映画『ラストマイル』画面の奥が炙り出された連続爆破事件【あらすじ感想】
8/23に公開された映画『ラストマイル』を観てきました。
監督:塚原あゆ子
脚本:野木亜紀子
プロデューサー:新井順子
『アンナチュラル』『MIU404』のチームによって実現したシェアード・ユニバース作品であり
大人気ドラマ2作品との世界線が交わった奇跡の映画です。
映画『ラストマイル』のあらすじ感想
ブラックフライデー。
そこで行われる大規模なセール。
物語はその前夜から始まります。
世界で有名な大手ショッピングサイト「DAILY FAST(以下デリファス)」から出荷された荷物が爆発するという1件の事件を発端に、その後も同様の事件が発生。
デリファス商品が使用された連続爆破テロは、やがて日本を騒がす大事件へと発展していくのでした。
主人公は事件の起きる前に、デリファス関東センター長に就いたばかりの舟渡エレナ(演:満島ひかり)。
そして彼女と行動を共にするのは、入社2年目になるチームマネージャーの梨本孔(演:岡田将生)です。
事件を収束させるべく2人が中心となりデリファス、刑事、そして商品の配送を行っている羊急便に『アンナチュラル』『MIU404』のメンバーも加わっての4日間が描かれていきます。
ある大手ショッピングサイトの国内利用者数は約5000万人にまで及ぶという中で、毎日稼働し続ける倉庫内のベルトコンベア。
事件の渦中にあっても経営理念や目標達成のためにも出荷を止めたくはない。
この葛藤が上に立つエレナたちを苦しめることになります。
そしてエレナやデリファス日本支社の統括本部長、五十嵐道元(演:ディーン・フジオカ)。
彼らが捉えている状況や見えているものと
羊急便の委託ドライバーである佐野昭(演:火野正平)、佐野亘(演:宇野祥平)親子たちに見えているものや、取り囲む状況の違い。
他にもデリファスと羊急便の間にいる人物、羊急便関東局局長の八木竜平(演:阿部サダヲ)など
立場ごとに違う困難を抱え、それぞれに精神がすり減り、いつどうなってもおかしくない状況が続いていきます。
さらに『アンナチュラル』の不自然死究明研究所「UDIラボ」のメンバーと
『MIU404』に登場する第4機動捜査隊のメンバーが再集結。
2作品を知らなくても楽しめる作品ですが、知っているとこれはーっ!ってなる嬉しいサプライズにテンション↑↑↑でした。
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映画を通してデリファスの裏側を知っていくことに。
ショッピングサイトなど利用者にとって便利で嬉しいサービスは色々あるけれど、その分の負担がどこにかかっているのか。
サイトを利用する時、その背後には動いている人たちがいることを忘れちゃいけないと思いました。。。
また映画を観て一番強く感じたのは、何度も考えが転がっていく面白さです。
掴みどころのないエレナに翻弄されまくりでした。
映画の内容がわかってくると、登場人物の話しや動きの全部に意味があるように思えてならなくなっていきます。
台本は3時間くらいになるんじゃって思われていたボリュームとのことですが、それが約2時間に凝縮。
始めから終わりまで目が離せないくらいに、ヒントが散らばってそうで。
映る場面の一つ一つ、登場人物の身につけているものまで、いろんなところに考えられる部分が。
そして彼らがわかってくるほど物語に驚いて、深みにハマっていく映画でした。
ドラマ『アンナチュラル』のあらすじ感想
『アンナチュラル』は2018年に放送されていた全10話のテレビドラマです。
不自然死のほとんどが解剖されないままとなっている日本。
その事態を改善するため設立された研究機関が不自然死究明研究所、通称UDIラボです。
死因究明の調査を行うのは多くの解剖実績をもつ法医解剖医の三澄ミコト(演:石原さとみ)。
不自然死の放置。
それが彼女にとって最も許せないことでした。
真相を掴むためミコトはUDIラボのメンバーたちと、不自然死の裏に隠された事件を暴いていきます。
そのメンバーにはミコトと対立関係にある中堂系(演:井浦新)
三澄班の臨床検査技師、東海林夕子(演:市川実日子)
記録員の久部六郎(演:窪田正孝)、そして所長の神倉保夫(演:松重豊)たちの存在が。
生死と向き合いながらも、個性的なメンバーによってコロコロと空気が変わっていきます。
毎日のように人の死と向き合い、真相を解明していくミコト。
余程タフな精神でないと潰されてしまいそうなその責務を全うしているUDIラボのメンバーですが
重い空気を跳ね除けるパワーがすごかった。
ズッシリとくるテーマと、メンバーのカラッとした明るさ。
観てる人の心の動きをどこまで把握されてと言いたくなるドラマでした。
他にも事件だけでなく、人の間に生まれるドラマにも心動かされます。
法医解剖医としてのミコトと、1人の女性としてのミコトの日常。
とても重いテーマでありながら彼女たちのドラマによって、前向きな気持ちで死と向き合っていける作品です。
ドラマ『MIU404』のあらすじ感想
『MIU404』は2020年に放送された全11話の刑事ドラマです。
警視庁の働き方改革の一環で増設された臨時部隊、警視庁刑事部の第4機動捜査隊。
物語の主人公2人はその4機捜に所属していました。
1人は緊急招集された元交番勤務員であり
野生のカンのままに突撃していく伊吹藍(演:綾野剛)。
そしてもう1人は理性的で刑事としてのスキルにも長けている志摩一未(演:星野源)。
志摩は本当なら他の刑事とバディを組むはずでしたが、ひょんなことから伊吹と組むことに。
相性最悪に見える2人がバディを組むことで、どんな化学反応が起こるのか。
また伊吹・志摩のバディの他に、ベテラン刑事の陣場耕平(演:橋本じゅん)と
父が警察庁幹部の新人、九重世人(演:岡田健史)によるバディの物語も一緒になって、賑やかな4機捜が描かれていきます。
『MIU404』にハマったのは2組のバディによる4機捜のわちゃわちゃっぷりと
署に戻った時には1機捜と4機捜の隊長を勤める桔梗ゆづる(演:麻生久美子)が彼らを待っているという、この関係が好きでした。
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そして刑事に向いてなさそうな伊吹と、最初からガッチリ刑事な志摩の一見チグハグな2人の魅力。
お互いに暴言を吐いたり、志摩に散々な言われようの伊吹ですが
伊吹のその破天荒さが、ドラマをおもしろく掻き回していくことになります。
伊吹の疾走感でヒートアップして、志摩によってクールダウンする時もあれば
2人が力を合わせてオリャアアアアアッと力技で突破していくような場面も。
伊吹と志摩のバディが中心となって繰り広げられるドラマは
アップダウンにバチバチと『アンナチュラル』とはまた違うエネルギーに満ちた物語でした。