のほりひがし。 東の感想ブログ

漫画アニメ『チ。 ―地球の運動について―』地と知と血の物語【あらすじ感想】

マンガ・アニメ感想

 
『チ。 ―地球の運動について―』の世界に行ってきました。

作者:魚豊

2020年9月〜2022年4月にかけて

小学館『ビッグコミックスピリッツ』にて連載されていた全8巻の作品です。

難しいテーマ、8巻で完結しているにも関わらず

2025年で累計発行部数は500万を超え

アニメは2024年10月〜2025年3月の間に、全25話がNHK総合にて放送されていました。
 

あらすじ

 

 

15世紀のヨーロッパ。

ラファウ(声:坂本真綾)は12歳で大学の入学が認められるほどの優秀な少年でした。

周りからの期待はハンパなく

当時重要視されていた神学を専攻するのが当然のルートだと

ラファウ自身や周囲も思っていた時、彼の選択を覆す瞬間がやってきます。

それは天動説が信じられていた時代に地動説を証明しようとしたため

異端者として捕まった過去をもつフベルト(声:速水奨)との出会いでした。

フベルトの考えを聞き、ラファウは自身でも掘り進めていくにつれて

異端であるはずの思想に美しさを見出していきます。

・・・

天動説と地動説

この2つの違いは宇宙の中心がどこにあるのかです。

地動説よりも前に認められていた天動説は

地球が宇宙の中心にあって太陽や月、惑星がその周りを回っているというもの。

一方の地動説は、太陽が宇宙の中心にあって

その周りを地球たちが回っているというものでした。

 

感想

 
『チ。』では天動説が認められている中

地動説を探求しようとする人は異端者とみなされてしまいます。

異端者狩りを役目とする者に捕らえられた場合、その先に待っているのは地獄のような拷問でした。

『チ。』の舞台になっている中世のヨーロッパは

キリスト教社会でありカトリック教会が大きな影響を及ぼしていた時代です。

その教会の教えから逸脱した行動をとるということは

魂、精神における大罪を犯したのと同じだけの罪を負うことを意味していました。

・・・

自分の命を危険に晒してでも後世に残すべき知識を得たと、奮起した人たち。

それが最終章までに物語を繋げていく主人公や、彼らの周りにいる人たちです。

この作品の主人公は1人じゃありません。

人から人へ、命懸けで託された地動説を証明する言葉が伝え継がれていく『チ。』の物語。

地動説という1つの異端思想を伝えるために、どれだけの血が流れたか。

好調で景色が明るく見える時もあるものの、他には悲劇、悲劇、悲劇に次ぐ悲劇が待っていました。

 
そうまでして真理を伝えようとする人たちと、異端者を排除しようとする人

そして地動説が前に現れても、天動説こそがと主張する人たちの戦争です。

それぞれの掲げる信念や、ほとんどの人が信じているものを疑い

真理を知りたいと探求する人の心があるために生まれた戦い。
 

最悪、それが間違いだったらと思うとゾッとします。

だからこそその思想をもっているだけで処刑されてしまう立場にいながらも

自分が正しいと思う行動をとって戦う人たちの生きた姿にきてました。

・・・

現代に残るものの中にも、こうして命懸けで伝えようとした人たちが

どのくらいいるんだろうと作品の後に思ったことです。

今はネットや本で簡単に知ることができるけど

そこに至るまでにどれだけの苦労や、内容によっては血が流されていたのか。

ズラーッと並ぶネット上の文字を見て、その大元の背景を思った日でした。

・・・

そして残されたものの中で、大元の知識がどこまで正確に伝えられているのか。

もしかしたら自分が書いた天動説と地動説のことや

中世ヨーロッパの内容も、もっと正確な他の言葉があるのかもです。

『チ。』は「?」が浮かんだ瞬間を大切にするよう促していました。

疑問に思ったことを見逃さず考える。

知識は得た後に思考することのほうが重要だとありました。

それを今の身近なところで言うなら大元を知ることや、その情報は本当に正しいのか。

大多数が信じているから正しいんじゃなくて、正しいのは真実。

そしてその真実が圧倒的少数であって、その思想を持つことすら良しとされない。

そんなことが起こりながら、ようやく広まっていったものだったり

もしかしたら今もそうした戦いの中にいる真実があるのかもしれないと思う『チ。』のお話でした。

・・・

同じテーマの学説同士が対立した時、どちらかが正しければどちらかは間違っていて

主人公たちの証明する地動説を前に、間違いを認めざるを得ない人物がいました。

たとえその研究に、人一人の寿命を遥かに超える歳月が注がれていたとしても

敗れた側は認めなくちゃならない。

対立する説にも積み上げてきた長い歴史があります。

その歴史を背負って人生の大半を費やしてきた人が

死を迎えようとしている時に襲われた、これまでの全てが一瞬で崩れ落ちる絶望感。

残酷でした。

・・・

個人の信念など無関係に、真理というのは究極に無慈悲だと

あるキャラクターは言います。

絶対不変の真理として、ただあったり、身の回りで起きているもの。

誰かが文字にして残さなければ、語り継がれることはなく消えて

言葉で把握できなくなったとしても、ただあるもの。

そうした難解なものから目を背けず、探求し続けた人だけが

時にはとてつもなく美しく、時には地獄のような姿をした真理を見つけ出していくんだろうなと

『チ。 ―地球の運動について―』の世界に触れて思いました。

 

コミックス

 
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配信情報

 
配信サイト一覧は公式サイトの「On air」ページで確認できます。

TVアニメ「チ。 ―地球の運動について―」公式

 


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