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小説映画『ユンカース・カム・ヒア』原作と映画で異なるストーリーをもつ作品【あらすじ感想】

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『ユンカース・カム・ヒア』の世界に行ってきました。

著者:木根尚登

原作は1990年にCBSソニー出版から出版された全2巻の文庫小説で

今は2冊分が1つになった完全版が発売されています。

 

 

他にもラジオドラマ、OVA、漫画、映画と幅広い展開をみせ、様々な方法で親しまれてきた作品。

発売から20年以上が経った2012年には、朗読劇も上演されました。

 

『ユンカース・カム・ヒア』のあらすじ感想

 
ロンドンのペットショップで、1匹のシュナウツァー犬と出会った

16歳の麻生瞳(声:久我陽子/演:中島早貴・仙石みなみ)。

瞳にユンカース(声:古本新乃輔・上村典子/演:藤田玲・青木玄徳)と名付けられたその犬は

不思議な力で周囲に奇跡を起こしていくのでした。

・・・

ユンカースは小室哲哉さんの犬の名前からきているのだそう。

木根尚登さんと小室さんは、2024年にデビュー40周年を迎えたTM NETWORKのメンバーであり

TM NETWORKは宇都宮隆さんも含めた3人の音楽ユニットです。

木根さんが小説『CAROL』を書き上げた後の、小室さんによる「二作目は、僕んちのユンカースの話を書いてよ」から始まった本作。

モデルになったユンカースがいる分、壮大なテーマよりも

ユンカースに夢が託され、瞳の日常の中でユンカースの魅力が発揮されていきます。

他にも小室さんにまつわるネタが小説の中に散りばめられていました。

・・・

自分は映画から入って、その後に原作を読んだのですが

そこで思ったのは、映画と原作の違いが好きということ。

ストーリーが変わりながら、主人公とユンカースの奇跡が描かれていきます。

名前や年齢、家庭内の様子も違う2人の主人公。

原作では離婚した両親の父に引き取られている16歳の麻生瞳が主人公ですが

映画の両親は離婚前の状態でした。

両親がなかなか帰ってこれない家で暮らすのは、11歳の野沢ひろみ(声:押谷芽衣)。

映画ではまだランドセルを背負っている彼女が中心になって、物語が進んでいきます。

・・・

原作の中で1つのテーマになっていた主人公と両親の家族のあり方。

それが映画だと、家族関係やひろみの恋に絞ってフォーカスが当てられていきます。

原作がブラッシュアップされ、ひろみとユンカースの映像によるかわいさしさも相まって

心あたたまるドラマで描かれている劇場版でした。

一方小説では家族関係や恋だけでなく、ユンカースがヒーローのようになって果敢に挑んでいくミッションも発生。

事件の裏で大金が動いていたり、警察沙汰になる騒動に巻き込まれながら

強固になっていく絆が描かれています。

劇場版から入ると、原作ってこんなことが起きるお話だったの!っていう驚き。

命懸けで瞳を守ろうとするユンカースの奮闘劇が待っていました。

・・・

人の言葉を話せるユンカース。

なかなか親と会話することもできない主人公にとって、ユンカースの存在はとても大きなものです。

ユンカースは会話ができるだけでなく、他の犬が木の根元でおしっこしてる時にも

彼は人間の男性用トイレで用を足し、ちゃんと流すところまでを自分で済ませるという

まるで人間な振る舞いを時々見せるスーパーワンコ。

それだけでなく奇跡を3つ起こせる力というのは、それ自体がもう奇跡でした。

・・・

どうしてユンカースはそんな特殊能力をもっているのか。

映画ではユンカースの不思議を言及するような場面はありません。

そこはやっぱり原作のほうが深く掘り下げられていて

ユンカースと瞳の出会いや、ユンカースと同じ道をたどる犬の話に、彼の家族のことなど

映画では語られてない部分が明かされていってました。

・・・

映画、原作と作品を観た順番が、自分には合っていたのかもしれません。

テーマを絞って、ユンカースの不思議の理由には触れないで描かれていた映画版。

そこでもっと知りたいなって思ってからの、出会いから始まる物語は

こういうことだったのかと、知りたかった部分の解消されていく時間でした。

・・・

それと映画と原作の内容が違うので、それぞれ違う奇跡が起きていくおもしろさもありました。

映画はひろみの女の子らしい願いから始まっていきます。

けど願いが叶ってワーイではなく

叶いそうになったところで後悔して、全力で阻止しようとするところ。

自分で望んだはずなのに、いざそれが実現するところまでいくと願ったことを後悔するという。

大きな願いをする時に限ったことじゃないけれど

小さなお願いは、普段からいろんな部分で無意識にでもしてると自分は思っていて。

小さくても何かを願う時、せっかくなら思いきり喜べることを願いたいなと

ひろみに起きた奇跡を見て思ったことでした。

・・・

そして原作では、ユンカースが救世主のように見えるユンカース様様なことが起きていきます。

いつもの日常の中で見つけたお願いをしていくよりも

窮地に陥った時、ピンチ、絶体絶命

そういう崖っぷちな状態に立たされた時の彼らが、次々やってくる困難を乗り越えていくのが原作です。

ありえない現実をつくりだしてしまえるユンカースですが

そこにはやっぱり、願った人の想いはもちろん

ユンカースや周りの人たちの想いの力も乗っかって叶えられたんじゃないかと思うような

奇跡としか言いようのないことが待っているお話でした。

・・・

ここまで違うと同じタイトルで倍楽しんでいる気持ちに。

他のももしかしてベースは同じでも違う内容なんじゃと思って見てみたら、やっぱり違いました。

1994年に出たOVAの『ユンカース・カム・ヒア ~メモリーズ・オブ・ユー~ 』は

30歳から小学生までの四姉妹とユンカースの物語が描かれているそう。

親のいない姉妹にユンカースが母との再会の奇跡を起こしていくという

OVAでもまったく違うお話で描かれている『ユンカース・カム・ヒア』。

こういう作品の展開もあるんだと、同じタイトルで何倍にもなって楽しめるユンカースの奇跡の物語がありました。

 

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