映画『恋はデジャ•ブ』繰り返す毎日をどう生きるか【あらすじ感想】
今回は『恋はデジャ・ブ』のタイムループの世界に。
キュンと途中爆笑の楽しすぎるラブコメでした。
1993年公開。
監督・製作・脚本を手掛けたのはビル・マーレーの盟友、ハロルド・ライミスです。
『恋はデジャ・ブ』あらすじ
テレビキャスター、人気天気予報士のフィル・コナーズ(演:ビル・マーレー)。
彼はグランドホッグ・デーの取材のため、番組ディレクターのリタ(演:アンディ・マクダウェル)、カメラマンのラリー(演:クリス・エリオット)とともにペンシルべニアの田舎町を訪れていました。
年に一度訪れるこの町でいつものように仕事をして一日を過ごし、そして翌日に目を覚ますもなにか様子がおかしいと思うフィル。
起きれば彼だけが2月2日の6時にリセットされ、毎日同じ日を迎えていたのです。
こうして天国とも地獄ともとれるような延々と繰り返される日の中で、悪さをしたり恋のズルをしたり自暴自棄になったりしていくうち
フィルは少しずつ違う2月2日を過ごすようになり、やがてかけがえのないものを得ていくのでした。
監督がヒントを得たニーチェの「永劫回帰」について
監督はフリードリヒ・ニーチェによる「永劫回帰」の思想からヒントを得たとのこと。
「永劫回帰」はニヒリズムが極限までいった時に現れるもの。
ニヒリズムは日本語で「虚無主義」と訳されています。
人はそれぞれ様々な基準をもっていて、時代や場所を超えた万人に共通する絶対的なものは存在しない。
物事に意義や価値などはなく、自分の存在も含めてすべてが無価値であることをいいます。
自分たちは何のために生きているのか。
ニヒリズムの思想に基づいた世界では、生きる意味が存在しなくなってしまいます。
今日のやること、明日のやることなど小さな目的はあっても、
大きく見た時の生き甲斐などのすべてが虚しく価値がないという虚無主義的な考えでした。
このニヒリズムはニーチェの思想の根本になっているものです。
他にも永劫回帰は、一般的にはあらゆる出来事が同じ順番で延々と繰り返し起こる世界像を指します。
同じ人生が永遠に繰り返されるのなら、あらゆることが無意味に感じられるだろうということから
永劫回帰はニヒリズムのもっとも極端な形とされたのでした。
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ニーチェの考えはそこで終わらず。
さらに彼は何度も繰り返されることに耐えるには、超人的な意志が必要だとします。
ニーチェの指す超人は、現実世界での生きる意味を体現している人のようです。
そしてニーチェにとって生きることは自分自身を超克すること。
自分を超えて価値を創造していく。
この生き方を体現している人こそが、彼のいう超人。
自己を克服する価値創造により超人は、極限的ニヒリズムの中を生きることができると。
この超人の存在が永劫回帰とニヒリズムの肯定に繋がっていくとニーチェは考えたのでした。
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またニーチェはニヒリズムを克服する在り方に、子どもの存在を入れています。
子どもの無邪気さなど、彼らは遊ぶようにして自分の人生を創造していくことから
子どもは独自の在り方で、ニヒリズムを克服していると彼は言います。
義務を背負うラクダから、次はやりたいことをやるライオン。
そして最終的には、自分の価値を自分で創造していく子どものような精神をもって生きていこうと。
この永劫回帰の人生を生きるのなら、何度繰り返しても良いと思える人生を生きるべきであり
そのため超人のように生きようという
ニーチェは否定的な視点から生を克服し、積極的に肯定する思想を残した人物でした。
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色々と書いてきたけれど、彼の思想の根底には絶対的なものは存在しないという考えがあります。
なのでニーチェの思想も絶対的ではないということを前提に自分で判断することが求められていました。
彼の思想に触れて、どう人生を創造していくのか。
ニヒリズムの状態に陥っている人の背中を押すニーチェの思想ですが、その言葉を絶対なものとするのではなく
自分の人生に活かし、自分だけの生を肯定的に生きていくことの大切さに気づかせてもらえる内容でした。
ニーチェの思想と合わせて映画を観た感想
映画の話から遠ざかってしまったけれど、フィルは同じ毎日を繰り返すならと、思いつく限りのやりたいことを全部やりつくします。
彼は肯定的に受け入れるまでに、かなりの時間が必要でした。
同じ人生を延々と繰り返すのではなく、彼の場合は同じ毎日の連続です。
けどフィルはその繰り返す2月2日の中で、選択肢を変えることによって違う結果が生まれていくことに気付きます。
それを見ていて、毎日のように同じ時間に出勤して行う同じ業務内容。
自分でなくてもマニュアル通りにやればできる仕事は、なんというかカレンダーの日付は変わっても同じ毎日の繰り返しのようにふと感じました。
実際にいつも同じ手順に沿ってお仕事をしているけれど、同じことを繰り返しながらも毎日いろんなエピソードがあります。
そして仕事があるありがたさと。
同じことを繰り返す中、どんな気持ちで取り組んでいくか。
毎日を肯定的にという気持ち一つなんだなと思いました。
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そしてフィルも、同じ毎日を受け入れた後に少しずつ変化していきます。
町の色々な人と交流をして人助けをしたり、スキルを磨いてみたり、町のことなら誰よりも詳しくなっていったり。
そうして過ごした時間はフィルの恋にも影響し、以前の彼とは別人に。
この繰り返す毎日を受け入れ、その中で彼のできることを続けていった結果、フィルは新しい人生を手に入れたかのように変化していったのでした。
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大変貌を遂げたフィル。
ニーチェの思想と合わせて観ていくと、フィルのタイムループの物語に新しい視点ができて、もっと面白くなっていってました。
けどまだニーチェの書籍をちゃんと読めていないので、読めたらもっと変わるのではと思います。
書籍を持っている人は、ぜひ一緒に観てほしい映画です。
ニーチェの書籍
『恋はデジャ・ブ』関連サイト
恋はデジャ・ブ|ソニー・ピクチャーズ
映画の配信サイト一覧が載っています。