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映画『ハムレット』悲劇が生んだ更なる悲劇【シェイクスピア・あらすじ感想】

映画感想

イングランドの詩人、劇作家のウィリアム・シェイクスピア(1564-1616年)によって生み出された四大悲劇(『ハムレット』『オセロ』『マクベス』『リア王』)の一つ『ハムレット』のことを書いていきます。

1601年に書かれたと推測されている長編の戯曲で、その量約4000行。

そのため1996年公開のイギリス・アメリカの合作映画は4時間に及びます。

今回はその4時間の映画、ケネス・ブラナーが監督を務めた1996年の映画『ハムレット』と

ローレンス・オリヴィエが監督を務めた1948年公開の『ハムレット』を観ての記事です。

また『ハムレット』はシェイクスピアが作家としてだけでなく、役者として出演した作品でもあるとのことでした。

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どちらの作品も主軸は同じですが、映画によって少し違うストーリーになっていたり、大幅にカットされている部分がありました。

19世紀に時代が変わっていますが、原作のセリフをカットせずに映画になっているのが1996年に公開された『ハムレット』です。

様々なシェイクスピアの舞台に出演している劇団ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー出身のケネス・ブラナーが監督と脚本、主演を務めた作品。

『ヘンリー五世』(1989)で監督デビューを果たし、『から騒ぎ』(1993)『ハムレット』(1996)で監督、脚本、主演を務めたとのことでした。

 

『ハムレット』あらすじ感想

デンマークの王子ハムレット。

彼の父である先王が死亡してから2ヶ月が経った頃のことです。

母のガートルードは父の弟であるクローディアスと再婚します。

ですがハムレットは、クローディアスが父を殺し、母や王座までもを奪ったことを知るとに。

その事実をハムレットに知らせにきたのは、なんと亡くなった王自身でした。

王は亡霊となり、ハムレットの前に姿を現したのです。

そして彼に復讐を果たすよう命じます。

そこでハムレットは頭のおかしくなったふりをして、亡霊の父の言うことが本当なのかを探り始めるのでした。

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先王の死により頭の狂ったふりをし、誰が父を殺したのか、真実を突き止めようとするのは非常に酷なもの。

狂ったハムレットの暴挙により、無実の人や彼の最愛の人までもが悲惨な末路を迎えることになります。

父の亡霊が見えたハムレットや、彼の親友ホレイショーを含め、夜の警備を行っていた男たち。

目撃者は複数いるけれど、もし母ガートルードには見えていなかった先王の亡霊が

彼女の言うように幻覚であったらと思うとゾッとします。

亡霊の言っていたことは真実だったけれど

自分だったらハムレットのような揺るがない信念をもてる気がしません。
 
また彼の狂ったふりは途中から演技なのか

それともハムレット自身がこの状況に本当に狂ってしまったのではないだろうかと、わからなくなる恐ろしさがありました。
 
そして皮肉なことに狂ったハムレットによる被害者となってしまったのが

最愛の女性オフィーリアと、彼女の父ポローニアス。

ポローニアスは激昂したハムレットに刺殺され

オフィーリアはハムレットからの散々な暴言やひどい仕打ちも受けていました。

そして終いにはオフィーリアの前からハムレットは姿を消してしまいます。

父親が最愛のハムレットに殺されたことと、そのハムレットが彼女の元を去ったことが重なり

オフィーリアは演技ではなく本当に気が狂ってしまうのでした。

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オフィーリアの絵は様々な画家によって描かれています。

中でも有名なものは、イギリスの画家ジョン・エヴァレット・ミレーが1851〜1852年にかけて制作した『オフィーリア』です。


出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
 

最期とわかっていてもなんて美しい絵なんだろうと。

彼女の最期は口頭でだけ伝えられている映画もあれば

流れるオフィーリアがこの後に死んでしまうとは思えない様子で歌っていたりと、作品によって違う描写がされていました。

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どうして王に従順に仕えてきたポローニアスが真っ先に殺され

次に貞淑な女性のオフィーリアが死ななければならなかったのか。

ポローニアスは先王の時から仕えていた重臣です。

また娘のオフィーリアや息子のレアティーズを気にかける様子もあり良き父として映っていました。
 
オフィーリアも父の言いつけを守り、現状を受け入れようとする女性であり、強く反抗することはありませんでした。

クローディアスの犯した兄殺しは、紛れもない真実です。

ハムレットもそこに巻き込まれた一人でした。

ですがそこでハムレットは亡き父の亡霊から知らされたことにより、復讐心を燃やしてしまいます。

そこにさらに巻き込まれていったのが罪の無いポローニアスやオフィーリアたちでした。

標的はクローディアス一人なはずなのに、ハムレットの意思とは関係なしに悲劇が増幅されていくという。

父が殺され自身の人生が狂わされたハムレット。

彼が生んだ更なる悲劇が描かれています。

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またハムレットに起きた悲劇のすべてを、後の王となる人物に伝えるよう託された人物がいました。

それが彼の親友であるホレイショーです。

二人の関係は話が進むに連れてより親密になっていきます。

多くの命が失われた中、最後までハムレットのそばにいたのがホレイショーでした。

彼も自害をしようとしますが、ハムレットはそれを止めます。

そしてホレイショーはハムレットの遺志を継ぎ、事の顛末を伝えていく役目を担うのでした。
 
けれどそれを託されたホレイショーが、本当に起きた出来事そのままを伝えるのか。

それでもハムレットはすべてをホレイショーに委ねます。

そしてホレイショーがその責務を全うしたのかということですが、それがこの作品そのものなのではないかと。

ハムレットにとってホレイショーは、そのくらい信頼のできる存在であったと思います。

彼こそが影の重要人物であり、ホレイショーがいなければ成立しないお話であるというところに至った『ハムレット』でした。

 

『ハムレット』の配信一覧

1996年公開『ハムレット』

1948年公開の『ハムレット』

 

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