アニメ『TEXHNOLYZE(テクノライズ)』機械と融合した少年【あらすじ感想】
『TEXHNOLYZE(テクノライズ)』の世界に行ってきました。
監督:浜崎博嗣
2003年に放送された全22話のSFアニメです。
隔絶された地下都市、流9洲(ルクス)で手脚を失い、機械と融合した少年の櫟士(イチセ)。
人間を超える力を手にした彼が、絶望の中をもがき戦う姿が描かれています。
もくじ
『TEXHNOLYZE(テクノライズ)』のあらすじ
力を持つ者に支配された都市、流9洲(ルクス)。
生き地獄のようなその場所で
賭けボクシングの賭博競技で生きてきた櫟士(声:羽賀聖)という少年がいました。
しかし彼はある晩に、腕と脚を片方ずつヤクザに奪われてしまします。
ボクシングから離れざるを得なくなり街を徘徊していた時、彼は一人の女性に発見されます。
幸運なことに彼女はドク(声:二木静美)と名乗る科学者でした。
こうして彼は「テクノライズ」と呼ばれる謎の科学技術を用いた義手と義足を与えられ
人と機械の融合した存在となり、人間を超える力を手にいれます。
テクノライズ化した櫟士はその後、未来の見える少女の蘭(声:伊藤静)と出会い
流9洲で起きた抗争に巻き込まれていくのでした。
『TEXHNOLYZE(テクノライズ)』の感想
ストーリーが飲み込めてくるまでに時間を要する作品
語られていることが少ない分、特に最初はわからないまま前進。
残酷な描写の続くなかで明らかになっていくところまで待てる人と
そうでない人とで意見が分かれそうでした。
・・・
救いのなさ。
希望も砕かれ、完膚なきまでの絶望が描かれています。
それでも地獄や、生気を感じられない世界の中で
芸術的な美しさを孕んでいるシーンが点在していて
沈んだ気持ちとは別の部分が刺激されることも。
ひたすら残酷で、受け入れられる人のほうが少ないと思います。
自分も撃沈。
けど血みどろな中に何を見出すのか。
説明の少ない分、それぞれの頭の中で補完されていくストーリー。
リアルタイムで観れていたらと最初は思ったけれど
進んでいくうちに、今でよかったと思うようになってました。
・・・
物語の面白いのは、主人公が主人公らしくなるまでに時間がかかるところ。
最初の頃の櫟士は話をすることが極端に少なく、叫ぶか喚くかの印象がほとんど。
彼は手脚を失っただけでなく、自分の一部になった義肢を受け入れられずにいたのです。
なりふり構わず暴れていた櫟士を「普通のバカは一度死ぬと治るんだがな。」と言う人もいたほどでした。
手脚を失って街を徘徊し、テクノライズ化された体でまた街へ飛び出し、満足に歩けないまま再び街を徘徊。
そして彼をこんなふうにした張本人とも、徘徊のたびに鉢合わせるという。
彼は彼のストーリーをぐるぐると回り続けていきます。
櫟士がその繰り返しから抜け出すまでは、彼に代わって周囲の登場人物たちがストーリーを進めていました。
・・・
余談ですが、都市に日中の光を届ける役目を担った老人がいて
櫟士がそのループにはまっている最中に、老人の独白を聞く場面があります。
その時の櫟士と老人の様子がリンクして描かれているなど
言葉でわかりやすく説明はされず
話がわかってきた頃になってハッとさせられる部分というのがあります。
一個書いちゃったけど、語られていない部分を見つけようとすることで面白さの増す作品だと思いました。
外からの来訪者が画策した3つの勢力の抗争
流9洲には3つの大きな勢力があります。
流9洲を支配する組織のオルガノ、労働者が集ってできた救民連合、若い市民が中心になってできているラカン。
それらが都市の外からやってきた吉井一穂(声:井之上隆志)によって火種が撒かれ、抗争へと発展していきます。
その中でオルガノのトップである大西京呉(声:土田大)が、櫟士が落ち着くまでの中心となって話が進行。
櫟士のストーリーと、3つの組織の争いに至るまでが並行して描かれていました。
・・・
吉井はなぜ流9洲にやってきたのか。
流9洲は外との接触が絶たれている荒廃した地下都市です。
吉井の暮らしていた場所のほうがはるかに平和。
なのに彼はここに足を運び、人同士を争わせようと綿密な計画を立てていました。
・・・
吉井は流9洲の感情をむき出しにする人たちを人間らしい人間だと言います。
そんな人を見るのは初めてだと。
感情は人なら誰もがもっているもの。
まさか吉井の暮らしていた場所では、生きている人のほうが少なくて
あとは完全な機械になってたんじゃって思ったりもしてました。
けど違くて。そこは流9洲に比べたら、ものすごく平和だった。
けど人がいても生気がまったく感じられない。
ジワジワと確実に滅びに向かっていくのを、ただ待っているだけの場所でした。
争いごとの絶えない流9洲とは真逆の世界です。
そんな平和な所からやってきて、均衡が崩れていくのを楽しげに見ていた吉井。
けど彼はその計画の中で、あえて自分が犯人だとバレるような行動にもでます。
安全な場所に身を潜め続けるのではなく、渦中に飛び込んでしまう。
彼は楽しんでいただけでなく、平和な場所では味わえない刺激を求めていました。
生きていることの実感。
その行いは醜悪だけど、吉井は流9洲で生きる人に感動もしています。
決して他人事ではないと思わずにはいられない吉井の人物像。
日常に刺激を求める動機に似た部分を感じて、ゴクリしてました…。
地獄の外に希望をもつ人と自ら地獄を選ぶ人の違い
物語の後半、バッドエンド不可避の絶望的な未来が待っています。
流9洲の特権階級に属している伽ノ(かの)のお遊びで、3つの勢力が今度は崩壊へ。
伽ノの率いる私兵組織、シェイプスとのバトルが展開していきます。
シェイプスは頭と臓器以外の全身をテクノライズされた兵士です。
そこにはかつての仲間の顔が。
自ら望んで体を捧げた人、望んではいないのに変えられてしまった人。
とにかくその変わりようがショックでした。
臓器の入った入れ物が首の下に付いてるというゴフッ。
・・・
流9洲は争いが絶えず、平和からは程遠い地獄です。
昼の光が無かったら、いつ何があってもおかしくない場所。
そんな流9洲から外に出たい、この外に希望があるはずだという人と
この地獄こそが自分の生きる場所だという人に別れていたのが強く残っています。
誰もが平和な世界を求めているわけじゃないんだと。
自分だったら真っ先に平和を選ぶので、驚いた部分。
けどそうやって自ら地獄を選ぶ人たちはかっこいいんです。
・・・
それでも地獄で生き残るには、経験や能力、意思の強さだけじゃ足りなくて
人の手に負えないくらいの狂気をもっていなくちゃなりませんでした。
怒りや絶望からくるものでも足りないのかも。
無自覚で狂っている人が最強であって
そういう人が地獄の頂点にも君臨し得るんだと思った後半の章。
反対に流9洲の外に希望をもっている人では
自由を尊重するラカンのリーダー、シンジ(声:北出真也)の存在がまず浮かんでました。
3つの勢力を争わせようとしていた吉井が、わりと積極的に接触をしていた青年です。
前半の章で、2人は自由についての話をしていました。
ラカンは自由な集まりでできているけど、そこに本当の自由はないということ。
外の世界から来た吉井からすると、外は憧れるようなものではないこと。
まだ見ぬ世界に期待を膨らませるシンジでしたが、その話は吉井に軽くあしらわれてしまいます。
そもそもまったく何の制約もなく、本当に自由な人はいるのかなと。
このお話では、外に大きな希望を抱いていた人ほど
大ダメージを受け突き落とされる未来が待っていて
希望を持ったままその未来すら知ることなく終わる人が、ほとんどという残酷さ。
一方で今いる場所を受け入れて、そこを自分の居場所にしている人は
たとえ地獄であっても知らず物語の中で重要な役目を持っているという。
それもバッドエンドに向かっているのなら意味のないことなのかもしれないですが。
けど終わりがくるまでの間に何をしたかで見るのなら、意味はあったんだと思う。
いや思いたいという願望です。
地獄のような場所から抜け出せればと思っている人と
不運に見舞われ続け、体を失い、争いの中心に置かれても、そこを出ることを望まないような人もいて
両方の考えをもつ人が近くにいることで、違いが際立って引き込まれてました。
・・・
そして戦ってばかりの櫟士に、テクノライズ化した体の他の使い方を教えようとしたドク。
彼女は櫟士に母親と似た愛情を注いでいた人物でした。
『TEXHNOLYZE』のアニメの未来は見れないけど
どこかで彼女の願いが叶っていてほしいなと思います。
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