『血の轍』3巻 母への思いよりも反抗心が勝った静一【あらすじ・感想】
やっほの東です。
今回は『血の轍』第3集について。
作者は押見修造(おしみ しゅうぞう)さん。
『ビッグコミックスペリオール』にて
2017年から2023年にかけて連載されていた作品です。
静一は、第2集で描かれていたよりも
相当な精神的ダメージを受けていました。
そして静子に対して
思っていたことを
抑えきれなくなっていた静一。
けど相手は母親ではあるけど
やっぱり静子なのでした。。。
ネタバレがあるので
それでも良い人だけ進んでください。
あらすじ
田舎に暮らす長部家は、3人家族でした。
まるで恋人のようにして
静一に接してくる母の静子。
父の一郎は、物静かな人です。
しげるに静子が重症を負わせてから
世界が変わってしまった静一。
そんな中、いつも通りな静子と
様子がおかしい静一の日常は、続いていきます。
あの物静かな一郎の様子にも変化が。
静子も本心を漏らすようになってきました。
登場人物
■長部 静一(おさべ せいいち)
中学2年生の主人公。
静ちゃん(せいちゃん)の
愛称で呼ばれています。
今までの穏やかそうな一家はなんだったのか。
静一が心配です。
■長部 静子(おさべ せいこ)
静一の母親。
彼女は今までどんなふうに
生きていたんだろうって。
一郎と一緒になったきっかけも
想像がつかないでいます。
■長部 一郎(おさべ いちろう)
静一のお父さん。
彼の怒っている様子ですら安心するものに。
静子に怒れる人は、少ないと思います。
■吹石 由衣子(ふきいし ゆいこ)
静一と同じクラスの女の子。
様子がおかしいと
気づき始めていた由衣子。
静一のそばを離れないでほしいと思った。
■ 三石 しげる(みついし しげる)
静一のいとこ。
彼の未来はどうなってしまうのか。。。
感想
ちぐはぐな一郎と静子
千切られた手紙が
ベッドの上に散らばっていました。
そこには静一と静子が
2人で横になっています。
とその時、様子を見に来た一郎の姿がありました。
ヒイイイってなりながら
その場面を見てた。
動揺している一郎に対し
静子は堪えていたことを
爆発させていきます。
最初は、状況が把握できず
ただオロオロしていた一郎。
そんな彼に、涙を流しながら
「なーんにもわかんないんだいね。」
と言う静子でした。
病院へ行きたくないと話す
静子に、それだけのショックを
受けてるんだと
一郎は思い込んでいました。
けど実際違うのは
読んだ人ならわかるはず。
自分も静子たちと
同じだと言う彼の言葉に
何がわかるんだと
静子は爆発してしまいます。
けど泣き叫んでも
嘘はつき続ける静子です。
それでも叫ぶだけ叫んで
スッキリしたような表情に。
そして由衣子が書いた手紙を
掃除しようとする彼女は
ひとりご機嫌そうでした。
静一はというと
一言も話すことはなく
ただ呆然と、両親を
見ていることしかできませんでした。
静子の言う
何も分かってないというのが
しげるのことだけを指しているのか。
彼女は、今回のことだけじゃなくて
もっと前からのことも含めて
叫んでいたんじゃないかなって。
そう思う爆発でした。
静子は、どんどん怖くなっていく。
叫ばなくても
急に小さく笑い出したり。
その不安定さに
こっちもグラグラしていました。
いつスイッチが入るか分からないから
1度スイッチを入れてしまったら
相手がおさるまで待つしかない。
自分の姉家族と仲のいい一郎には
想像もつかないことです。
けど静子は、そういう部分を
これまでずっと静一の為
表に出さないできました。
それが今回のことで
余計に深く親戚同士で
関わるようになったからか
ほっといてほしそうだった。
けど重傷を負わせたのは静子です。
このことも知らない一郎だけど
親戚に対しての静子の気持ちとか
何も知らない彼は
彼女と、今までどう過ごしてきたんだろうと。
静子も、どういう妻でいたのか。
表面の穏やかな姿しか
知らないできた一郎が
気の毒にも思えてきました。
けど静子も
ずっと抱え込んできた人で。
お互いを理解し合うのって
家族でも簡単ではないのを、2人の会話から思いました。
その数日後にも
2人は口論になり、今度は
消えたいと静子が言い出します。
静一が生まれてから
ずっとひとりぼっちだと。
挙句には、全部消してしまいたいとまで
言い出すように。
そしてまたブツブツ言いながら
何もないところを撫でる静子がいました。
それを窓の外から見ていた静一。
この出来事に、彼の心は
耐えられるのかが心配でした。
普通に喋ることができなくなってしまった静一
静一は、しげるの一件以来
普通に言葉を発することが
できなくなっていました。
「別に」って言うだけでも
「ベっべっベっ」となってしまいます。
けどその状態の静一に対し
静子はいつも通り。
彼女が何を思っているのかは
まったくわかりません。
けど一郎の心労は
すごそうだと感じています。
そうしているうちに夏休みも終わり、学校がスタート。
問題は会話の時でした。
けど友達たちは
近所の人のように奇妙に思うどころか
笑いの腕を上げたなと。
静一が笑われることに対して
どう思ったかは分からないけど
自分は、彼らの笑いは
ここ最近で一番安心するものでした。
そして吹石 由衣子
(ふきいし ゆいこ)との時間がやってきます。
彼女からの告白の返事を
まだしていませんでした。
彼女は友達で唯一
静子を知っている人です。
そんな由衣子に
ママがいるからごめんと
泣きながら伝える静一は
本心とは、どこか違うことを
言ってそうに見えました。
静子との関係を
心配してくれる彼女に
本当は助けを求めてそうに感じています。
一郎と一緒にしげるのお見舞いへ
久しぶりの対面でした。
崖の下で倒れていた時は
血だらけの状態でも
目で何かを言いたそうにしていた、しげる。
けど今の彼は
血はキレイになったものの
目の焦点を合わせることも
ままならない状態でした。
しげるのお母さんも
痩せ細って
あの元気有り余ってそうな
彼女はもういません。
けど、うまく話せない静一に対し
優しく頭を撫でてくれるおばさん。
窓の外から見ていた
静子が、何も無い宙を撫でる手が
頭に浮かびました。
けどおばさんの手は、温かそうで。
撫でられながら
話しを聞いているうちに
泣き出してしまった静一なのでした。
もう何回も静一が
泣いているところを見てきました。
けど静子の前で泣いていた彼とは違う静一が。
中学2年生の、静一の涙でした。
学校での時間や一郎
おばさん、しげるとの時間は
静一の感覚を、少し戻してくれていたようでした。
静子の前で大人しくするのをやめた静一
真夜中の玄関でのこと。
帰ってきた静子に
抱きしめられて、ちょっと潤むも
この時の静一は違ってました。
しげるのところに
行ったことが、バレてしまいます。
そして、一郎にムリヤリ
連れて行かれたように思い込まれ
「つらかったんね!」と話す静子でした。
静一が、なんとか言葉を
発しようとするよりも先に
静子が話を進めていっちゃうっていう。
その同情している様子が
前に静子を激怒させた
一郎と重なっていました。
立場や内容が変わりながらも
静一に、自分がされたことと
同じことを、静子はしていたのです。
彼女の妄想はエスカレートし
家を出ようと考えます。
頷き、言うことをきく
静一に、静子はキスを。
とそこで、静一が吐きそうになって
彼女を拒絶するのでした。
たくさんえづいたからか
そのままの勢いで
彼女を跳ね除けのけた静一。
彼は久々、普通に話せるようになっていました。
そして以前
盗み聞きしていたことを
静子に聞かずにはいられませんでした。
けど問い詰めるような質問に
静子は一切答えず。
自分が死ぬか
静一を殺すかしか浮かばない
彼女は、もうくるとこまできてると思いました。
「こどものくせに。」と
背を向けて吐く彼女に
静一の話しは、聞いてもらえそうにありません。
『血の轍』は
登場人物の表情が
1ページにドーンと大きく
描かれていることが多いです。
その中でも、ヒョエエエっと
くるものが増えてきていて。
まだ第3集なのにってなっています。
先が思いやられる展開でした。
コミック
関連記事
『血の轍』4巻 静一を変えた由衣子との時間【あらすじ・感想】
ヤッホの東です。 まだまだ深みへと、連れて行かれそう。 今回は『血の轍』第4集のことを、書いていきます。 作者