コミック『HEAT-灼熱-』15・16・17巻 ”熱”と”義”を持った男の集う歌舞伎町【あらすじ感想】
こんにちはの東です。
今回は『HEAT-灼熱-』15、16、17巻のことを書いていきます。
原作に武論尊(ぶろんそん)さん。
作画は池上遼一(いけがみ りょういち)さんです。
1998年から2004年まで
連載されていた作品で全17巻に。
『HEAT-灼熱-』最後の記事です。
海崎こそがボスだ
いや次はタオが、あれっダンテがと
ここまで進んできていました。
この全員と接点のあったのが
中谷里見の父です。
全部が1つの
大きな話で繋がっていました。
ネタバレがあるので
それでも良い人だけ進んで下さい。
もくじ
あらすじ
舞台は新宿歌舞伎町。
そこの闇金融に突然やってきた
主人公の唐沢辰巳がいました。
そんな彼は
日本最大の暴力団である
「関西山王会」や警察を相手にしても
怯むことはありません。
極道の世界では素人の唐沢が
街で名を馳せていく様子が描かれています。
登場人物
唐沢 辰巳(からさわ たつみ)
“新宿租界”という極道の
組織を立ち上げた唐沢。
変わってしまった彼の目を
覚まさせたのは、彼の仲間たちでした。
藤巻(ふじまき)
「関西山王会」の6代目。
彼が6代目になったことで
唐沢たちとの間に緊張が。
けど藤巻は立場が変わっても
彼のままでした。
伊丹(いたみ)
ダンテのもとにつきながら
唐沢の帰りを待っていた伊丹。
彼が5年間
踏ん張っていなければ
歌舞伎町は、唐沢たちにとって
もっと悪い場所になっていたかもしれません。
牛耳っていた時の悪い顔が
まさに悪役の、それでした。
石倉 義信(いしくら よしのぶ)
「関西山王会」の元NO.2。
一番に早死にするタイプだと
唐沢に言われていた石倉でした。
それが、なんとここまで。
今では「オレは、やっぱり
唐沢好きなんだよ…」とまで言うように。
自分が物語の柱だと
思っていた人たちよりも
石倉がここまできていたこと。
唐沢や、自分の予想が
外れていくのも面白かったです。笑
感想
15巻
伊丹の背後にいた黒幕
歌舞伎町をラスベガスと
貧困街が同居する街に変えた伊丹(いたみ)。
けどキラキラ華やかな街の下には
彼のたくさんの血が流れていました。
支配するのがどういうことか。
何も持たずの唐沢と
歌舞伎町だけでなく
世界を支配しているクリストファー・ダンテ。
戦争のプロとの戦いが
描かれていきます。
山王の5代目であった
村雨(むらさめ)の遺志と
4代目、5代目の妻であった
尾形 佳乃(おがた よしの)の
意向により、山王に帰ってきた藤巻(ふじまき)。
けど彼は唐沢 辰巳
(からさわ たつみ)が大好きです。
唐沢たちが、今どんなに不利な
戦いをしようとしていても
彼は、唐沢と一緒にいようとする
なんなら彼を引っ張り上げるような人でした。
そんな彼が6代目を継ぐと言うのは、どういうことか。
それは時と場合によっては
唐沢を殺さなければならないということ。
山王を継ぐとは
藤巻の言葉で言うのなら
仲間全員の親になるということです。
歌舞伎町と一緒に
唐沢たち仲間の関係も
一度崩壊の時を迎えていました。
そんな藤巻ですが
6代目として、まずはダンテに挨拶を。
ですがダンテは、藤巻が出した
手を握り返すことはなく。
彼はまったく相手にされていませんでした。
けど唐沢は別です。
伊丹の過去を知った唐沢の挨拶は
ダンテに火をつけるには、十分なものでした。
人を猿と捉えるダンテは
唐沢たちの意地(プライド)が
気に入らなかったよう。
“死”は何よりも簡単な手段で
“排除”に過ぎないと話すダンデです。
なので彼は簡単に人を殺しません。
殺すのではなく調教し
支配することこそが、彼のやり方でした。
このようにして
破産寸前の銀行などを
次々と支配下に置き
日本でも力を拡大してきたと。
そのダンテ相手に
唐沢が不在の間
歌舞伎町を守るため
戦ってきたのが、伊丹なのでした。
唐沢のいない間も、ひとり戦い続けた伊丹
ダンテに唐沢を殺すよう
命じられた伊丹。
逆らうわけにいかない彼は
全身ボロボロの状態で
歌舞伎町の外地へ追い出されてきました。
殺るしかないんだと
唐沢と1対1の対決をすることになります。
唐沢からすると
村雨とサシでやった直後のことでした。
けどどうしたって伊丹は
唐沢に敵いません。
それを分かっていながら
しかも唐沢のことが好きでありながら
2人は殴り合うことになります。
涙を流しながら、唐沢に突っ込んでいく伊丹。
彼の拳を握った唐沢も
目に涙を浮かべていました。
村雨と戦った時の光景が、デジャブします。
村雨も伊丹も唐沢も
3人とも抱き合う代わりに
殴り合っているんだと。
唐沢が言葉にしたものが
ストンときていました。
そう言われた時の、伊丹の笑顔。
彼はそのまま、その場に
倒れ込んでしまうのでした。
彼が眠っている間
伊丹と関わりのあった
亜希(あき)が
唐沢不在の間にあったことを聞かせてくれることに。
唐沢が捨てた街を
「意地でも拾わにゃいかんのだ〜!!」と
彼は叫んでいました。
顔面の大きな傷は
彼が自分で作ったものなのです。
ダンテの前で、彼の嫌う
意地を見せた伊丹でした。
けど、その意地が
ダンテに歌舞伎町が
完全に乗っ取られるのを
防ぐことになっていたのです。
彼は5年の間、彼なりに
ずっと戦っていたのだと
亜希はそれを見ていた人でした。
唐沢が戻ってきたことで
伊丹から唐沢に
バトンが渡されていました。
そして、山王会の元NO.2であった
石倉 義信(いしくら よしのぶ)も
ダンテの情報を得て、再び歌舞伎町に。
こうして唐沢から
ダンテへ宣戦布告がされたのでした。
支配の前の破壊
主要人物が揃ったところで
ダンテから早速、声がかかります。
唐沢、藤巻、石倉、伊丹が
外地(貧困街)に呼び出され
そこを伊丹にやると。
藤巻には手を出させず
唐沢には好きに使っていいと。
急なことに大混乱の彼らでしたが
必ず裏があるはずだと、誰もが怪しみます。笑
そしてこれが
また悲劇の始まりでした。
外地を手に入れた唐沢たち。
その代わりに、伊丹の
巨大なカジノホテルが爆破され
それから1ヶ月で
街は荒廃の一途を辿ることに。
ダンテの資金で回っていた
歌舞伎町は、一気に廃れていきました。
「破壊から甦るのに必要なのは
人間の力ではない、”資本”という”力”!」
「”支配”とはすべて
“破壊”から始まる!!」と。
ダンテは、崩れていく建物を
見下ろしながら、話していました。
ダンテは貧困街を与え
栄えていた場所を破壊し
彼らを屈服させようとしていたのです。
被害は、山王会にも及んでいました。
伊丹のカジノと一緒に
村雨たちのカジノも崩壊し
藤巻もブチギレでした。
彼の計画は
とっくに動いていたのです。
唐沢たちは、ダンテの手のひらで
踊っている状態でした。
「喰えるという保障があっての
“秩序”だ…」と言う伊丹の言葉が沁みます。
その後、亜希の家に
子供の強盗が入ったりと
歌舞伎町の治安は悪くなる一方。
みんな生きるために必死でした。
唐沢VSダンテ
ダンテの資金源を失った歌舞伎町は
既に死にかけていました。
この事態に藤巻、石倉
伊丹の3人は頭を下げることで
解決させようとします。
けど藤巻は、唐沢に
「おまえだけは何があっても
頭ァ下げちゃあかんのや〜!!」と。
けどダンテが一番に
そうさせたいのは唐沢なのです。
そこで唐沢はダンテに
サシの殴り合いを挑みます。
ダンテは、もう唐沢に興味津々でした。
無謀な戦いをどうして挑むのか
ダンテには理解不能な様子。
けど殴り合いながらの
2人の会話が、好きでした。
困惑するダンテの問いに
唐沢の答えが、すごくシンプルで。
「自分を嫌いになりたくないんですよ!」と。
「自分自身を好きでいられる内は
何者にも負けはしない!!」
と言う唐沢の言葉は
現代でも通ずるものだと思います。
仲間を死なせ、そこから5年間
捕まることを選んだ唐沢。
彼が本当に復活したのを感じる言葉でした。
ダンテの部下、ソロコフ
ダンテはその後
香港へ向かうため
自分の部下を唐沢たちの相手にさせます。
“猿”の扱いはソロコフの方が向いていると。
ダンテより攻撃的で
戦場においての勘は
彼よりも優れていました。
けど、その猿も
数が多ければ別です。
そして相手が唐沢のような
鶴と猿が合わさったような
人であれば、もっと違います。笑
「人間の”尊厳”は
何者にも支配はされない…
それを”崩壊”させて
初めて他人を”支配”できる…」と
唐沢は言います。
彼はこの言葉の通りに
一度、ソロコフらの”尊厳”を
叩き潰し、”支配”する作戦にでたのでした。
これは、ソロコフにとって
初めての負け戦に。
ですがダンテにとっては
これも想定内のこと。
ここでソロコフの本性を
見定めようとしていたのです。
けどソロコフが一見
裏切っているように見えても
それもまたダンテの計画通りに進んでいたり。
あのクーリー・タオに
石倉にと、1人ずつダンテたちによって
身動きの取れない状態に
させられていく様子が、描かれていました。
クーリーはタオ一族の会社を
石倉は最愛の息子を
では唐沢は何か。
思わぬ人と、思わぬ形での
再会が待っていました。
16巻
里見の思う”強さ”と、唐沢の”強さ”の違い
ダンテとの戦いに決着がつきます。
不思議です。
唐沢と一緒に進んでいくと
あれだけ脅威と思っていた
ダンテの本当の姿が見えるように。
そして色々な人が、この騒動の中
それぞれの思いで動き出していました。
これまでも、たくさんの物語が
1つの戦いと重なっていて
どこまでいっても濃いい作品です。
唐沢の恋人である
中谷 里見(なかたに さとみ)が
ダンテ側に回っての再会。
唐沢は彼女からの手紙も
すべて受取拒否していたため
前に離れて以来の2人でした。
まるで唐沢を裏切っているように
見える彼女です。
別人のように感じたり。
それでも良い女性な部分は
隠しきれていませんでした。笑
彼女を唐沢の足枷と感じている
石倉は、唐沢たちの犬と化した
ソロコフに声をかけ
里見を殺そうとしていました。
けど、すんなりはいかず。
ダンテの側にいる里見です。
唐沢がどういう行動に出るのかを
見ているダンテと
石倉から里見の方に寝返ったソロコフ。
そして唐沢には殺させまいと
自分の手で、里見を殺そうとする石倉。
銃を持って、ソロコフと石倉
里見のいる場所に乗り込んだ唐沢が。
狭い部屋で、3人の男が
銃を構えている様子。
それぞれが自分の考えをぶつけていました。
そして唐沢と里見
2人のわだかまりが
解消されることは、ここではありませんでした。
彼女が今、唐沢の前に
姿を現したのにも、理由があったのです。
けど唐沢が彼女の望み通りに
動くことはなく。
唐沢は、この場にいた
3人の誰1人殺すことはありませんでした。
その様子を見ていたダンテは
ますます唐沢の考えが
わからなくなります。
「奴は、何を見ている!?」と。
そういう唐沢だからこそ
好きなんだと言う石倉に対し
ソロコフもダンテと同じように
こんなぬるいリーダーでいいのか!?と
不満しかない様子でした。笑
そして里見のことを
痛い(かなしい)女だと言う唐沢。
だから彼は撃たなかったんだそう。
そう話す唐沢に、里見は
「ぬるければ必ず殺される!
強靭な男にならなければ!」と訴えます。
全部、唐沢を強くするために
やったことなのです。
けど2人の思う強さは、違うものでした。
「”非常”と”強さ”が
同じものとは思わない…」
こう残して、彼は
その場を立ち去ってしまうのでした。
そんなすれ違いを起こしている
2人の仲を取り持ってくれたのが藤巻です。
彼がいなければ
2人の距離は開いたままでした。
山王会の藤巻ですが
“新宿祖界”にもなくてはならない存在に感じています。
けど里見も、この先の
ダンテとの戦いに巻き込まれ
重症を負うことに。
唐沢の怒りはギリギリまで
膨れ上がっていました。
ダンテの後ろにあったもの
ダンテがどうして、強大な力を
手に入れることができたのか。
そこには父の力がありました。
この戦いで藤巻もケガを負い
ソロコフに関しては
藤巻をだしに使った罰が待っています。
背中から思い切り刺された藤巻。
けど彼は、ただでやられる人ではありませんでした。
藤巻もやられて、とうとう
唐沢、石倉、伊丹の3人に。
それでも怒りのままに
ダンテの勢力に突っ込んでいく唐沢たち。
あまりに無謀すぎて
最初はポカーンとしていました。
相手は、彼の父による
大勢の兵隊がついているのです。
父に頼んで、兵を送ってもらう
手筈を整えたダンテ。
こう見ていると、父の力あっての
彼の勢力なことがわかります。
しかも兵が到着するまでは
安全なところで待機していようと。
それが彼のやり方でした。
けど、それらのすべてを
阻止した男がいました。
彼は裏で秘密裏に動いていたため
ダンテは、今まで自由に支えていた
戦力を一気に無くすことになります。
唐沢たちがこれまで
“裸”にされてきたように
ダンテを丸裸にしてくれた人物がいたのでした。
唐沢と似たところを持つ
その人物は
立ち上がった唐沢を知って
自分も何かしたかったと。
このおかげで、形勢が一気に逆転し
唐沢に追い風が吹き始めていました。
今までの力を失ったダンテ。
父親が間違った生き方をしていれば
子も同じ道を辿ってしまうと。
タオ親子もそうでした。
父の兵を失った彼は、味方2人。
一方の唐沢には
石倉や藤巻の義理の息子である
勝男(かつお)たちを筆頭に
数えきれないほどの人が、ついてきていました。
ここまで絶大な力を
得ていたダンテですが
今の彼に対し、唐沢は
「おまえは、誰とも戦っていない!」と。
「おまえの背後の”威”が
戦っていたんだよ…」と諭すように話していました。
まさかの追い風。
てっきり、このまま唐沢と
また対決するものとばかり思っていました。
けど父の力をなくしただけで
ダンテ自身の力も
ここまで無くなってしまうのかと驚いています。
最後の最後に
涙を流しているダンテを
見ていたら、何も言えなくなっていました。
この大きすぎた騒動が
本当の意味で終わりを迎えます。
ですが、失ったものの多さに
唐沢たちや歌舞伎町が
立て直すまでには、時間が掛かりそうでした。
17巻
里見の親を探しに上海へ
最終巻は、里見の親を
唐沢が探しに行くストーリーでした。
日本に帰ってきた
城島 陸(じょうじま たかし)が
入手した情報です。
里見の父
中谷 健作(なかたに けんさく)は
自分の身を隠すために
過去に起きた
交通事故を利用したんだと
城島は見ていました。
海崎 元一郎(かいざき げんいちろう)
タオ親子と、健作の死には
何人もの人の名前が絡んでいます。
けど、この事故の背後には
これらの全てを操っていた
ダンテの父の存在がありました。
城島の読み通り
健作は上海に身を潜めていました。
そして彼には
やらなければならないことが。
それが彼を裏切った投資家への報復です。
健作はアメリカ人と
中国人の投資家と手を組み
中国への投資会社を設立していました。
その時に集めた資金が
問題だったのです。
それらは、アメリカの老人たちの年金でした。
2人の投資家は、その後
健作を裏切り、資金とともに
そのまま行方をくらませてしまいます。
そのため健作は、中国に留まり
機会を伺っていたのでした。
そのうちのアメリカ人はすでに死亡。
貧困街に、そのまま
埋められていたところを発見します。
ひどい姿でした。
そしてもう1人の中国人である
呂 朱明。
彼が、あのソロコフと一緒に
この話の、最後の敵となります。
藤巻にナイフで
腹部を抉られていたソロコフです。
生きていたことに驚きでした。
城島に紹介された、塾生と一緒に
上海で捜索する今回の話ですが
その道中で、健作を
憎んでいるという女性
皇 英姫とも出会った唐沢。
これまでの仲間がいない場所で
戦う彼が、描かれていきました。
そして最後には、歌舞伎町の
仲間たちが集結することに。
やっぱりみんながいなくちゃって
視界が一気に開けた感じがしました。
上海でケリがつき
歌舞伎町に帰ってきた藤巻が声を上げます。
「どんな”権力(ちから)”にも
“資力(カネ)”にも転ばねェ
世界一の”大祖界”にしたるわい!」と。
唐沢の言う
“熱”と”義”を持った男達がいれば
歌舞伎町の発展は間違いありません。
実際に、今はどうなんだろうと。
最近は行く機会が
無くなっていたので、頭に浮かんでいました。
現実は漫画のようにいかなかったり
気持ちが変わっても
色々な事情で、表面が
なかなか変えられない人もいると思います。
けど心の根っこの部分に
必要なことが、たくさん書かれている
熱い作品でした。