【ネタバレ注意・あらすじ感想】映画『流浪の月』女児誘拐事件の裏にある2人の真実
こんにちはの東です。
今回は映画館にて公開中の
映画『流浪の月(るろうのつき)』について書いていきます。
原作小説の作者は
凪良ゆう(なぎら ゆう)さん。
映画の監督は李 相日(リ・サンイル)さんです。
『フラガール』『悪人』『怒り』で
様々な賞を受賞されているとのことでした。
ネタバレもあるので
それでもいい人だけ進んでください。
もくじ
あらすじ
ある雨の日
9歳の少女、家内更紗に
19歳の大学生、佐伯文が
傘を差してあげたのが
全ての始まりです。
女児誘拐事件として
多くの人の記憶に残ってしまった彼ら。
けど事件と騒がれていることの
真相を知るのはふたりだけなのでした。
登場人物・キャスト
■家内更紗(かない さらさ)
広瀬すず
女児誘拐事件の被害者として
世間に知れ渡ってしまった
当時9歳の少女。
周りの人が思うよりも
彼女は芯のある人でした。
■佐伯文(さえき ふみ)
松坂桃李
彼も複雑なものを抱えながら
更紗と出会ったことで
誘拐事件の加害者として、知れ渡ることに。
一生逃れられない
重い鎖に繋がれてるようだった。
■中瀬亮(なかせ りょう)
横浜流星
更紗の今の彼氏。
彼も彼で、問題のある家庭で育った人です。
父親のDVにより
母は亮を置いて、出て行ってしまっていました。
■谷あゆみ(たに あゆみ)
多部未華子
何も知らず、佐伯の彼女になっていた人。
彼女もまた、佐伯に
ずっと聞けないでいたことがありました。
不安をいつも抱えて過ごしてて
最後の展開が可哀想だった。
舞台挨拶
5/24に行われた舞台挨拶の中継を
たまたま自分も見ることができました。
その様子がこちらです。
演じた人にしかわからない話や
昔話、台本には無かったセリフなど
色々な話しを、聞かせてもらいました。
感想
女児誘拐事件の裏にあった真実
9歳の少女、家内更紗
(いえうち さらさ:広瀬すず)と
19歳の学生である
佐伯文(さえき ふみ:松坂桃李)。
雨の中、公園で更紗に
文が傘を差してあげたのが、全てのきっかけでした。
そこから文の家に、向かった更紗。
2人でご飯を食べて、帰るのかと
思いきや、彼女は帰りたくないと。
文にとっても、意外な返事。
どうしてなのか。
更紗は、おばに引き取られていました。
父が他界し、残された母は
更紗を育てようとせず
行方をくらましていたのです。
そうして、おばの家に
住むことになったものの
これまでのような自由はなく。
そして夜中には、従兄弟が
更紗の部屋に忍び込んでくるという。
彼女は誰にも言えず
性的なその苦痛に
耐え続けていたのでした。
だから家に帰りたくないと。
出会ったばかりの文に
お願いをして、そのまま彼の家で
暮らしていた更紗。
その暮らしは2ヶ月、続くことになります。
そんなに長い期間
彼女が帰ってこないとなれば、大騒ぎです。
ニュースにまで
彼女の名前が出るようになっていました。
幼い更紗の願いを聞いた
文は犯人に。
そして更紗は被害者になっていました。
また、世間は文をどういう目で見るか。
ロリコン。
彼はそう罵られることになります。
けど性的な嫌がらせをしてくる
従兄弟とは違い
文とは2ヶ月もの間
一緒に夜を過ごしても
何もありませんでした。
それは彼をずっと苦しめていた
病気が理由です。
大人なのに、どこか子供のままの文。
彼は体が大きくなるにつれて
その苦しみも、大きなものへと
変わっていっていたのでした。
引き離されたふたりと世間の噂話
報道されていたにも関わらず
外に出て、遊んでたふたり。
周りの状況に壊されることのない
ふたりだけの世界ができてるみたいだった。
映画では描かれていないけど
文はこの時、警察に捕まって
自分が誘拐犯として捕らえられる
覚悟を決めていたようでした。
けど逃げ場のない所で
警察に囲まれ
彼らは引き離されてしまいます。
周りには野次馬が。
口々に「ロリコン」と言いながら
携帯をパシャパシャ鳴らしていました。
手を握るふたり。
警察に引き剥がされそうになっても
文の名前を叫んで
離れたがらない更紗。
けど更紗がこんな行動を取るのは
文の洗脳だと。
そう世間からは思われ
また文の罪が重くなっていくのでした。
誘拐、ロリコン、洗脳。
人は見たいようにしか
見ていない。
映画の中にも出てくる言葉です。
必ず世間の言うことが間違ってる
ということはないけど
大多数の憶測が飛び交うことで
それが真実になってしまったと。
その光景を、目にしていました。
そして文は加害者であり
被害者にも見えて。
更紗も、被害者のようであり
加害者のようにも見えるという。
ふたりにか分からない
逆転した立場があって見えました。
更紗の、文と一緒にいたいという
思いを持つことも
罪になってしまう関係。
2人で過ごした頃の
選択に間違わなければって
更紗と一緒に思う自分がいました。
けど小説を読むと
文は、更紗に声をかけた時から
自分が捕まる覚悟を
決めていたことがわかります。
それを知らない更紗は
ずっと罪の意識を背負っていたという。
2人の絡まった様子が
見えていました。
本当は自由奔放な更紗。
けどおばの家は厳しく
従兄弟からも嫌なことをされ
幼い彼女は逃げ場を探していたのです。
文との時間は
本来の彼女に戻って
ものすごく自由な時間でした。
けどその為に文が
背負うことになった罪は重く
一生彼に付きまとうものになります。
2人は15年後に
再会することに。
お互いに新しい恋人ができて
幸せを掴みかけていたものの
血を流すほどの、心の痛い展開が待っていました。
周りを囲まれ、強まるふたりの絆
出会った頃の更紗は
おばの家で、苦痛に耐え
文も、自分の病により苦しんでいました。
これは男性にか分からないもの。
けどすごく重大なことです。
それぞれの抱える問題や
ふたりだけが知る真実が
彼らの絆を、強くしていました。
そして再会した時にも
お互いに問題を抱え続け
過去の誘拐事件の噂も
消えることはありませんでした。
それが再会したことで
文の居場所がネットにばら撒かれ
ひっそりと暮らしていた
彼の日常が、また脅かされることになります。
拡散したのは
更紗と同居している
中瀬亮(なかせ りょう:横浜流星)でした。
彼も心に問題を抱えてて
そして誘拐事件を知る人物でした。
この3人の関係と
何も知らずに巻き込まれていた
谷あゆみ(たに あゆみ:多部未華子)。
彼らを中心に
話は進んでいきます。
家内更紗と中瀬亮の関係
亮は最初と最後で
印象が変わった人でした。
上場企業の優秀な社員。
しかも実家は農家で
土地を持っていると。
最初は、周りの人たちが
羨まむような相手だった。
それが、更紗が文に
会いに行っていることを
知ってからの豹変ぶりが、すごかったです。
亮は、更紗のように
世間から見た可哀想な人を
彼女にする傾向があったのだそう。
彼の身内にはバレバレだった。
父のDVで母は逃げ
その父の影響を受けてしまったのか
亮にも、その傾向がありました。
カッとなると手が出てしまうのです。
彼は、更紗は自分のことを
母のように捨てられないと思って
彼女に選んでいたのでした。
何かある度に更紗が
「私、可哀想な人じゃないよ」って
言っていたのが
映画の後半にストンとくるはずです。
更紗が文と再会したのを
知ってからの展開に
自分は見ていられなくて
途中、目をつぶってしまいました。
亮の怒りは収まらず
彼は、文が経営する
カフェの様子をネット上に
拡散してしまいます。
更紗から、文を引き離す為でした。
けど更紗が文のカフェに
来ていたというだけで
2人は会話もしていないのです。
亮は亮の思いたいように
更紗たちのことを見ているようでした。
こうして文の平穏な日々が
また終わりを迎えることになります。
その時の更紗の怒った様子。
従順な彼女ではなく
亮に対抗する彼女が出てきていました。
そして亮は
自分を抑えることができず
更紗を殴り飛ばしてしまいます。
彼女の顔面が
血だらけになっていく様子に
耐えられませんでした。
もう音や声だけでも辛くて。
そこから涙ダバしてました。
辛すぎてた。
部屋を飛び出した更紗。
本当なら、警察に駆け込むのが
普通だと思う。
けど文のことで
頭がいっぱいな彼女は
カフェの前に来ていました。
こうして、やっとふたりが
店主とお客さんではなく
文と更紗として、会話をしていくことになります。
佐伯文と谷あゆみ
映画での谷の内心は
最後の最後で
吐き出されることになります。
文に対して、吐き気がしたと。
世間からのフィルターが
かかった言葉でした。
文は、今では
佐伯ではなく南という苗字を
名乗って暮らしていました。
そしてあゆみは、誘拐事件のことも
知りませんでした。
頭の中に、更紗のことが
残りながらも、彼女のことを
大切にしたいと思っていたよう。
けど更紗が、亮から逃げて
文のところに来てしまったことで
全部が崩れてしまっていたのです。
何も知らなかった彼女の
これまでの時間はなんだったんだろうって。
けど文は何度も
誘拐事件のことを
話そうとしてきていました。
それでもできなかったのです。
そして自分の病気のことも。
彼は付き合っていた
あゆみとも、一度も性行為をしていないのでした。
「類宦官症(るいかんがんしょう)」。
思春期になっても
精巣からの男性ホルモンの
分泌が少ないことが原因の病気でした。
男性の場合、声変わりがなかったり
陰茎(いんけい)などの成長が見られないのだそう。
彼の場合は陰茎(いんけい)に。
これが彼の隠してきた病気でした。
けどあゆみにも打ち明けられず
彼女ばかりが一方的に求めるという
悲しいシーンが。
それでも一緒にいた彼女に
最後は、誘拐事件のことがバレて
幼女しか愛せないと
思われてしまうという。
伝えれられたらって
思ってしまったけど
難しいことですよねと。。。
最後は、あゆみに文が嘘をついて
別れることになります。
彼女が少しでも早く
立ち直れるようにという
彼の優しさでした。
彼女も被害者の1人に見えています。
あゆみの話は、小説が深く
描かれていました。
更紗とあゆみの話も
小説のほうに多く描かれているので
見てほしいところです。
最後、あゆみが怒った時の
内容も、映画と小説で少し違くて
それが面白かったです。
マイナスの評価について
現実的に考えたら
設定のツメが甘いという
厳しい声を見ました。
誘拐事件の後に
更紗はどうして
苗字を変えなかったのかと。
他にも、更紗と文が再会した後
文はまた罪を犯したわけではないのに
どうして騒がれることになったのか。
過去、誘拐事件で
捕まった文は少年院に送られています。
そして今は
静かに暮らしていただけでした。
またそれをメディアが
取り上げて、更紗の勤め先まで
巻き込む、大騒ぎになるという。
確かに更紗の苗字は
気になった部分でした。
文は変えているし。
なら設定がではなく
物語を作る時に
あえてそのままにしたのではと。
更紗が本名のままでいることで
また文に会えるかもしれないと
思ったんじゃとも、考えました。
そして文はまた罪を
犯したわけではないのに
どうして騒がれることになったのか。
誘拐事件の犯人と
被害者が、隣の部屋に住んでて
しかもベランダで一緒に
過ごしていたらってなったら。
あの事件の真相を
知らない人たち。
世間の話を鵜呑みにしている
人たちには、騒がずにはいられないことだと思った。
15年も前のことでも
たくさんの動画や画像が
今では普通に残っています。
過去の事件を掘り起こして
また事件が起きたように
騒ぐのは、とても簡単なことに見えました。
現実的に考えると
設定が気になるところは
あるかもですが
「みんな見たいようにしか
見えていない」っていう
更紗たちの会話を
表すキレイなストーリーでした。
細かい点に目を向けるより
大きなストーリーを
自分は楽しませてもらいました。
そして小説を読めば
物語の説得力が、違ってきます。
なので映画で何か思うところの
あった人は、小説を読むと
納得のいく部分が増えるかもです。
文庫の表紙にも使われているアイスクリーム
文庫の表紙なっている
アイスクリーム。
これは、更紗が子供の頃の
楽しかった思い出を
連想させるものだと思います。
両親がいて
自由に伸び伸び暮らしていた頃
晩ごはんをアイスクリームに
しちゃうような、毎日の中で
幸せに生きていた更紗がいました。
けど家庭は崩壊し、おばの元へ。
そこからは苦痛の日々を
送っていた更紗でした。
そんな中で訪れた、文との日常。
そこでも彼女は、毎日が楽しくて。
文は彼女を自由に
過ごさせてあげていました。
そして晩ご飯にはアイスを。
また文に、自分が従兄弟から
されていた話を
更紗が打ち明けた時には
文も一緒に同じ一つのアイスを
食べ合うシーンが。
バケツのように大きな
特大のバニラアイス。
その時の更紗は、嬉しそうでした。
そんな彼女の様子から
アイスは彼女の幸せな思い出に
寄りそうものだと思っています。
映画と小説の違い
小説にあって映画になかった話は
・更紗の両親との時間
・あゆみをもっと知れる話
・映画が終わった後の話
などがありました。
プラスで登場人物の
心の描写が多いのが
やっぱり大きかった。
映画見て原作知らない人は
読んでほしい。
あの時は、こう思ってたのかって
わかる部分がたくさんあります。
映画にあって小説になかった話には
警察が文をカフェで
取り押さえようとしたシーンが。
小説では文の暴れた様子を
更紗が人づてに
聞いただけでした。
それが映画では
実際にその様子が映し出されます。
しかもその時に
松坂桃李さんから
アドリブのセリフが出ていたと。
それまで静かだった文の
必死に抵抗する姿に
彼のこれまで抱えてきていたものが
爆発する瞬間を見ました。
そして面白かったのが
話の軸は同じなのに
要所要所のパーツが
自然に違う組み合わせになって
物語が進んでいたことです。
どう言うこと?って。笑
場面が違かったり
順番が違かったり
小説では他のシーンに使われていた行動が
別のシーンと組み合わさっていたりと。
これは読んで、見ての
両方をした人にだけわかる特権です。
そのピースのはめ方で
軸は同じだけど、見え方の変わる
感覚が楽しかった。
関連商品