藤巻

タオ親子のエピソードに
決着がつき、次の話へ。
待った無しな、この感じ。笑

敵はこっちのことなんて
気にしちゃくれませんよねと。
次もまた仲間が減ってしまいます。

山王会も、上層部ではなく
下にいる人たちの
苦しい状況も見えてくる回でした。
 

今までトップの人たちばかりと
接してきた唐沢ですが
組織は3万もの人でできているのです。

一番下にいる人たちに
手を差し伸べて
歌舞伎町を手に入れようとすることは
難しいものではありませんでした。

けどそれも唐沢がいなければの話です。

 

前回、唐沢を助けるために
山王会の本家に突撃した藤巻(ふじまき)
「オレに”山王”を呉れや!!」と
叫んでいた彼ですが
タオ親子の件で考えが変わったようでした。

彼は村雨(むらさめ)の頭脳を
信頼していたのです。
藤巻は根っからの極道の人であっても
頭を使うことが苦手でした。

その点をカバーできるのが村雨です。
けど村雨も「おまえは
オレより”極道”として上……」だと
お互いに認め合える良い関係になっていました。
 

それでも5代目は村雨にと
考えを変えない藤巻。
彼は、あれほど夢見ていた
5代目の座よりも、唐沢の横に
いることを望んでいたのです。

その時の藤巻の表情。
いつの間にか、唐沢のいる
歌舞伎町が好きになっていた藤巻なのでした。
 

最初の頃はどんな関係だったっけと。
ちょこちょこ1巻を
見返したくなるのが、この作品です。

 

消えた630億

その頃、歌舞伎町で事件が発生します。
海崎が裏の顧客から集めた
630億のものお金が、まるまる消えてしまったのです。

これは裏金や汚れたお金を
堂々と使えるよう
海崎が日本での窓口として
タオ一族と組んでやっていたことでした。

住所や名前も、用意されているので
顧客はクリーニングされたお金を
何も気にせず、使うことができるのです。
 

その顧客たちのカードを
タオ親子の騒動で、一度ロックした海崎。

この総額を、唐沢が用意した口座に
すべて振り込もうとした時に
海崎は額を撃ち抜かれ、殺されていました。

 
それから、そのままになっていた
630億がすべて消えてしまったのです。

この大金を動かすためには
海崎だけが知っている
パスワードが必要なのに。
いったい誰の仕業だと
唐沢たちは困惑していました。

 
そこで唐沢は、海崎が
レイモンドの他に
従っている人がいる可能性に目をつけます。

ですが彼の交友関係を
調べていた東新宿署の副署長である
今泉(いまいずみ)は、その時既に
何者かによって、殺されていたのでした。

パソコンのデータが
消されていたことから
交友関係でバレたらまずいことが
あったんだろうと。
唐沢の読みが当たっていることを
証明していました。

 

同じ匂いのする唐沢辰巳と城島陸

今泉の葬儀に、彼と付き合いのあった
副知事の城島 陸
(じょうじま たかし)
が登場します。

持っていた花で、いきなり
東新宿署の署長である
栗木(くりき)の頬を弾いたり。
栗木や、初対面の唐沢も認める
変わり者でした。

 
この出会いを機に
歌舞伎町は再び戦場へ。
4方向から一気に燃え広がった炎により
大勢の人が
避難を余儀なくされます。
この火災よって歌舞伎町に
大きな更地が出来上がっていました。

犯人はここを
どうしようとしているのか。

「歌舞伎町は都にとって
金の成る木…”黄金卿”なんですよ」と
都知事に話す城島と
バチバチの唐沢の図ができていました。
 

焼けた土地の地権者を
調べ上げたことで
消えた630億円の行方までもが
見えてくるように。

歌舞伎町の中で
莫大なお金がグルグルと
移動しているのが面白かったです。

 
既に山王会から
絶縁されてはいたものの
元山王の和久田(わくだ)
純粋な人でした。
その彼や藤巻もが信頼している城島。
城島のしていることは
周りの人を助けたりと
感謝されるようなことでした。

けど唐沢は藤巻たちと
同じ視線を向けることはありません。
頭の切れる唐沢と、城島は
どこか似た部分があり
常に反発し合っているような関係でした。

似たもの同士による
歌舞伎町の奪い合いです。
 

またその周りでは、栗木に突然の逮捕状が。
彼は、城島の妹から
今泉と城島が、過去に
言い争っていたことを知ったところでした。

藤巻は、良い人だと思っていた城島が
敵だと知って、ひとりガーンと。笑
彼も純粋な人なのかもです。

他にも、城島のもつ私塾の
生徒による不穏な動きがありました。
色んな所で動いていることが
どう唐沢に絡んでくるのか。
そこも気になる流れでした。