小説アニメ音楽『CAROL』ピュアでまっすぐな少女を導く冒険の物語【あらすじ感想】
『CAROL』の世界に行ってきました。
1988年12月9日にリリースされたTM NETWORKのコンセプト・アルバム
『CAROL 〜A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991〜』と共に
書籍、アニメ、ラジオドラマなど様々な方法で、少女の物語が展開されていったメディアミックス作品です。
著者:木根尚登
1989年4月にCBS・ソニー出版より発売。
後の1990年には1時間のアニメ化が実現し
漫画家の高河ゆんがキャラクターデザインを担当。
恋愛要素強めの作品となっています。
声優はTM NETWORKのボーカル、宇都宮隆さんが参加されている他
8000人を超える人の中から選抜されたメンバーで構成されているとのことでした。
もくじ
『CAROL』のあらすじ
チェロ奏者を父にもつ少女キャロル・ミュー・ダグラス(声:久川綾)。
イギリス・バースの街でごく普通の暮らしをしていた彼女を、奇妙な出来事が襲い始めていきます。
好きなバンドの人気が急落。
そして父ライマン・ミュー・ダグラス(声:田中秀幸)のチェロから音が出なくり
その後にはビッグベンの鐘の音も消失。
周囲から音が消えていき混乱するキャロルですが、さらに奇妙な現象に巻き込まれていくことに。
ある日の深夜、学校の複合芸術教室に忍び込んだキャロル。
彼女はそこでバンドの人気低迷の原因となった問題作のディスクを
特殊なコンピューター・グラフィック・システムを使って再生しようとしていました。
それはモニター・ディスプレイに音を映すことで、音を目で捉えることができるという画期的なもの。
ですが再生後、彼女は膨大な青い光に包まれ、そのままディスプレイの中へと引き込まれてしまいます。
キャロルが目を覚ました時、目の前には別世界の光景が。
元の世界の音を取り戻すため、異世界で奮闘する少女の物語が描かれていました。
『CAROL』の感想
本の大きさやページの装飾と、童心に帰ったような気持ちで読み進めていってました。
ここまでがっつりファンタジーだったとは。
どこか懐かしい優しさを帯びた少女を取り巻く世界。
それでいて大人になった今でも考えさせられるもののあるキャロルたちの冒険です。
キャロルの暮らす世界と、異世界の2つの世界で
失われた音を取り戻すというそれぞれの目的のために
異世界で集った仲間と協力して冒険が始まっていきます。
その途中で彼女が誰と出会うのか。
出会った相手との間にストーリーが生まれていき
それを重ねていくことで、やがて辿り着く場所があります。
襲いかかってくる敵に勝つために強くなろうと武装することもなく、バキバキに鍛える必要もない。
少女のキャロルはキャロルのままで世界を救える存在であって
誰と出会い、そこから彼女が何を受け取るのかが大切なことに気付かされます。
もちろん襲ってくる敵から身を守るために戦う力も必要ですが
彼らに出会っていなければ戦う力のないキャロルの物語はすぐに幕を閉じていただろうと
敵の大群にも襲われます。
そこで自分には戦う力が無いと卑下するのではなく
自分の強みを誰がどこで活かして、全体のために役割を全うするのか。
キャロルは少女でありながら大きな使命をもって異世界に飛ばされた人物でした。
バンドが好きで、音楽に囲まれてごく普通に生きてきた少女が
自分と違う姿をした生命とも力を合わせて、音を取り戻すために戦っていきます。
誰と出会うかの可能性と、置かれている状況や力の有無よりも、そこでどんな覚悟を決めるのか。
身一つで危機を乗り越えようとする少女の真っ直ぐな強さが眩しかった。
言葉と音楽の力
キャロルの世界とラ・パス・ル・パスの音を盗むために
敵が音に乗せて唱えていた呪文があります。
言葉や音のもつ力を改めて感じてました。
敵がまさか生命の自由や平等、愛などの象徴である言葉を
呪文に使っていたとはという驚きもあったのですが
それらの言葉の後に、愛や平和などとは真逆の意味をもつ言葉を1つ加えただけで
善の言葉の力が打ち消されて、悪の力が増強するという。
普段も言葉の力のことは、いろんなところで耳にするようになったけれど
それが呪文にも当てはまるおもしろさ。
実際古代に使われていた呪文にどんな意味があるのかだったり
一番古い呪文が何かも自分にはわかりませんが
言葉の力を知らなかったら、そういうものが生まれることもなかったのかなと。
その力を知っていたから、現代にも言い伝えられている呪文のお話があるのかなと思う部分でした。
・・・
また世界から音を奪うために唱えられていた呪文を乗せるための和音というものがあって。
その和音も盗む時には本来のものではないものに変えられ
善の力として唱える時には、本来あるべきものへ戻して奏でる必要がありました。
言葉だけを善のものに揃えてもダメで、その言葉を乗せる音も整えなくちゃならない。
音楽が人の心に与える影響の大きさも聞いたことがあったので
言葉だけでなく乗せる音楽も合わせて、その両方がもつ力の大きさを感じたキャロルたちの冒険でした。
・・・
日常からもし音が無くなったら。
生きる楽しさの激減した味気ないものになるんだろうなって。
声が出せる限りは、無音の中でそれらを紛らわすように話す量が増えていく気がしてます。
アニメ『CAROL』を観ての感想
アニメの『CAROL』は小説の要点が1時間にまとめられたストーリーになっています。
自分は原作で全体を把握していたから流れに乗れたけど
原作を知らないで観たらどう感じるんだろう。
先に観れていれば〜って、ちょっと後悔。
ターゲットは女子に絞られ、当時女子中高生から支持されていた
高河ゆんがキャラクターデザインを担当しています。
アニメと原作はストーリーのベースは同じであっても、だいぶ雰囲気の違う作品に感じていました。
キャラクターが美に続く美であったり、あるキャラの結末も違う描写で表現されている点や
TM NETWORKを彷彿とさせるものが散らばっていたりと
圧縮されながらも共通する点、異なる点、同じだけど違う世界観の描写が楽しかったです。
男性は少し手に取りづらいかも。
アニメを観た後に、原作のストーリーをそのキャラでイメージしたら
だいぶ煌びやかな世界観に変身していってました。
恋愛模様もアニメの後に原作に戻ると、そこまで濃く描かれていなかった場面にも
もしかしてあの時の2人は…と想像が膨らんでいく面白さがありました。
『CAROL 〜A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991〜』を聴いての感想
『CAROL』の物語を小説、映像、そして音楽やラジオドラマ、写真集など
1つの作品から様々な展開ががされている本作。
小説とアニメでは悲しさよりも
異世界での冒険の楽しさのほうが勝っていたのですが
音楽では切なさ、寂しさ、惜しむ気持ちのほうが強くなっていってました。
『CAROL』の世界の触れ方が増えるごとに、味わう気持ちも増していきます。
ボーカルの宇都宮さんが、フラッシュの声を担当されているのもあってか
フラッシュの歌に聴こえてくるという。
始まりがあれば必ず終わりがあって
キャロルたちの冒険にも終わりがあります。
そして彼女はフラッシュたちの暮らす世界の存在じゃありません。
この先キャロルの暮らしていた世界と
自由に行き来できるかなんてわからず、これが最初で最後かも。
けど異世界と元の世界との関係性に
わずかな希望を見出してからは思いが止まらず。
異世界で出会ったフラッシュとは別のフラッシュがいること。
そこに物語が終わっても、未来が浮かんだり
音楽を聴きながら願わずにはいられないものがありました。
願いが物語の余韻になって続いています。
・・・
それとアルバムの全部が『CAROL』の曲ではなく
中には映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』や映画『ぼくらの七日間戦争』、アニメ『シティーハンター2』の曲なども含まれています。
『CAROL』の曲と混ざった曲順になっているので
その意図が気になりながらも、そこは分けて聴いたり、全部をまるっとキャロルたちを浮かべながら聴いてみたり。
自分なりにキャロルたちのお話と繋げながら浸っていたコンセプト・アルバムでした。
『CAROL』関連商品
書籍はリンクを貼ろうとしたけど新品が見つからず。
いつかまた新しいのが出たら…いいなあ。