『血の轍』2巻 歪んだ母の愛情にのまれていく静一【ネタバレ注意・あらすじ感想】
今回は『血の轍』第2集についてです。
作者は押見修造(おしみ しゅうぞう)さん。
『ビッグコミックスペリオール』にて
2017年から2023年にかけて連載されていた作品です。
キレイで優しいお母さんから一変
母、静子の様子が
少しずつ変わっていきます。
静一は、読み手と
同じ位置にいてくれる人、と思ってたら違いました。笑
登山中の事件がきっかけで
静一は、どんどんおかしい方向へと
巻き込まれていきます。
ネタバレがあるので
それでも良い人だけ進んで下さい。
あらすじ
田舎に暮らす長部家は、3人家族でした。
まるで恋人のようにして
静一に接してくる母の静子。
父の一郎は、物静かな人です。
ある夏休みのこと。
仲良しのいとこ、しげるを含め
親戚の人たちと長部家は、登山に出かけます。
その最中、しげるを崖から
突き落とした静子。
それを見てしまった静一。
その後の静子と
追い詰められた静一の姿が描かれていました。
登場人物
■長部 静一(おさべ せいいち)
中学2年生の主人公。
静ちゃん(せいちゃん)の
愛称で呼ばれています。
かわいそすぎる。。。
■長部 静子(おさべ せいこ)
静一の母親。
静一のためならと
何をしでかすか分からない怖さがありました。
最初の頃とは
見え方が変わってしまって悲しい。
■長部 一郎(おさべ いちろう)
静一のお父さん。
長部家の救いです。
彼はどこまで静子のことを
知ってるんだろう。
■吹石 由衣子(ふきいし ゆいこ)
静一と同じクラスの女の子。
彼女も頼みの綱に感じています。
■ 三石 しげる(みついし しげる)
静一のいとこ。
のおおおおおおおお〜。。。
感想
正気を失っているのかすら分からない静子
高い崖から長部静一
(おさべ せいいち)のいとこである
三石(みついし)しげるを
突き落とした長部静子
(おさべ せいこ)。
そして、それを見てしまった静一がいました。
「静ちゃん、ぎゅってして?」
しげるのいなくなった崖の上で
2人は抱きしめあっていました。
静子は背中ばかりが
静一は目が見開かれた表情が。
と思ったら急に
しげるを探しに行かなきゃと
フラフラしながらも走り出す静子。
静一も慌てて追いかけていきます。
暫く静子は
背中しか見えないでいました。
けど急に動き出した時の
表情は、それまでの静一と
同じようなもので。
彼女もずっと動揺したような
表情をしてたのかなと思ったけど
もしかしたら、あの静かな微笑を
浮かべてたんじゃないかとも思う自分がいます。
1巻の終わりで
ボソボソと独り言を
話し始めた時もありましたが
彼女が何人かいるような
奇妙な感じがしています。
そして、辿り着いた場所には
ボロボロのしげるが横たわっていました。
彼は意識が朦朧としながらも
なんとか一命を取り止めていたのです。
けどこれを見た時、2人は何を思ったのか。
静一は、とんでもない秘密を
共有させられてしまったような。
彼は涙を浮かべて駆け寄るも
静一を見るしげるの目は
何かを訴えているようでした。
そんな彼に、自分が突き落としたとは
思えない様子で、声を掛ける静子。
「痛い?」と聞く彼女に対して
あなたが張本人じゃないかーいと。
突き落とした静子は
別人だったのでしょうか。
全部を見ていながら
なんとか冷静さを保っていた
静一はすごいと思います。。。
そしてしげるは救護ヘリで運ばれることに。
その後に、涙を流して
「たすけて・・・」という彼女は
またさっきとは別人のようでした。
こっちはずっと
動揺しっぱなしの中で
静子は静かになったり
子供のようになったり
慌てたり心配してたり
と思えば、最後にはキレイな涙を浮かべていて。
もうジェットコースターのように
振り回されまくりでした。
どうして人を傷つけた人が
涙を流して、助けを求めるんだろう。
しかも一郎じゃなくて、自分の子供に。
それだけの何かがあるんだろうけど
助けを求められた側からすると
何が彼女にそうさせているのか分からず。
その場にいた人たちと一緒に
自分も、静子に巻き込まれてしまった1人でした。
秘密を共有した静子と静一
しげるは重体でした。
このまま意識が戻らない
可能性があるとまで言われてしまいます。
重い空気の中
警察による事情聴取を受けることに。
そこでも彼女は
本当のことを言いません。
そして静一も
彼女の言う通りだと
嘘をつくことを選びます。
もう後戻りはできませんでした。
嘘をつく時に歪む、彼女の表情。
表紙とかに描かれている
美人さんはどこにって。
そしてそれを、そばで
見なくちゃならない静一の心境。
自分だったら
心臓がもちそうにありません。
静一は、嘘をつく時の
彼女の様子がわかるように
なってきたんじゃないかなと。
自分は見てて
それまでの流れが
止まるような感覚になります。
静一が息を呑んで
見てるからかも。
彼女が真実を話すのか
嘘をつくのか
静一と同じような気持ちで
見ている自分がいました。
けど知らない人からすると
嘘をついた時の姿は
いつもと変わっていなさそうで。
静一から見える静子の姿と
他の人から見える姿は
違ってそうでした。
片目が歪んで見えたのは
静一だけに、そう見えていそうです。
知っている人と、知らない人では
住む世界が違うのを感じてます。
静子を助けなくちゃという
使命感にかられたのか。
静一が静子の証言を
肯定した時の表情は
極限まで達しているようでした。
究極の2択が用意されていて
どっちかを選ばなくちゃいけない。
答えによっては、しげるの為に
少しはなるかもしれないけど、静子が捕まります。
もう1つを選べば
親子で、しげるを
痛めつけたようなものです。
けど静子は助かります。
純粋だった静一も
嘘をつく為の、仮面の被り方を
覚えてしまったようでした。
親子だ。。。
静一じゃない人みたいだった。
あと子供の彼が、大人たちに
迫られる様子は、すごい圧でした。
けどそれも、知っているから
圧を感じているだけで
きっとみんな
立っていただけなんだろうと。
親戚の人たちも
静子の証言を信じきっていたので。
静一の選んだことが
後にどう彼自身に影響していくのか。
このまま話は進んでいきます。
別れ際、しげるのお母さんが
静子に謝っている姿を見て
アアアアアッてなっていました。
何も言えない。
こう言う時の静子は、無表情に見えます。
親子であり恋人のような関係に
家に帰ってからの静一は
静子のことが
いちいち気になって、気が気じゃありません。
そこに吹石 由衣子
(ふきいし ゆいこ)がやってきます。
ヤバイ予感しかしませんでした。笑
けど父の長部 一郎
(おさべ いちろう)や
由衣子が、静一たちの
張り詰めた空気を緩和させてくれてるような。
知っている人同士の関係が
ギクシャクしている分
何も知らない人の存在が
助け舟のように見えてた。
親子3人で、お見舞いに
行こうとしたところ
静一は1人留守番を選びます。
そして2人が出かけた後に
由衣子が家に来く展開を迎えます。
そんな由衣子に
助けを求めるように
何かを言おうとする静一。
けど彼は上手く言葉にすることが
できませんでした。
そして家に引き返してきた
静子が、2人のいる部屋に
入ってくるという。
空気が凍った。
静子と由衣子が
鉢合わせたことで
静子の暴走がスタートします。
由衣子は追い出されるように出ていき
その後、静子は静一を
一気に自分の方へと引っ張り込むのでした。
由衣子から受け取った
ラブレターを、2人で半分に
破った時の彼の表情。
それが更に破かれていった時の
静一は、涙を流していました。
そして笑っているのに
抜け殻になってしまったような
そんな彼がいました。
あんなに気になっていた
由衣子からの手紙。
ほっぺを赤くして
彼女と接していた時の
静一は、そこにはいませんでした。
自分から、母の胸に飛びついたのです。
2人だけの秘密が
静一を縛り付けることになっていました。
静子は、静一に彼女ができるのが
耐えられないと。
そして静一は
しげるのことで
1人では耐えきれないからなのか
お互いに泣きあって
抱きしめあって
2人の世界ができていました。
罪の意識を引きずる秘密は
良くも悪くも
人を強く結びつけるものなのでした。
コミック
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