漫画アニメ映画『キングダム』受け継がれていく意志【あらすじ感想】
『キングダム』の世界に行ってました。
作者:原泰久
2006年から『週刊ヤングジャンプ』にて連載開始。
コミックは70巻を超え、2023年には累計1億部を突破している大人気作品です。
アニメは5期まで放送されており、実写映画は4作目までが公開されています。
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中華統一を目指す秦国第三十一代の王、嬴政(えいせい/演:吉沢亮)と天下の大将軍を目指す少年の信(演:山﨑賢人)が
それぞれに抱くものを成し遂げるための戦いの物語です。
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歴史に基づいた作品であり、古代中国の春秋戦国時代末期の秦を中心にした戦国七雄の七大強国が争う大乱の時代が描かれています。
戦国七雄は中国を分割支配した秦・楚・斉・燕・趙・魏・韓の七つの国。
春秋戦国時代(紀元前770〜221年)が始まった時は、中国大陸を周という国が統治していました。
ですが諸侯の間の揉め事や災害、疫病、さらには国王への反乱により統治が上手くいかなくなっていきます。
そして自分の娘との結婚が破棄されたことで激怒した一諸侯の申候が、第十二代目の周の王である幽王を暗殺する申候の乱が起こりました。
この暗殺により諸侯に殺される王に従う必要があるのかが問われ、我も我もと諸侯が諸侯を襲い、その中で強い力をもつ者が現れ始めていきます。
その最中で大きな力を手にしていったのが、秦の国でした。
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佐藤信介監督による、実写映画に沿って書いていきます。
映画の脚本会議には、作者の原泰久さんも一年にわたって参加されていたとのことでした。
もくじ
『キングダム』(2019年公開)
紀元前245年、秦国にて。
戦災により孤児となった少年の信は、幼馴染で親友の漂(演:吉沢亮)と共に奴隷の扱いを受けながらも
いつかは天下の大将軍になることを夢見て、剣術を磨き続けていました。
その日も漂と手合わせをしていた時のこと。
王の側近である大臣、昌文君(演:髙嶋政宏)に呼び寄せられた漂。
信も一緒にではなく自分一人であったためわずかに逡巡するも
「とっとと追いついてこいよ!」と信と最後の一戦を交え、二人はしばしの別れを告げることになります。
ですが再会は予期せぬ形で。
宮廷服に身を包んだ漂が血まみれで信の元に戻ってきたのです。
致命傷を負った漂から託されたのは、ある村の地図。
そして「俺を天下に連れて行ってくれ」と最期の言葉を残して漂は絶命。
漂はなんのために王宮に呼び寄せられたのか。
怒り狂い泣き叫びながらも信は漂の遺志を継ぎ、地図に描かれた場所へと向かうのでした。
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地図の目的地で待っていた人物こそが、秦の王である嬴政です。
けど信が何よりも驚いたのが、王の見た目。
漂のもつ雰囲気とは違うものの、彼らは双子のようにそっくり。
ここにきて信は、漂が宮廷に呼び出されたワケを理解します。
漂は嬴政の影武者として召し上げられたのでした。
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王の影武者である漂が殺され、嬴政は身を潜め。
その原因となったのが、嬴政の異母弟である成蟜(演:本郷奏多)の起こしたクーデターです。
我こそが正当な王家の血を引く者なのだと、嬴政を殺して自分が王になろうと画策した成蟜。
ですが王宮内に潜む嬴政の敵は成蟜だけではありません。
その多くが嬴政の死を望み、成蟜の側についていたのでした。
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こうして敵だらけの王宮を抜け出した嬴政は、遠く離れた村に潜伏を。
そこで信や、その村にいた山民族の河了貂(かりょうてん/演:橋本環奈)たちと、玉座を取り戻すべく最初の戦いが始まっていきます。
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『キングダム』は最初から一気にもっていかれる作品でした。
いきなり親友の死と、その後に死んだ漂のそっくりさんが平然と姿を現すという。
そしてその嬴政の身代わりとなって漂が死んだことを、いきなり突きつけられた信。
後に嬴政と漂の間の出来事や、漂がどんな思いで身代わりを引き受け、信の元に辿り着くまでに何があったかなどは描かれているものの
最初は何も知らず、漂の遺志のためだけに自分が何をすべきか
それを少年がやり遂げたことに、有望な将軍の姿がすでにチラチラして見えていました。
『キングダム2 遥かなる大地へ』(2022年)
前作から半年後。
隣国、魏による秦への侵攻により、信は「蛇甘(だかん)平原の戦い」にて、天下の大将軍への一歩を踏み出します。
魏の総大将を務めるのは戦の天才といわれている呉慶(演:小澤征悦)。
彼は魏火龍七師の一人でした。
魏火龍七師は中国戦国時代の魏の君主、安釐王(あんきおう)の時代に魏国で英雄といわれた七人の大将軍のこと。
呉慶は秦の六大将軍(王の命令がなくても自らの判断で戦争を行う特権をもつ六人の将軍)とも並ぶ力をもつ人物です。
その呉慶の策略により、戦場となった蛇甘平原の戦いにおける要所をあっという間に占拠され、戦況は秦軍の不利な状況に。
対する秦軍の総大将を務めるのは「本能型の極み」とも言われている麃公将軍(演:豊川悦司)。
勇猛な武士の集う軍を率いて前線で戦い続ける彼は戦を何よりも好む人でした。
麃公は大将軍でありながら、王騎(演:大沢たかお)のように六大将軍には入っていないものの、戦いにおいては王騎と並ぶ力の持ち主です。
その圧倒的な力を誇る将軍を筆頭にした魏と秦軍の戦い。
信が歩兵として蛇甘平原に着いた頃は、すでに戦場は魏軍に有利なように占拠され、多くの歩兵も死亡し、軍の力の差は歴然でした。
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その劣勢を強いられている状況で度肝を抜く行動に出たのが、信のいる隊を率いる千人将、縛虎申(ばくこしん/演:渋川清彦)。
彼はそこで命知らずな命令を下すのでした。
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信の初陣です。
秦と魏の戦いを通して大将軍がどんな人物か、彼らに仕える千人将から歩兵までの軍の全体像が描かれていきます。
信は戦がどのようなものかを目の当たりにすることに。
信の目指す大将軍。
彼らの戦いに圧倒されながらも、歩兵として己の戦いを繰り広げた信。
そこで信が組んだのが最弱の伍と言われる五人組でした。
同郷の尾平(演:岡山天音)、尾到(演:三浦貴大)の兄弟に、伍長の澤圭(たくけい/演:濱津隆之)、そして謎めいた人物、羌瘣(きょうかい/演:清野菜名)。
そして羌瘣の一族、蚩尤(しゆう)にまつわる過去がここで明かされていきます。
覆る最弱の伍と、その高揚感。
大軍の激突するこの大きな戦いの中、伍を組んだことが信に新たな力を与えていきます。
『キングダム 運命の炎』(2023年)
魏国との戦いに勝利した秦。
初陣の武功により、信は百人の兵を率いる隊長に任命されます。
ですが勝利に浸っていられたのも束の間。
今度は隣国の趙が大軍を率いて秦へと攻め込んできたのでした。
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趙国の秦に抱く恨みはとてつもなく、それは趙軍の残忍さに表れていきます。
けれど秦の有力な武将たちは既に出払っているという最悪の事態が。
そこでしばらく戦から離れていた六大将軍の生き残り、王騎が総大将に任命されることになります。
そして急遽召集した兵で馬陽にて迎え撃つ作戦に出るものの、そこは王騎にとって消し去ることのできない因縁の地。
中国全土にその名が知れ渡るほどの力をもつ王騎が総大将に。
これが何を意味するのか。
趙国との戦いはとてつもない勢力が動きだしていたのでした。
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また信の率いる隊は、王騎軍直属の特殊百人隊として飛信隊と命名され
二万の軍を率いる敵将を討つという任務が信たちに与えられます。
飛信隊の百対、二万の兵を率いる敵将。
そんな無茶なと、数で圧倒的に負けている敵の軍に、どう飛信隊は立ち向かうのか。
百人将となった信がさらなる高みを目指し、仲間と共に戦う姿が描かれています。
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そしてこの章では「馬陽の戦い」の他に、嬴政の過去にまつわる「紫夏編」も。
嬴政は何故、中華統一を目指すのか。
彼の恩人である紫夏(演:杏)との約束や、その胸の内が語られていきます。
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前作までを超える規模の、次に続く戦いの始まり。
王騎という重要人物が前に前にと出てきます。
信も尊敬し、その存在感に最初は気圧されながらも
天下の大将軍がどんな存在なのかを、信は間近で知ることになります。
原作では信に「唇巨人」なんて言われていたり
「ンフフフ」に笑い声も「ココココ」と、クセが強くどこか捉えどころのない大将軍でしたが
王騎のその大将軍たる姿は、そのまま作品の魅力に。
彼が大人気キャラな理由も納得のかっこよさでした。
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秦軍の象徴ともいわれている王騎。
そんな伝説の大将軍から特殊任務を与えられた飛信隊。
それがどれほどイレギュラーなことか。
そうなったのも信の行動があったからこそです。
そして隊長として人を束ねる難しさと、彼らが団結した時に発揮できる強さ。
王騎による、この戦いを通じての学びは信を確実に成長させ、確固たる自信を彼につけさせていました。
『キングダム 大将軍の帰還』(2024年)
秦と趙の間に起きた「馬陽の戦い」にて、見事敵将を討ちとった信。
しかしここで更なる強敵の出現が。
趙軍の総大将、龐煖(演:吉川晃司)でした。
自らを荒ぶる神を内に宿す武神と称し、自身の武力を神の域まで高め上げようとしている人物です。
彼は軍を率いる立場にいながらも、そこに収まる器ではありませんでした。
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敵将を討ち、仲間と束の間の穏やかな時間を過ごしていた飛信隊でしたが、突如彼らを襲った龐煖単独の攻撃により隊員の多くが死亡。
信も致命傷を負い、飛信隊は逃げるほか生き延びる術がありません。
仲間たちはなんとかして気を失った信を安全な場所へと連れて行こうとしていました。
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急な単独行動に出た龐煖。
彼はなぜ飛信隊を襲ったのか。
そして戦いの全体を把握していたはずの王騎につきまとっていた違和感。
因縁のある者同士が総大将となったこの馬陽での戦いですが、この戦いの違和感は玉座にて帰りを待つ嬴政も拭えきれずにいたことでした。
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そうして戦況はあっという間に秦軍の劣勢となり
秦軍が追い込まれたことで、それまで見守っていた王騎がついに戦地へと馬を走らせていくことになります。
また彼らの戦いを遠くから見ていた趙軍の天才軍略家、李牧(演:小栗旬)。
秦国の誰もが予想していなかった展開を、彼は戦場の盤の上で既に描いていました。
それまで名の知られていなかった李牧は、秦を大きく揺るがす存在になります。
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有利な状況にいながら戦いが嫌いだと言う者もいれば、どんな状況に立たされても戦いが面白いと言う者もいる。
勝敗に関わらず、発する言葉から見えるその人物の計り知れなさに
武力と策が合わさった時の圧倒的な軍の強さ。
敵将を討ち確かな自信をつけたはずの信でしたが、それは同じ戦場でたやすく折られてしまいます。
そうした戦いの厳しさも。
乱世の世において古き門が閉じ、続く者に受け継がれていく、重大な転換点ともなる激烈な戦いが繰り広げられていました。
『キングダム』コミックス
『キングダム』公式サイトリンク一覧
■マンガ
キングダム特設サイト|週刊ヤングジャンプ公式サイト
■アニメ
TVアニメ「キングダム」公式サイト
■映画
映画「キングダム」公式サイト
映画『キングダム2 遥かなる大地へ』公式サイト
映画『キングダム 運命の炎』公式サイト
映画『キングダム 大将軍の帰還』公式サイト