【裏テーマ考察・あらすじ感想】映画『インセプション』夢が持つ未知の世界
今回は映画『インセプション』についてです。
2010年公開の
クリストファー・ノーラン監督によるSF映画。
人の夢を通じて
潜在意識に潜り込むという
未知の世界が、描かれています。
見た人によって、主人公の結末が
ハッピーエンドかバッドエンドかが
別れる作品に。
また人の可能性を膨らませる
映画であるようにも感じました。
ネタバレばかりなので
それでもいい人だけ進んでください。
あらすじ
「インセプション」とは
人の夢に潜り、潜在意識に
アイデアを埋め込むこと。
サイトーは、夢の中で
コブの腕前を試していました。
コブの作戦は、失敗に終わったものの
サイトーは、その後
現実世界で彼に、ある依頼をします。
それは、人のより深い意識に潜り
インセプションするというものでした。
浅い層に、アイデアを置いても
自分が考えついたアイデアだとは
思いにくいのだそう。
本当に自分の意思によるものだと
思い込ませるためにも
深い層まで、潜る必要がありました。
サイトーが持つ企業のライバル社を
つぶすのが、彼の目的。
そこで、フィッシャー社社長の息子である
ロバート・フィッシャーに
つぶさせようと考えます。
そのためには、ロバートの意識の
深い部分に
その行為に出る為の
アイデアを埋め込まなくてはなりません。
そこでコブは、ロバートの
夢の夢の夢(第3階層)まで
潜る作戦に出るのでした。
登場人物
■コブ レオナルド・ディカプリオ
声:内田夕夜/浪川大輔
彼に起きる困難の原因は
すべて彼にあり。
■サイトー 渡辺謙
重要人物。
ライバル企業を、つぶしてほしいと
コブに依頼してきます。
実業家であり、資金面で
コブたちに全面協力してくれることに。
■アーサー ジョセフ・ゴードン=レヴィット
声:土田大/松田洋治
コブの相棒。
ミッション中に登場する
第2階層の夢の主。
■モル マリオン・コティヤール
五十嵐麗/冬馬由美
コブの亡き妻。
彼の潜在意識に、いつも現れ
彼のミッションの邪魔をします。
■アリアドネ エリオット・ペイジ
声:冠野智美/白石涼子
マイルズの紹介により
急遽、作戦に加わることに。
そして、夢の設計士になるのでした。
■イームス トム・ハーディ
声:咲野俊介/平田広明
コブの幼馴染の、偽装師。
夢の世界では、他の人物に変化し
活躍します。
第3階層の夢の主。
■ユスフ ディリープ・ラオ
声:木村雅史/江川央生
薬剤師であり調合師。
彼が作った強力な薬により
深い層まで、長く潜れるようになります。
第1階層の夢の主。
■マイルズ ディリープ・ラオ
声:木村雅史/江川央生
モルの父親であり、夢の世界へいく
装置を開発した人物。
コブの恩師で
夢の世界のことは、彼から学んだのでした。
感想・考察
失敗したミッション
若いサイトーから
アイデアを抜こうとしたコブ。
そこで、コブの潜在意識に潜む
妻のモルが邪魔をします。
サイトーも、コブたちと同じように
この世界のことを知っていたため
夢の世界ということが
バレてしまうのでした。
そこでコブは夢の主
アーサーを射殺。
主が目覚めたことで
この世界は、崩壊していくことに。
コブも、そこで死ぬと同時に
1つ上の階層で
体に刺激を受け、目を覚まします。
サイトーはその後、これが
夢の世界の夢ということに
気付きました。
自分の見ていた夢ではなく
コブの仲間の夢だったのです。
ここまでバレれば
作戦続行は不可能。
全員が現実で目覚め、サイトーの前から
退散するのでした。
その後、サイトーも目を覚まし
腕には傷が。
そこで、自分がエクストラクト
(夢の中で、アイデアを抜かれること)
されそうになっていたことを確認。
コボル社に依頼された
コブの作戦は失敗に。
サイトーはというと、そんなコブの腕前を
試していたようでした。
そのため、コブに盗めるアイデアは
もともと無かったのではとも
予想されています。
夢の世界
夢では、時間の速さが変わる
仕組みになっていました。
映画に出てくる夢には
3つの階層と
虚無の世界があります。
現実の20倍の速さで進むため
現実の10時間は、夢での1週間。
2階層で半年、3階層では10年に。
そして3階層の下にある
虚無の世界は
夢で死んだ人が、いく場所に。
この全ての層に、コブたちは
行くことになります。
虚無は潜在意識が、ただ広がる世界。
一緒の夢を見ている人の中に
死んだことのある人がいれば
その人の潜在意識から
生まれたものが、残り続けています。
死んだサイトーとロバートが落ちた
虚無の世界には
コブとモルの作ったものが
残されていました。
コブが、虚無へ向かうことになった理由は
夢で死んだロバートとサイトーを
上の階層に、引き上げるためでした。
2人とも別の場所にいたけれど
同じ虚無の世界に、存在しています。
そして、上の階層に行くためには
体に、衝撃を加えると同時に
虚無の世界で、また死ぬことが
この世界のルールでした。
虚無は、冒頭シーンでも
登場します。
コブが、年老いたサイトーの元へ
連れて行かれていた場面。
それが虚無の世界での、出来事です。
虚無は、忘却の世界のため
サイトーは、それすら忘れていたよう。
けど彼は、コブと再会したことで
すべてを思い出し、そこで自殺。
上の階層で衝撃を加えられ
現実へと戻るのでした。
亡き妻モル
コブの妻モルも
優秀な夢の設計士でした。
彼女は、自分の思うままに
夢の世界を作り上げていきます。
そして50年も、そこでコブと過ごし
彼女にとっては、夢の世界が
現実のようになっていました。
なんでも思いのままにできるのです。
そりゃ居心地最高だろうなって。
トーテムという
夢か現実かを区別するアイテムが
映画に登場します。
彼女にとっての、それはコマ。
そして深い層にある金庫に
モルはコマを封印していました。
もう現実に帰る気は
なかったのです。
ですが現実には、彼女の帰りを待つ
子供たちや両親が、いました。
コブはモルを連れ戻そうと
トーテムが隠された、金庫を探します。
そして、金庫を見つけ出し
その中で、コマを回すのでした。
すると夢の世界のため
現実では、起こりえないことが。
コマは延々と
回り続けるのです。
これこそが、夢の世界なのですが
回り続けていた場所は、モルの深層意識の
心臓部分とも言える金庫の中。
これがコブにとっての
大きな過ちになるのでした。
コマの回っている場所が
夢の世界だと、コブはモルに
認識させようとしていました。
そこまでは、よかったのですが
見落としていた点が、あったのです。
それは人の深い意識下、潜在意識は
夢だけでなく、現実にも存在し
私たちに影響を与えているということ。
夢の深い意識層で、回り続けるコマが
彼女への、インセプションに
なってしまうのでした。
現実世界に、モルを連れ戻したコブ。
そして2人は、ホテルの一室で
記念日を祝おうとしていました。
ですが、モルの様子はどこか不安定で
見ていてヒヤヒヤと。
現実にいる、彼女の潜在意識でも
トーテムのコマが
未だに回り続けていたのです。
現実に戻ってきたはずなのに
まだ夢の中にいると、錯覚している
彼女が、そこにいました。
その後彼女は、今度こそ目覚めるために
窓から、飛び降り自殺をしてしまいます。
けど、ここは現実。
死んだ彼女が、目覚めるはずはなく
モルは、永遠の眠りにつくのでした。
このことが、コブの潜在意識に
悪い影響を及ぼすことに。
彼はそこから、苦しみ続ける人生を歩み
今に至っていました。
そして彼の潜在意識には
モルが度々登場し、彼の
邪魔をしてくるようになります。
けどコブは、相手がモルだったため
それを阻止することができずにいました。
夢の設計士
夢の世界で、現実のような
空間を作り上げる人を
設計士といいます。
建物や道、車などの動くものまで
全てを作ることが可能です。
そして必ず、何かあった時のために
逃げ道を用意しておくなど
細かなところまで作り込める
頭脳が必要になります。
コブも以前は
優秀な設計士でした。
ですが、彼が設計をすることは
もうありません。
理由は、モルが夢に必ず現れ
邪魔をしてくるからでした。
モルへの罪悪感に苛まれ
コブの潜在意識に
深く投影されていたのです。
そのためコブのミッション中に
度々現れては、コブが
不利になるよう動いてきます。
彼が夢の主でなくても
彼の子供やモルが、姿を現すことから
コブの家族への想いは
相当強いものだと感じました。
そして、その想いが
ミッションの妨げになることも。
コブは、妻のモルを殺したと
疑われていたため、子供2人を
モルの父に預けて
家から逃げていました。
モルが死んだことを
子供には伝えられず
一緒に出かけていることになっています。
そして彼は、殺人容疑のため
家があるアメリカに
入国することもできず。
サイトーの依頼を引き受けたのは
クリアすれば、子供たちに会えるように
手配してくれるという
契約を結んだからでした。
ラスト、彼は無事クリアして
子供たちと再会する結末が、待っています。
久しぶりの家には
不安定になりながらも
回り続けているコマがありました。
コマは倒れることなく回り続け…。
そこでプツンと終わったのが、意味深。
コブのいる世界が
夢なのか、現実なのか。
ここで、この映画の全てが
夢だったという説が、浮上してきます。
不安定に回り続けていたコマを見て
映画を見返したり
内容を思い返した人には
新しい展開が見えてくる作品です。
裏の『インセプション』
回り続けて終わるコマから
新しい考えが生まれます。
現実と思って帰ってきた場所が
夢だったなら、というものです。
ならばそれは、誰の夢なのか。
夢を共有していたアーサーなのか。
彼はコブの相棒で
最初から、ずっと一緒に行動していました。
ですが、アーサーは第2階層
ユスフは第1階層
イームス第3階層の夢の主です。
となると、3人以外で
最初から一緒にいた人物は、サイトー。
コブに依頼をしたのも
入国の許可を出せるのも、彼でした。
ここで、彼の夢であることに1票。
そして『インセプション』の
メインストーリーだった
サイトーの依頼は
偽のミッションだったのではという
説があります。
他にもモルの父、マイルズも
協力者なのではないかと。
彼は、夢の発明者でした。
そのため、誰よりも
この世界に詳しいのです。
彼の協力なくして、裏のルートを
コブに進んでもらうのは不可能に感じました。
そこで、このミッションの
本当の目的は、なんだったのか。
それは、コブが心に抱えた
問題の解消です。
マイルズの紹介で、急遽このミッションに
参加することになったアリアドネは
設計士になります。
そんな彼女ですら
コブの潜在意識の問題に
気づいていました。
彼女は、夢の世界が
初めての学生です。
それなら、相棒のアーサーや
叔父のマイルズが
彼の問題に、気づかないはずがなく。
こうして、それらしいミッションを
用意したのだと予想されています。
そのため一番最初の
サイトーが、コブを試した一件は
2人を出会わせるためのものだったと。
サイトーは、夢のことだけでなく
コブの話も、アーサーから聞いていた。
それを頭に入れて、見直すと
違って見えてくるものがあります。
アリアドネを参加させることは
マイルズにとって
想定外の出来事だったと、考えられます。
彼女は、夢の世界を一度体験した後
計画の参加を拒否しました。
その後、戻ってきたのは
マイルズが説得したのではと。
なのでアリアドネは
本当の目的を
知らない人物だと言えます。
そして、その後ユスフという
強力な鎮静剤を扱う人物と
コブは接触することになります。
紹介したのは、コブの幼馴染である
イームスという偽装師。
彼は情報収集能力に長け
夢の世界では、変装が得意でした。
彼はコブが自分で
仲間に加えた人物です。
そして、ユスフは調合師。
安定して長い夢を見ていられるよう
鎮静剤の調合をしてくれます。
彼は、多くの人が夢を
共有できるよう
眠る場所を提供していました。
ここまでが、現実での
仲間集めのルートです。
その後、ユスフの鎮静剤により
夢の世界がスタート。
ユスフとイームスも
アーサーにより、このミッションの
本当の目的を聞いていたと予想。
その後、試しに眠り
起きたコブは、またモルに会い
取り乱した状態でした。
ここが夢なのか、現実なのか
洗面所でコマを回そうとするけど
話しかけられ、回さずに
その場を後にします。
ですが、そこは
回したコマが止まらない
夢の世界にいるという
可能性も示していました。
こうして裏のミッションが
スタートしていきます。
ライバル社社長の息子
ロバートにアイデアを
埋めつけようとしていたけれど
本当は、コブがターゲットなのでした。
ロバートと夢を共有するために
集まった空港は、現実として
描かれていました。
ですが、そこは既に夢の中。
また、コブにサイトーを信用させるため
サイトーの権力を
見せる演出がされていました。
このミッションのために
航空会社を買い取ったこと。
そしてサイトーの電話1つで
コブのアメリカ入国が
許可されてしまうことなど。
どうして彼に
そんなことができるのか。
そこから、本当は
そんなことしなくても
彼はアメリカに入国できるのでは
という考えが、浮上します。
電話を掛けるのは演出。
彼の潜在意識に、こびりついた
モルへの罪悪感が
自分は指名手配されていて
子供たちに会えないという
妄想を生み出してしまったのです。
なので最初から
ミッションは達成されるものとして
用意されていたはず。
そして、達成したことをコブが実感し
子供たちに会っていいんだと
信じさせる必要がありました。
偽のミッション中
ロバートに対して
コブは、彼を信じさせるための
行動に出ていましたが
ここでも、同じことを
コブ自身が受けていたのでした。
投影されたモルや、コブ自身の
意識の武装化により現れた
列車など(コブはロバートのだと
思い込んでいる)
コブの潜在意識にあるものが
行手を阻んでいました。
それは、モルとの世界を
壊そうとする脅威が
自分たちだったからだと。
コブは無意識の中で
自分や、仲間のことまでも
敵視していたようでした。
そして第3階層で、モルにより
殺されてしまったロバートを助けるため
一番深い層にある、虚無の世界へ
アリアドネと
向かうことになります。
そこにも、モルがいました。
彼女を前にし、コブはアリアドネに
見守られながら、懺悔をすることになります。
その後、ロバートを第3階層へ
引き上げることに成功。
ですが、その間に
サイトーが第3階層で力尽き
彼も虚無の世界へ
落ちてしまうことに。
それが、年老いたサイトーがいた
冒頭のシーンへと、結びつくのでした。
彼はサイトーのことも
助けに行ったため、長い間
虚無の世界を
彷徨っていたことになります。
再会した2人は、忘れていたことを
思い出し、その後
浅い夢まで、目覚めていくのでした。
そこが、コブにとっての
現実世界でしたが
本当は、まだ夢の中なのです。
こうして全員が目覚め
ミッションは無事クリア。
入国が認められる確証を得た彼は
子供たちと、再会を果たします。
まだ夢の中ですが
それでも、本当に目覚めた時に
彼は子供たちに会いに行けるのではと。
それが、アーサーやマイルズたちの
願っていたことだと思います。
また、映画の一番最初
ここで既に、コブの全てが
語られていました。
虚無の世界で
年老いたサイトーが言います。
「途方もない考えに、取り憑かれた男だった」
そして彼の正面にいたコブが
顔を上げるシーンが、続きます。
その後、サイトーに試されていた
夢の場面に変わるのですが
冒頭で、映画全体のヒントが
用意されていたのでした。
表と裏の側面を持つ
『インセプション』。
何通りの考えが、あるのか。
また、自分の心の
奥深くにあるものを
考えるきっかけにも、なる作品です。
今の私たちも
夢を見ている最中なのかもしれません。
目が覚めた時
あんなこともあったねって
笑い合えたらいいですね。
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