ドラマ小説『テンペスト』琉球の歴史と神話の上に成り立つお話【あらすじ感想】
『テンペスト』の世界に行ってきました。
脚本:大森寿美男
著者:池上永一
2011年7月から2011年9月にかけて放送された全10話のテレビドラマです。
沖縄県出身の方が多数出演されています。
原作は2008年に発行された池上永一の小説。
その後、2011年2月に『琉球ロマネスク「テンペスト」』の舞台化がされ
同年7月からドラマ化、さらに2012年には映画化がされています。
そのすべての主演を務めたのが仲間由紀恵でした。
もくじ
『テンペスト』のあらすじ
江戸時代末期。
清国と薩摩の間で生きる琉球王国がありました。
そこで暮らす真鶴(演:仲間由紀恵/田﨑アヤカ)という頭脳明晰な少女。
彼女は女であるがゆえに、男児を望んでいた父の孫嗣志(そん しし/演:奥田瑛二)からは
いない存在として、名前を与えられることもなく、存在を認められずに育ってきました。
真鶴は彼女が自分でつけた名前です。
けれど孫家の跡継ぎとされていた義兄の孫嗣勇(そん しゆう/演:金子昇・森永悠希・福士誠治)が、父の厳しさに耐え切れず疾走。
これを機に真鶴は、父が生まれてくる男児につけようとしていた寧温(ねいおん)と名乗り、宦官として性を偽って生きることを誓います。
その後、13歳になった寧温は官僚登用試験に最年少で合格。
王宮に上がり評定所筆者に任命された彼女の前に、様々な困難が立ちはだかっていきます。
『テンペスト』の感想
琉球王国の歴史に溶け込む寧温たちの姿
琉球王国は近代の呼称で、史実では琉球国とのこと。
戦国時代の大名所領地が薩摩国などと言われていたように
琉球国も日本本土と同じ国として存在していました。
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その琉球王国が成立したのは1429年。
1609年には薩摩藩の統治下に置かれ、琉球藩となり
1879年(明治12年)には廃藩置県(全国を藩から県に統一した行政改革)により、琉球藩を廃して沖縄県となりました。
本作では琉球王国が沖縄県になるまでのことが描かれています。
歴史的背景は史実がベースにあり、その中で寧温たちが奮闘。
作品に触れることで琉球王国の歴史が知りたくなってくるお話です。
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そして沖縄になった後に、どのようなことが起こるのか。
後に続く残酷な歴史を
登場人物たちは知る由もありません。
物語には描かれていない史実と結びつけることで、込み上げてくるものがありました。
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それと寧温は実在する人ではありません。
ですが寧温のモデルになった人物として名前が挙がっているのは
牧志朝忠(まきし ちょうちゅう)という語学の才能に長けた通事。
彼はアメリカの政情にも通じており、その有能ぶりはペリーを驚嘆させたほどでした。
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1つの国であった琉球王国。
琉球は清国と薩摩藩という二重の支配下に置かれながら
軍事力に対して、当時の周辺の国とは異なる認識をしていました。
神に祈ることも軍事力の1つとされていたのです。
そうした国がどうやって独立を保ったのか。
そして第18代琉球国王の尚育王(演:高橋和也)が急死し
6歳で即位することになった第19代琉球国王の尚泰王(演:染谷将太・矢山博夢・伊阪達也)。
窮地に陥りながらも幼い国王を支え、王国を存続させていったのが寧温たちでした。
何を求めて触れるのかで受け取るものが変わる作品
史実の強固な基盤がある中で、非現実的な要素が盛り込まれているのが『テンペスト』です。
この現実的でない部分を、どこまで受け入れられるのか。
普段から細かい設定に意識が向く人にとっては
話が進むにつれて気になる部分が増えていきそうです。
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自分の性を偽って生きている寧温ですが、それが寧温の最大の弱点でした。
王宮内でも寧温のことを良く思っていない人は多く
事情を知らない人にとっては、完璧な寧温の弱点となれば喉から手が出るほどに知りたいもの。
その最大の秘密がバレるかバレないか。
また知っている人は、秘密を手にしながらそれをどうしていくのかという
それが面白い部分の1つでした。
けど観る人によっては、土台が強固に作られている分
人間ドラマの面でもリアリティを求めたくなるんじゃないかと思います。
寧温として振る舞っている時と、真鶴として本来の彼女で過ごす時、そして寧温と真鶴を頻繁に行き来する時の
3の段階に分かれて描かれている彼女の在り方。
お話に合わせて変化していくところが自分は好きでしたが
琉球王国が沖縄になるまでを描く『テンペスト』に、何を求めて作品に触れるのかで
受け取るものが変わるのを感じました。
琉球王国の神様と聞得大君の意志の強さ
神への信仰心が強かった琉球王国。
どんな神様に祈っていたんだろうと調べてみたところ
いろんな名前が出てきて頭が追いつきませんでした。
なので名前だけ。。。これも一部だろうけど。
アマミチュー、シルミチュー、アマミキヨ、シネリキヨ
天太子、龍宮女加那志、天帝子、天女大神加那志。
そして天帝子が男女の御子をアマミキヨに授けて誕生した5人兄妹が
長男の天孫子、次男の按司(あじ)、三男の百姓、長女の聞得大君(きこえおおきみ)、次女の奴留(ノロ)のそれぞれ始まりとなった5人とのこと。
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作中には、第2の主人公じゃっていう存在感を放つ聞得大君加那志(名前:真牛/演:高岡早紀/生瀬勝久)がいます。
彼女は尚育王の姉であり、強い霊力をもつ巫女として国王を守る立場にありました。
第1代尚氏王朝が築かれた頃の王女であった巫女・馬天ノロ(演:悠木千帆)の勾玉を見つけ出すためなら、手段を厭わない人です。
神聖さとは程遠い人物に見えていたけれど、神を信じる力は周囲の誰よりも強い女性でした。
それは1話「龍の子」で誕生した寧温よりも。
自覚はなくとも龍の加護を受けているのであろう寧温が、聞得大君の前に現れたのも
彼女の執念からくるものなのかも。
主人公が引き寄せるんじゃなくて、寧温が聞得大君に引き寄せられているように見えるという。
神のためなら残虐にもなる。
琉球王国最高神官の巫女として、そのくらい強靭な意志を持っていたのが聞得大君でした。
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意志の強さでいえば寧温も尋常じゃないけれど、それは琉球を守ろうとするもの。
さらに彼女は愛する人と生きていくことを望んでいました。
何か特別な力や神に祈るよりも、持っている知識で戦い
愛する人たちとの未来を望んでいたのが寧温です。
対する聞得大君は落ちるところまで落ち、悲惨な道をたどりながらも
王族の巫女としての自負を失わなかった人でした。
その強すぎる意志は、龍の加護を受ける寧温の手にした女神の力も聞得大君の手に渡っていくほど。
主人公すら凌駕する強い想いをもつ人物。
寧温の周りには、そうした個性的な人たちが集まってきますが、聞得大君は別格です。
意志の強さは人間の及ばないところにある力をも動かすことができるんだと、聞得大君を見て思いました。
『テンペスト』の書籍
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