のほりひがし。 東の感想ブログ

映画マンガ舞台『鉄コン筋クリート』地獄で生まれた唯一無二の関係【あらすじ感想】

マンガ・映画感想

 
『鉄コン筋クリート』の世界に行ってきました。

作者:松本大洋
コミックス全3巻

1993年から『週刊ビッグコミックスピリッツ』にて、全33話で連載された作品です。

その後の1995年と2018年に舞台化、

2006年には本作が監督デビュー作となるマイケル・アリアスを監督に迎えてアニメ映画化もされています。

英語版のタイトルは『TEKKON KINKREET BLACK & WHITE』。

原題は松本先生が幼少期に

「鉄筋コンクリート」を「鉄コン筋クリート」と言ってしまっていたところからきているとのことでした。

 

『鉄コン筋クリート』のあらすじ


 
喧嘩や暴力の絶えない宝町(たからちょう)。

そこには生きるためなら暴力、窃盗、なんでもするクロ(声:二宮和也/演:若月佑美 2018年版)とシロ(声:蒼井優/演:三戸なつめ)という孤児の少年がいました。

警察も手を焼く問題児の「ネコ」として、名の知れた2人組です。

この街はシロのような純粋な少年には生きづらいところ。

一方の自らを危険に追い込み、暴力を好むクロにとっては

「俺の街」と言うほどの愛着のある場所に。

宝町で彼の意に反した行動をとる者には

容赦なく暴力でもって、その身に思い知らせてきました。

・・・

そうした彼らの宝町の日常が、街の開発計画によって変化していきます。

宝町を「俺の街」という者同士の縄張り争い。

開発を進めたい大人と、自分の意地や思いを貫こうとする少年たちの戦いが描かれています。

 

『鉄コン筋クリート』の感想

独創的な世界観で描かれた宝町

 
原作と映画の違いを楽しんでました。

話が進みながら、街のいろんなところで2人を連想させるものを見かけていきます。

ふとした時に、そういうものに出会うと

漫画では、だんだんと白黒グレーのモノトーンで表現されたお話が

2人の見ている束の間の夢のように感じてきてました。
 
漫画のほぼフリーハンドで描かれた独創的な白黒の世界から入って

映画で色づき一気に鮮やかな景色が広がった時の感動が大きかったです。

・・・

また作中に、この街を「おとぎの国」と表現する大人がいます。

街の外の常識が通用しない場所。

ヤクザの世界で生き、顔に深くシワを刻んだ人にさえ、「おとぎ」と表現させる側面を持ちながらも

宝町という名前からは程遠い荒みきった退廃のはびこる街であり、地獄にも喩えられていました。
 
けど住人たちから離れて街全体の景色を見渡すと、また違う部分が見えてきます。

古風でありながら壮大なお手製のおもちゃ箱みたいな。

宝町は不思議な建造物の眠っている場所でもありました。
 
街自体が異なる側面を持つ宝町。

そこをクロとシロのような正反対の2人が、彼らを象徴するものを点在させながら飛び回る様子に

街と2人が時々重なって見えていました。

 

地獄のような宝町で人情を忘れなかった人たち

 
ある転換点にいる宝町。

他の地区で急成長を遂げている「子供の城」のプロジェクトの手が、この街にも伸びてきたのです。

宝町3丁目を仕切っている大精神会は、海外からの来訪者である蛇(声:本木雅弘/演:谷口賢志)と名乗る男性と、一大レジャーランドの建設計画を進めていました。
 
一方同じ組の中でも、その計画に反対していたのが大精神会の幹部、鈴木(声:田中泯/演:中西良太)です。

ネズミと呼ばれながら、多くの舎弟を引き連れている男性。

彼は舎弟頭の木村(声:伊勢谷友介/演:窪塚俊介)に、宝町での生き方を教え育てていました。
 
クロやシロとも接点のあるネズミですが

彼は組にいながら、開発計画をよく思っていないクロと共鳴する部分があったのです。

・・・

他にもベテラン刑事の藤村(声:西村知道/演:コング桑田)と若手刑事である沢田(声:宮藤官九郎/演:玉置玲央)との関係。

藤村は好き放題のクロとシロを気にかけていた男性です。

親のいない2人ですが、彼らの周りには他の人と違う見方で接してくれる大人や

絶対的な味方でいようとする人物もいました。
 
そうした人たちの交流が、どんな結果になろうとも心の支えになっていきます。

木村に生き方を教えるネズミ、沢田やクロ、シロを見守る藤村と

そして2人のことを気にかけるホームレスの源六(声:納谷六朗/演:花王おさむ)。
 
街の開発計画から生じた混乱の中で

立場の違う3組が別々に育んだものや、3組が交わって生まれたストーリーなど

それぞれの愛情の形がありました。

・・・

この地獄のような街で、人情を失わずにいた大人たちの言葉は

必死にもがく人たちに愛情でもって投げかけられていきます。
 
その中でも、シロの存在はやっぱり不思議でした。

源六の言葉も届いているのか、いないのか。

シロはいつまでも成長しない心の幼い少年です。

源六はそんなシロに手を焼きながらも「たぶん全ての答えをあれは、持っとる。」と言います。
 
クロが宝町そのものなら、シロもまた街に合ってはいなくてもクロと同じ部分もあるのかもしれない。

そう思えることがシロの行動に表れていました。

 

聖書の物語とリンクしているストーリー

 
3巻で完結しながらも、たくさんのメッセージが込められている本作。

まだ体の小さな2人が、命懸けの戦いを繰り広げながら

聖書にまつわるお話が被せられていたり、真理が解かれている場面もあります。
 
登場人物の蛇は、そういう意味でも重要であり

街の向かう流れを感覚で理解していた源六は、旧約聖書にある物語の一節を口にしていました。
 
蛇にそそのかされて下した決断によって招いた事態。

すでに以前の宝町はなく、変化を受け入れられずに、力も持たない人は淘汰されていく場所へと変わっていってました。

宝町が愛した時の姿を失っていっても、それでも彼らにとっては拠り所となっている場所です。

そこが地獄であっても。

登場人物の中で他の地区に移ろうとする人は少なく、この街に残る人がほとんどでした。
 
本作は発展途上にある街で蛇によってもたらされた罪を、少年たちが中心になって受けることになります。

街そのものであったり、同じ部分を持っているクロとシロ。

成長期にいる2人が次のステージに向かうまでの奮闘劇になっていました。

・・・

起きた出来事を良い悪いで判断するのはよくあることだけど

起きている出来事はただ起きているだけで、本当なら良いも悪いもないということが作中に描かれています。

あるのは真実だけ。

そこを判断するようになったのは人間が一人一人、独自の世界を持つようになったことへと繋がっていきます。

自分の判断基準を持つようになったことから始まって、人はたくさんのジャッジをするようになりました。

自分もたくさんします。

それがあるから生きている心地もするけれど

時に大きな過ちへと繋がってしまうこともあるんだと、聖書の物語とを合わせて見ていった時に思いました。

・・・

お話の中で地獄を知っている人たちの言葉には、

何気ない会話の中にも、その人の真理が滲み出ています。

その中にいて圧倒的に光であったシロは、真理を当たり前に捉えて受け入れてそうでした。

それを言葉にできるようになったり、その後の成長が見られるのは

この物語の後なんだろうなと。

起きたことをジャッジしないでただ感じる。

難しい。けどできたらまた違った世界が広がってそうな

余韻と共に無性にワクワクもしてくる作品でした。

 

『鉄コン筋クリート』のコミックス一覧

 

『鉄コン筋クリート』の配信一覧

 
アニメ映画配信
U-NEXT 配信ページ
Amazon Prime Video 配信ページ
FOD 配信ページ
TELASA 配信ページ
バンダイチャンネル
VideoMarket 配信ページ
music.jp 配信ページ
 
舞台配信(2018年版)
U-NEXT 配信ページ
Amazon Prime Video 配信ページ
FOD 配信ページ
music.jp 配信ページ

 


Warning: Invalid argument supplied for foreach() in /home/nohorihiga/nohori-higashi.net/public_html/wp-includes/script-loader.php on line 2652