【ネタバレ注意・考察】映画『すずめの戸締り』扉を閉めることで意識が開かれていく物語
こんにちはの東です。
今回は『すずめの戸締り』のことを書いていきます。
2022年11月11日に公開された
新海誠監督の最新作であり
『君の名は。』『天気の子』を
思い出す部分が散りばめられていました。
開いたものを
ひとつひとつ戸締りしていく。
戸締りという行為の
奥にあるものの重さを感じる作品です。
ネタバレがあるので
それでも良い人だけ進んで下さい。
あらすじ
主人公の岩戸鈴芽
(いわと すずめ)は
宮崎に住む17歳の高校生。
彼女が「閉じ師」をしている
宗像草太(むなかた そうた)と
出会ったことが
お話の始まりでした。
その後、彼を探していた時に
廃墟にある扉と
不思議な石に気づいた鈴芽。
その石を引き抜いたことで
扉を封じるものが無くなってしまいます。
そして扉の向こうから
巨大なミミズが出現。
彼らがこちらに来るのを
防ぐ為に、草太と協力して
日本を回ることになります。
その中で、彼女の成長する様子が描かれていました。
登場人物
■岩戸 鈴芽(いわと すずめ)
声:原菜乃華、幼少期:三浦あかり
宮崎に住む17歳の女子高生。
いつも全力で
草太の為に未知の世界にも
突っ込んでいくパワーがすごかった。
猫と椅子と彼女が走っている
様子が楽しかったです。
また彼女の名前は
アメノウズメノミコトから
インスピレーションを受けているとのこと。
映画鑑賞時に配布される
「新海誠本1」に書かれていました。
ちなみに12/3からは
第2弾として2冊目が配布されるとのこと。
第1弾の半分の数なので、お早めに。
2回目の人は
読んでから観ると
椅子で走る草太の見え方が変わります。
アメノウズメノミコトは
日本神話の中でも有名な女神で
神格を持つ日本最古の踊り子とされています。
なら、苗字もそこから来ているのではと。
怒った天照大神
(あまてらすおおみかみ)が
天岩戸(あまのいわと)に
閉じこもり、世界が暗闇に
包まれた時に活躍したのが
アメノウズメノミコトでした。
天照大神が閉め切っていた場所を
開けるきっかけになった女神なのです。
そして作中では、一番最初に
災いとされる扉を
開けてしまったのが鈴芽でした。
個人的にちっちゃい頃の
鈴芽が、星の絵がついてる
スニーカーを履いていたのがツボでした。
■宗像 草太(むなかた そうた)
声:松村北斗
「閉じ師」として
旅をしている最中に
鈴芽と出会った青年。
彼の名前では
宗像大社が福岡にありました。
日本最古の神社の1つとされ
御祭神(祀られている神様)は天照大神の三女神です。
天照大神と弟の建速須佐之男
(タケハヤスサノオノミコト)との
誓約で生まれた三柱の女神でした。
椅子になってしまった草太の脚が
3本なのは、椅子に
動きをつけるだけでなく
三女神の意味もあったら
素敵なだと思っていました。
「新海誠本2」に
監督の真意が書かれています。
自分の思っていたこととは違くて
鈴芽と深い結びつきがあるのだと。
やっぱり可愛いだけでは
終わらないエピソードが詰まっていました。
その状態のまま
全速力で駆けて
立ち向かっていた草太。
彼の姿に勇気づけられての
鈴芽だったと思います。
じんわりとする監督の言葉でした。
こうして見ていくと
鈴芽にどうして
常世を見ることができたのかが見えてきます。
彼女にはそれが自然に
できるけど、本当は限られた人にしかできないことなのです。
そこには「閉じ師」の家系である
宗像と鈴芽の先祖に
繋がりがあるからと見て良さそうです。
■ダイジン
声:山根あん
西の要石(かなめいし)。
鈴芽に引き抜かれたことで
石から猫の姿に。
要石は今も実際にあるものでした。
そのうちの
茨城県鹿嶋市の鹿島神宮と
千葉県香取市の香取神宮は
東国三社と総称されている神宮です。
残り1つは息栖神社でした。
他には
三重県伊賀市の大村神社
宮城県加美町の鹿島神社にあり
今でも地震を鎮めているとされています。
■岩戸 環(いわと たまき)
声:深津絵里
ブログには登場しませんが
鈴芽の母、椿芽(つばめ)の妹です。
震災で亡くなった
椿芽に代わり
彼女を育ててきました。
急に家を飛び出した鈴芽を
かなり心配していた環。
理由もなく飛び出したとなれば
そうなるのが普通ですが
心配度が高すぎてました。
そして彼女の怒りが
爆発するシーンもあります。
鈴芽と環がぶつかり合っているのは
見てて心にきたけど
それまで溜め込んでいたことを
吐き出したことで
ふたりの関係に変化が。
旅の話だけでなく
こうした家族のエピソードもありました。
■芹澤 朋也(せりざわ ともや)
声:神木隆之介
草太の友達。
彼もブログには登場していませんがメモメモ。
鈴芽と草太のように扉のことを
知っているわけでもなく
鈴芽と環のように
家族間で問題があったわけでもなく。
ただ草太が心配で
彼を探していた朋也です。
彼はいつもどこか退屈そうな様子でした。
けど鈴芽や環との
ドライブの旅は、彼に
大きな刺激を与えることになります。
最終的に愛車の横のドアは
大破するものの
壊れていたオープンカーの
屋根は、逆に復活してて笑いました。
映画館でも、一番笑い声が聞こえた部分です。笑
鈴芽がまた扉を開けて
代わりに、それまで
調子のおかしかった
彼の一部が治ったかのようでした。
感想
一度観て感動した、面白かったでは終えられない作品です。
彼女に起きた5日間が描かれています。
とても5日とは思えない密度。
自分は観た後、体の中から
何か広がっていくような感覚がありました。
とても感覚的ですが残しておきます。
エンドロールまで
終わった後には
どこか懐かしい感じがしました。
けど優しいお話ではなくて
現実に起きていることを突きつけられる映画です。
都会に集中した人工図や
加速していく時代の変化
ストレス社会
便利なものありきの生活。
対しての忘れ廃れた田舎の廃墟
人知れず日本を守っているものたち
映画の序盤から何度も鳴る地震警報など。
主人公の心の成長と一緒に
現実で起きている問題への注意を
促している作品でした。
新海誠監督の作品は
目を背けたくなるようなことが
含まれながらも
重くなりすぎず
小さい子から大人まで楽しめる魅力があります。
鈴芽と草太のラブストーリー
描かれてるものがキレイ、楽しい、面白い。
けどそれでお腹いっぱいになっていいのは、子供たちだけだと感じています。
長い月日を生きてきた人には
その先の部分にも意識を向けるよう
注意喚起がされていました。
岩戸鈴芽
主人公の岩戸鈴芽(いわと すずめ)は
九州に住む高校生です。
彼女が宗像草太(むなかた そうた)
という「閉じ師」をしている
青年と出会うことで、彼女の生活が一変。
山奥にある廃墟で
猫の姿をしたダイジンや
開いた扉から出てきた
巨大なミミズの存在を知ることになります。
ミミズは鈴芽や草太
そしてダイジン以外には見えておらず。
映画の中では
地上にミミズが倒れた衝撃で
地震が起きていました。
2人は不思議な存在の
ダイジンを追いかけながら
開いた扉を閉じつつ
日本を旅することになります。
その道中で成長していく
鈴芽の姿がありました。
そして草太との旅の物語や
ダイジンとのエピソードでは
孤独なふたりの前に
鈴芽が現れたことで変化が生まれるという。
それぞれのキャラクターを
知ることで、映画全体を
一度観ただけでは
知り得ない部分が見えてくるようになっています。
宗像草太
鈴芽にも一目でイケメン認定された草太。
けど彼のイケメンタイムは
長くは続かず。笑
彼はダイジンによって
3本脚の椅子に変えられてしまいます。
鈴芽は最初、草太を元に戻す為に
ダイジンを追いかけていました。
彼は閉じ師の家系に生まれ
人知れず日本を影で守ってきた人です。
ですがこの役目は
大役を果たしても
誰からも称賛されることはありません。
また危険の伴うものであり
閉じ師も廃れつつありました。
そんな中で、草太が
椅子になってしまったとなれば一大事です。
彼を元に戻さねばと
鈴芽が奮闘するものの
ダイジンに、その気はありませんでした。
ダイジンを追いかけて扉を閉じ
日本を渡っている間
鈴芽は草太とずっと一緒です。
寝て起きてをしてるうち
草太の寝起きが異常に悪いと
ブーブー漏らす鈴芽。
自分も笑い声が出てました。
けどそれはネタではなくて
彼の意識が中々こちらへ
戻ってこれなくなっていたと。
寝ている間、彼の意識は
人の姿で海辺にある扉の前に
ぽつんと座っていました。
彼以外は誰もおらず
孤独な中、体が徐々に凍っていく草太を見ることなります。
現実でもひとり閉じ師をしてきた彼が
今度は夜が来る度
ひとり凍えているというのは辛いものでした。
けどそんな彼を温めてくれていたのが鈴芽です。
全身が凍っていく中
彼女の温かさのおかげで
目を覚ますシーンが。
もうキュンでした。
こうした2人の旅のストーリーが
ありながらも、彼は自分が
どんな役目を背負ってしまったのか
気づくことになります。
それは鈴芽が、決して望んでいないこと。
けど彼が今の役目を
果たしたことで、鈴芽は
ダイジンに怒りを向けるようになっていました。
それでも、この映画は
恋愛の映画ではないと
監督はお話しされています。
鈴芽は草太にドキドキしていても
草太はどうなんだろうと。
けど彼の言葉を聞いていたら
この先で2人はきっとと思ってしまいます。
この映画のエンディングの1つには
「カナタハルカ」が。
恋の音楽であることにも
意味がありました。
2人のエピソードが膨らんだり
色々想像したり。
キュンが増してました。
ダイジン
ダイジンのことは作品では
ほとんど話されていません。
名前も、メディアで話題になり
見ず知らずの人たちがつけたものでした。
けど元からそういう名前で
呼ばれるようにと
ダイジンに誘導されていたのではと思います。
理由はダイジンと
対になって登場するサダイジンにありました。
彼は自らサダイジンであると
名乗っているからです。
ふたりのような
不思議な存在によって
作品のスケールが大きくなっていました。
そしてダイジンは
要石(かなめいし)という
地震を抑える役目を持つ存在。
彼らが石となり
地面に突き立てられることで
日本の西側をダイジンが
東側をサダイジンが守っていました。
けど西側の要石を
鈴芽が抜きダイジンは解放され
自由に動けるように。
こうして要石が無くなったことで
ミミズが姿を現していました。
その後もダイジンは
要石に戻る気がなく。
自分の役目を
望んでいるわけじゃないことがわかります。
廃墟でポツンと守り続けるのは
とても寂しいですよね。。。
ダイジンにとっても鈴芽が
廃墟を訪れたことは奇跡です。
これがもし草太だけだったら
石のままであり、日本をぐるっと
旅することなんてできませんでした。
そして面白いのが、ダイジンの見た目。
ガリガリにやせ細っていたり
と思えば、ふっくらの可愛い見た目になっていたり。
そこには鈴芽の思いが
影響していました。
彼女がダイジンにあったかい気持ちを
向けている時は、いつもの調子で
元気なダイジン。
逆に嫌われている時は
骨が浮き出るくらいに
急に痩せ細って
今にも死んでしまいそうな様子。
ダイジンは鈴芽のことが大好きです。
人の思いの強さに、このブログでは
度々触れてきましたが
好きな人から向けられるものには
とても大きな影響が。
あたたかい思いを
向けられなくなったものの
姿が描かれていました。
また忘れ去られるというのも
同じに感じています。
宮崎県の廃墟で
要石から解放された時の
ダイジンが、それを表してしました。
白のダイジンと黒のサダイジン
さっきも書きましたが
映画には小さくて白いダイジンだけでなく
大きな黒いサダイジンも登場します。
ダイジン、サダイジンと聞くと
右大臣と左大臣が浮かびます。
地位は左大臣の方が上であり
死後の世界である
常世でのサダイジンの迫力には
ホアアアしてました。
色が白黒、お互いに
ひっくり返っていたのが
面白かった部分です。
また右大臣、左大臣は
お殿様と一緒に行動していた人たち。
映画ではダイジンも
色々あったものの
最初から一緒に行動をし
最後には導く存在になっていました。
鈴芽を独り占めしたいが為に
草太に散々なことをしてきたダイジン。
けど要石であり、守護し
付き添い導き、そして福を呼ぶ存在にもなっていました。
行く先々で、鈴芽たちを
助けてくれる人が現れるのです。
もしかしたら鈴芽の
並々ならぬ体力も
ダイジンによってパワーアップしたものだったりして。笑
どこへでも飛び込んでいく
彼女のエネルギーは凄まじかった。
ダイジンは最初
イヤなやつ感満載で
大勢の人が死ぬのも
楽しんでるんじゃって思うキャラでした。
けど鈴芽に嫌われてからは
違う面が見えてくるようになります。
サダイジンが加わった時にも
また見え方が変わったり。
そして最後には、ダイジンが
好きな鈴芽の為に
本当は戻りたくない要石に
再び戻る選択をすることになります。
その時のダイジンがもう
なんて言ったらいいのか。
可愛いイラストだから
柔らかくなるけど
現実の残酷さや、厳しさ冷たさを感じました。
今回の出来事で
東西を守る要石の位置が変わることになります。
諸行無常の言葉があるように
あらゆるものが
常に変わり続けていました。
こうして今いるべき場所へと
移ったダイジンとサダイジン。
けど彼らが最後に
要石になった場所は常世です。
死後の世界であり
すべての時間が存在するとされています。
人が生きている
場所ではありません。
多くの地震から守ってくれていた
存在が、もしその後も
常世からこちらに
戻ってきていなかったら。
そして地震の原因は解決しておらず。
扉を閉じるだけでも、精一杯でした。
大きな地震に備えて
主人公の鈴芽は
2011年3月11日に起きた
東日本大震災の被害者として描かれています。
そして彼女たちが
日本をぐるっと回ったことで
映画に登場した場所。
それらは大きな地震が来ると
実際に予想されている位置でした。
更に映画の中では
常世へと移り、こちらに
一緒には帰ってきていない要石。
地震への意識を今一度。
けど意識の強さがどう影響するのかも
ダイジンと鈴芽の関係で
描かれていたので
一人ひとりの思いにも注意が必要そうです。
小説
冒頭映像
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