【ネタバレ注意・あらすじ感想】『血の轍』17巻 静子と静一、最後の時間 【完結】
こんにちはの東です。
今回は『血の轍』第17集、最終巻について書いていきます。
作者は押見修造(おしみ しゅうぞう)さん。
『ビッグコミックスペリオール』にて
2017年から2023年にかけて連載されていた作品です。
最後まで読んだ人にしか
得られない感覚が。
老婆の静子と、そばについている静一。
昔のキレイな静子と
子供に戻った静一の最後の時間が描かれています。
ネタバレを含むので
それでも良い人だけ進んで下さい。
あらすじ
田舎で暮らしていた長部家は、3人家族でした。
主人公の静一と
静一に異常な愛情を注ぐ母の静子
そして父の一郎は既に他界。
そして36歳になった静一に
中学の時以来になる
静子との再会の時がやってきます。
大人になった静一が
静子と向き合う様子が描かれていました。
登場人物
■長部静一(おさべ せいいち)
中学2年生だった静一は、36歳に。
彼女を最後まで見ることを誓った静一。
彼がもし、今の静子を
そばで支える役割を
放棄していたらって思った。
するとこのラストにある
カラーページが、より優しく感じました。
■田宮静子(たみや せいこ)
長部の苗字でなくなった静一の母。
階段から転落し
様子が一変してしまった彼女は
「もう…このままで…いいです」と
そう言ったきり言葉を発することもなくなっていました。
けど昔の姿では
いろんな表情を見せて笑っている静子。
その差の大きさにきてました。
感想
親子最後の時間
「解けていく二人 轍の物語、完結。」
帯に書かれているこの文章と
笑顔の田宮静子(たみや せいこ)
長部静一(おさべ せいいち)。
「このクソ親。地獄におちろ!」
その言葉を笑顔で発する静一と
同じく笑顔の静子が、帯に写ってました。
第14集から、巻末に書かれてきた
押見修造(おしみ しゅうぞう)さんのメッセージ。
最終巻まで読み終えて
これまでのを読み返さずにはいられないものでした。
途中までは予感だったのが
ある時、確信に。
けどそんなことがってなってました。
今、手に持って
読んでいるものは漫画なんだって
意識して読んだりしたことがあります。
そういう心の声も
最後の最後のページまで
いった時には、薄らいだ感じが。
霞の中になのか
あの穏やかな空気の中になのか
溶けていったような気がしてます。
本を閉じた時、そばで
車の走る音とかは聞こえるんだけど
周りが静かに感じる
不思議な感覚になっていました。
階段から転落した静子。
彼女の瞳に映っていたのは
そこにいるはずのない親子でした。
彼らが、生きる気力を
吸い取ってしまったかのように
それからの静子は別人になってしまいます。
やっと静子と静一が
笑みを浮かべて、向き合えるようになった直後のことでした。
今にもこぼれ落ちて
無くなってしまいそうな静子を
「僕が見る」と。
そう言う静一の瞳には
光が宿って見えていました。
静子を背負って歩き出す静一。
第16集のことです。
なら2人を最後まで見るのは
読者の自分たちなんじゃと。
そんな心持ちで読んだ最終巻でした。
これまであまりに辛いことの連続で。
だけど、そういう時間には
必ず終わりがあるのを
信じたかったのかもです。
静一が、どんなふうに
人生を歩んでいくのか
どんな気持ちになっていくのか。
「本当に描かなければいけないことだけを描こう、余計なことは入れずに」
「ずっとそれだけを、描き尽くすところまで進もう」
とあとがきにありました。
本編のお休み回のような
ストーリーは無く
静子との間の出来事などがひたすらに。
最初は、漫画の紹介にあった
毒親の言葉のインパクトに
釣られて、毒親ヤバすぎるみたいに
思っていた人です。
それが段々変化していって
新章に突入し、押見修造さんのメッセージと一緒に最後へ。
幸せと残酷
ごめんなさいと、ありがとうの
言葉が一緒に書かれている最終巻。
静一と静子は
これまでにない様子で
最後の対話を重ねるのでした。
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