映画小説マンガ『近畿地方のある場所について』密かに広がっていた禁忌【あらすじ感想】
『近畿地方のある場所について』の世界に行ってきました。
著者:背筋
監督:白石晃士
小説投稿サイト「カクヨム」に、2023年1月〜4月にかけて全34話で連載されたホラー小説です。
その後単行本、マンガ、文庫と発売され、2025年8月8日には映画が公開。
映画の入場者特典(数量限定)には、書き下ろし短編小説がありました。
フィクション作品でありながらも、ドキュメンタリーのようにして描かれることで増幅される怖さ。
登場する様々な事件や怪現象を紐解いていくことで、ある真相が明らかになっていきます。
もくじ
『近畿地方のある場所について』のあらすじ
ある日こつぜんと姿を消したオカルト雑誌・編集長の佐山武史(演:夙川アトム)。
同僚の編集部員である小沢悠生(演:赤楚衛二)は
オカルトライターの瀬野千紘(演:菅野美穂)と行方不明になった佐山を見つけ出すため
彼が集めた資料を調べ上げていきます。
過去に起きた様々な未解決事件や怪現象のデータ。
それらを調査していくと、すべてが近畿地方のある場所へと繋がっていることが判明し
小沢と瀬野はその場所へと向かうのでした。
『近畿地方のある場所について』の感想
文章から映像に変わったことでのおもしろさ
出版社の地下資料室にこもって、膨大な資料を調査していた佐山。
そこにはたくさんの過去のデータが集められたままになっていました。
それらを小沢、瀬野と一緒に一つ一つ見ていきながら
真相に辿り着くまでに、いろんな怪現象を浴びれるのが怖いけど楽しかったです。
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原作ではたくさんのエピソードがバラバラに続いていきます。
映画は、そこから映像化するのに向いているエピソードが選び抜かれていました。
小説にあるエピソード全部を映像化しようとしたら、3時間でもまったく足りない量。
選抜されたもののなかでも動画配信者のお話が、自分は特にきてました。
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原作ではインターネット掲示板のスレッドに書き込まれた内容でお話が進んでいくところ
映画では配信動画を、自分たちが視聴者の立場になって観ることに。
スレッドからは想像していなかった、配信者の置かれた状況が映し出されていてビクビクでした。
配信者がシェアする写真のURLの記載はあるけれど
実際にその光景のヒントになる情報は、写真を見た人によるスレッドにパッと書き込まれたリアクションのみ。
そこからの映像化は視覚的な怖さに途中目をつむってしまったりもしましたが、それでも音は逃してくれず。
映画館の音響での恐怖を体感してました。
単行本、文庫、映画で違う展開が待っている作品
単行本、文庫、映画とそれぞれベースは同じでありながら異なるストーリーで展開されている本作。
単行本では背筋さんが主人公になって、消息を絶った友人・小沢の手がかりを探していました。
それが映画では原作を尊重しつつ、オリジナル要素が加わっていきます。
このお話の仕掛けの部分は単行本でも味わったけれど、それぞれ違う余韻が待っていました。
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お話に仕掛けられているものが文章で明かされていく小説と、映像で明かされていく映画版。
自分は映画を機に小説を読み始めたので、お話の後半の楽しみを映画館にとっておいた人でした。
けどそんなことする必要なかったなと。
小説をすでに読んでいる人にも、驚きがもたらされる作品になっています。
小説投稿サイトを使ったことで生まれた現代ならではのリアリティ
カクヨムで累計2300万PVの大ヒットを記録した『近畿地方のある場所について』。
本作の人気の一つに、現代ならではのリアリティがありました。
カクヨムはアカウントを作れば、誰でも書いたものを投稿できるサイトです。
その小説投稿サイトを通して、謎に包まれた背筋さんが
行方不明の友人を探していますと訴えかけながら、様々な事件や怪現象の記事を投稿していく。
自分はフィクションだと知って読んでいたけれど
何も公開されていない当時に見ていたら、これは実話なのか、それとも物語なのか
その間で彷徨うことになっていたんだろうなと思う内容です。
集められたバラバラな情報を、映画ではネット掲示板の内容から動画配信の映像に変えて表現されていたように
ケースによって変換して、事件の起きた時代に合わせた古い機械と現代の映像技術を掛け合わせて映像化されていました。
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またフェイクドキュメンタリーだけでなく、小沢と瀬野が物語を引っ張っていくことで
多くの事件をまとめ上げていくストーリーを作る役割を担っています。
2人の間に生まれるドラマが作品に劇映画としての要素を生んでいました。
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そして2025年の7月に発売した文庫版ですが本に描かれている内容に
映画のそのドラマ的な要素が影響しているとのこと。
背筋さん自身が脚本協力として携わったときに得た気づきから
ストーリーに重点を置いて書かれたのが文庫版なのだそう。
映画化がなければ生まれていなかった可能性もある、ドラマの描かれている『近畿地方のある場所について』。
ということで読むしかと、今度は文庫本にいってきます。
文庫版『近畿地方のある場所について』
読んできました。
小澤雄也が失踪した瀬野千尋を捜している文庫版。
単行本版しか知らない人には読んでほしい文庫だけで明かされているお話があります。
2冊を読むことで『近畿地方のある場所について』の全体像を深く知ることができるようになっていました。
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ドラマを重視した文庫版。
単行本や映画でもまったく触れられていない部分ではないけれど、自分は知った気になっていたんだなと。
それでいてこれ以上踏み込むのも怖いし、あんまり考えたくなかった部分の見方が変わっていきます。
描かれている怖いものをただ怖がるだけだった分、そういう存在に対して違う気持ちが生まれてきてました。
読んでよかったと思う1冊です。
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前の項目でも書きましたが『近畿地方のある場所について』のすごいところは
単行本、文庫、映画のベースはどれも同じなのに、それぞれ違うストーリーを持っていること。
原作そのままの映像化を期待している人にとっては意見が分かれるところかもですが
自分にとっては何度もまた新しい気持ちで入っていけたり
3倍楽しめるというおもしろさに繋がっていました。
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作品の順番も単行本からの映画、そして文庫と見ていったのが
自分にはピッタリだったんだなと思います。
原作がより詳細に描かれた単行本版。
そして映像化によって一気に膨らんだ映画版と、ドラマに重きを置いて描かれている文庫版。
そこまで考えを巡らせることのできなかった部分に、目を向けることのできた文庫版でした。
オーディブルで朗読が聴ける『近畿地方のある場所について』
今回『近畿地方のある場所について』の世界に触れて思ったのは
オーディブルで朗読を聴けたのが大きかったこと。
夜の暗い部屋で聴くのはやっぱり怖かった。笑
けどそれだけじゃなくて、オーディブルを聴きながら文庫本を読んでいくと
単行本との違いがよくわかります。
違うところはオーディブルを聴いてから、文庫本を読んでみたり
オーディブルを止めて、単行本と文字での違いを照らし合わせてみたり。
ストーリーだけでなく、楽しみ方も読んで聴いて観ての3通りある『近畿地方のある場所について』。
また新しい作品の広がり方を、恐怖と一緒に知ることのできたお話でした。
『近畿地方のある場所について』の関連書籍
↓マンガでは映画にない事件なども描かれています。