【ネタバレ注意・あらすじ解説】映画『パプリカ』夢のもつ可能性と狂気のパレード
こんにちはの東です。
今回は映画『パプリカ』について書いていきます。
2006年に公開された
今敏(こん さとし)監督による作品。
1993年に発表された
筒井 康隆(つつい やすたか)さんの
小説が原作になっています。
この間観た『流浪の月』の映画にも
登場していたこの作品。
更にはクリストファー・ノーラン
監督による『インセプション』も
夢の話であり、この作品の影響を受けているとのことでした。
映画に飲まれて
気づいたら終わってて。
目を離したら
置いてかれてしまいそうな
夢の世界でした。
ネタバレがあるので
それでもいい人だけ進んでください。
あらすじ
天才科学者、時田浩作
(ときた こうさく)が発明したDCミニ。
これを装着すれば、他人の夢を
自分も見ることが可能でした。
それが何者かに奪われたことで
物語が進んでいきます。
犯人はこれを悪用し
開発に関わる研究員たちの夢に侵入。
そして、精神を蝕んでいくのでした。
そこで主人公の
千葉敦子(ちば あつこ)は
現実とはまったく違う姿をした
パプリカとなり、夢探偵として
この事件の解決に挑むのでした。
登場人物・声優
■千葉敦子(ちば あつこ)/パプリカ
声:林原めぐみ
サイコセラピスト。
現実ではクールで美人
夢の世界では、真逆の性格をした女性でした。
パプリカの姿で、患者の悪夢に入って
治療するのが、彼女の心理療法。
時田に代わる天才は
いないと話すほど
彼のことを信頼していたよう。
■島寅太郎(しま とらたろう)
声:堀勝之祐
ブログには出ないけど
敦子たちにとってのリーダー的存在。
研究所の所長であり
DCミニの開発担当責任者。
彼も被害者であり
夢に侵食されてしまいます。
高い建物の上の階から
笑顔で窓ガラスに突っ込んだ時は
ヒィッてなった。
精神を冒された人は
ゾワっとするものがある。
■時田浩作(ときた こうさく)
声:古谷徹
DCミニの開発者。
太りすぎてエレベーターから
出られないほどの、脂肪を蓄えてた。
体は異常なほど大きいのに
中が子供の天才科学者。
■粉川利美(こながわ としみ)
声:大塚明夫
パプリカに夢の治療を受けている刑事。
島と接点のある人物でした。
そこからDCミニを知り
パプリカと接点をもち
この出来事に巻き込まれていくことになります。
■乾精次郎(いぬい せいじろう)
声:江守徹
研究所の理事長。
車椅子であり、自分の足で歩くことが
できなくなっていました。
「深淵な夢の前にあっては
科学などゴミに等しいのかもしれん」
そう言う彼は
DCミニやサイコセラピーマシンの
使用禁止を言い渡すのでした。
■小山内守雄(おさない もりお)
声:山寺宏一
研究所の職員。
敦子が好きであり
時田の才能に嫉妬する人物。
彼のような人が
一番危険な気がする。
■玖珂
声:筒井康隆
ネット上でのバー「RADIO CLUB」のバーテン。
作者の筒井康隆さんが
まさかの登場。
監督とも一緒に
世界に溶け込んでて
声優の方かと思いました。
■陣内
声:今敏監督
「RADIO CLUB」のバーテン。
一度出て終わりではなく
度々登場していたところ。
「RADIO CLUB」が
現実世界にもあったらなあと
思ってしまいました。
感想
言葉よりも実際に観てほしい世界観
物語のテーマは夢と現実。
けどその大きな枠の中に
生と死、光と影、善と悪
男と女、精神と物体、嘘と真実など
色々な2つの相反するものが
描かれている作品です。
それらが見事に
映像の中に、盛り込まれていました。
自分たちは、登場人物の夢と現実を
行き来することになります。
パプリカが潜入する夢は
DCミニを盗んだ犯人のせいで
普通の状態ではなくなっていました。
気を抜いたら、振り落とされそうな。
目が離せなくなる映像が
続いていきます。
夢は自由だからなんでもあり。
科学を超える可能性を秘めた、夢の世界。
おまけに自分の夢ではなく
他人の頭にある
未知の領域に踏み込んで
謎を解き明かそうとするのは、至難の業でした。
映画『パプリカ』の世界は
日本人形や、昔懐かしの要素をもつものが
たくさん登場します。
そして謎めいた現象ばかりが
次々襲ってくるので
サスペンス要素ももった作品に感じました。
度々出てくる日本人形は
やっぱり不気味。笑
それが何を伝えようとしているのか。
意図がわからないのが
一番怖い理由だった。
夢の世界の独特な世界観。
夢はやがて現実世界にも
現れてくることになります。
夢の世界が摩訶不思議で
騒々しかった分
静けさを感じていた現実。
それがたくさんの人の
夢が入り混じって
おかしくなっていく様子は
侵食の言葉が似合う異様な光景でした。
夢探偵パプリカ
千葉敦子(ちば あつこ)と
同じ研究所に所属していた
天才科学者の時田浩作(ときた こうさく)。
彼の発明したDCミニという
装置が盗まれたことで、物語は進んでいきます。
それは人と夢を共有することができ
その夢に入れる装置でした。
悪用されれば、大変なことになります。
敦子たちは、犯人が誰か
思い当たる人物がいたものの
事態は思わぬ展開を迎えることに。
謎解きの面でも、楽しい作品です。
また敦子はサイコセラピストとして
研究員でも一目置かれている存在でした。
サイコセラピストとは
暗示や催眠などを使った
心理療法を行う人をいいます。
悪夢に悩む患者の夢に潜り
原因を解決するのが彼女の仕事でした。
これは極秘のセラピーなので
夢の中では姿も性格もまったく違うパプリカに。
現実ではクールビューティーな
彼女が、夢では無邪気で
そのギャップにも引き込まれてた。
そんな2面生のあるキャラを演じる
林原めぐみさんの声にも注目です。
雰囲気の違いが好きでした。
現実で抑圧された敦子の姿
パプリカは現実で、敦子自身によって
抑えられていた自我のように見えます。
天真爛漫なパプリカ。
冷静沈着な敦子。
ある事実が分かったことで
途端に見え方が変わるのが
この作品の面白いところでした。
敦子は、時田が好きだということ。
自分にとっては
エェ!?ってなってしまう
予期せぬ展開だった。笑
それまでまったく
そんな素振りを感じられなかったから。
セラピーをする側でありながら
彼女自身も、起こる出来事で
治療を受けていたよう。
変化していく敦子の様子に
「けっこう素直になってきたじゃない」とパプリカ。
途中までパプリカに対しても
自分の言うことを
聞かせようとしていた敦子がいました。
けど途中、パプリカが敦子に
自分が分身だとは思わないのかと
聞く場面があります。
ここからパプリカが
敦子の本当の心の姿なんじゃないかとも。
また最後に、おもちゃのロボットと
同化してしまった時田が
敦子を飲み込んでしまう場面があります。
その時、時田は
「ややスパイスに不足。
欠如はパプリカ?」と。
敦子は本当の敦子になっていきながらも
やっぱりパプリカの中にも
敦子の要素があるのを
自分は感じたシーンでした。
そして時田も、子供の心のまま
体だけ異常な大きさになってしまった大人です。
彼の場合は、成長していない
心の分が、あのものすごい体型になって
現れてる気がしてました。
未知の領域である夢によって
抑圧された敦子が解放されていく。
子供っぽい時田は
自分の開発したDCミニで
大問題が発生していても、未だ研究に夢中。
そんな彼を、彼女がきつく叱る場面があります。
普通に見てれば
人が意識不明にまで陥ってるそばで
まだ研究のことばかり考えてるのかと
怒るのは当然のこと。
けど2回目を見ると
どうして彼女が時田に怒鳴ったのか。
敦子に頬を赤くし
時田と会話してるにも関わらず
敦子が気になって仕方ない
粉川利美(こながわ としみ)が浮かんでくるのでした。
この時のシーンにも
原因があったように見えるのです。
粉川は、敦子が夢の治療をしている患者でした。
研究所の所長である
島寅太郎(しま とらたろう)
との昔の縁がある粉川。
所長の紹介を受けて
DCミニを知った人物でした。
彼は、会って一目で敦子が
パプリカだと見抜きます。
そして彼女に惚れてしまったようでした。
そんな粉川を目の前にしながらも
DCミニしか頭にない時田。
粉川の様子には全く気づきません。
そして粉川と時田の会話を
眉一つピクリともせずに
聞いている敦子がいました。
その光景にも、敦子が
怒鳴った原因があるように感じたり。
けど怒鳴った時には、そのことには触れず。
そこでも彼女の気持ちを
抑えている部分が
あったんじゃないかと思いました。
そんな敦子が、最後
巨大な子供の姿から
大人になっていく場面があります。
彼女は夢を見ている状態でした。
それが、彼女の精神的な成長を
表しているように見えます。
けどその様子に
粉川と所長はポッカーン。笑
自分も最初はポッカーンだった。笑
何が起きたんだって
まったく分かりませんでした。
けどよくよく見ていくと
夢を通して、敦子の心が
子供から大人へ解放されていくという
シンプルな物語なのが
わかると思います。
お話はとてもシンプルだけど
そこに着くまでが冒険の連続。
とてつもなく奇妙で、不思議。
なだけでなく、不気味な夢に
何度も潜る必要がありました。
その過程を経ないと、敦子自身が
治療を受けれていることにはならないと。
あの工程の全部が
必要だったことに感じています。
そうして辿り着いたのが
物語の核の部分でした。
それまでの過程が楽しかったです。
摩訶不思議な面白さを
掘り下げていく行為は
人の見る夢を通して
敦子自身の深層心理を
探っていくのと同じことだったと。
スーッと気持ちのいい風が吹いています。
『夢見る子供たち』と『夢みる機械』
すべてが終わり
粉川の元にパプリカから
メッセージが送られてきます。
そこの追伸には
『夢見る子供たち』という映画が
とても良かったから、お薦めだと。
そう書かれていたのでした。
その後、夢の世界の
映画館にやってきた粉川。
そこには今敏監督が作られた
長編映画作品の案内が並んでいました。
『PERFECT BLUE』(1997年)
『千年女優』(2001年)
『東京ゴッドファーザーズ』(2003年)
この3作の後に並んでいたのが
3人の子供が入道雲を
見るようにして、背を向けて
並んでいる絵の案内。
『夢見る子供たち』のものです。
そのチケットを粉川が
買おうとしているところで
映画は終わります。
この『夢見る子供たち』は
今敏監督が2010年の
亡くなる直前まで制作されていた
未完の映画『夢みる機械』を
指しているとされています。
公式ブログが残っていました。
『夢みる機械』公式ブログはこちら
この赤青黄色の
ロボットを登場させようとしていたのだそう。
生物のいなくなった未来で
ロボットたちが、電気の国を目指して
旅をするストーリーが
予定されていたとのことでした。
子供向けの作品として
『パプリカ』から
ガラッと雰囲気の変わった『夢みる機械』。
監督はどんな物語を
作ろうとしていたのか
気になってしまう東でした。
関連商品
配信一覧
U-NEXT
Amazon
映画配信ページ
別途レンタル料がかかります。
Netflix