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【ネタバレ注意・あらすじ感想】『血の轍』16巻 静子と静一の過去の答え合わせ

マンガ・アニメ感想

こんにちはの東です。
今回は『血の轍』第16集のことを書いていきます。

作者は押見修造(おしみ しゅうぞう)さん。
『ビッグコミックスペリオール』にて
2017年から2023年にかけて連載されていた作品です。

第16集は、静子との答え合わせの巻でした。
ここにきてやっと。
静一の記憶も危うい為
今真実を知る人は、静子だけなのです。

ネタバレを含むので
それでも良い人だけ進んで下さい。

あらすじ

田舎で暮らしていた長部家は、3人家族でした。
主人公の静一と
静一に異常な愛情を注ぐ母の静子
そして父の一郎は亡くなってしまいます。

36歳になった静一に
中学の時以来になる
静子との再会の時がやってきます。

大人になった静一が
今の静子と向き合う様子が
描かれていきます。

 

登場人物

■長部 静一(おさべ せいいち)
中学2年生だった静一は、36歳に。
彼が変わった巻でした。

「これから、私の人生がはじまるの。」
静子が物語の中で
何度か言っていた言葉です。
静一がこの言葉を使うことはありません。

けどいつもと同じように
過ごしていても、彼の中で
新しいものが芽生えてきているように見えました。

■田宮 静子(たみや せいこ)
長部の苗字でなくなった静一の母。
昔の静一の目に映っていた
静子の姿は、もうありません。

あまりに弱々しく
少し前まで静一の頭の中にいた
怖さを感じる静子との差が。

静子に過去と向き合う必要が
あったように
静一にも今の静子と向き合う
必要がありました。

■三石 しげる(みついし しげる)
静一のいとこ。
彼は静一の頭の中にいた人ですが
しげる本人なのではと
自分は思ってしまいます。

そして静子の前にも姿を現したしげる。
タイミングと様子に
ドキリくるものがありました。

 

感想

静子と静一の答え合わせ

1巻では中学2年生だった
主人公の長部 静一(おさべ せいいち)。
彼も今では36歳の大人です。

けど彼は未だ当時のことに苦しんでいました。
静一にだけ見える死んだ
三石 しげる
(みついし しげる)
は今も一緒です。

他にも母の静子(せいこ)
昔と今の姿が混ざって
彼の目に見えていたりと。

頭の中のものと
現実がごっちゃになっている状態で
彼は毎日を過ごしてきていました。
 

彼自身が、このことに
気づき始めたのは
今の静子と再会してからです。

彼女と離れてから
20年ほど経っており
髪も黒から真っ白に。

そうでなくとも
静一の中の静子は
彼が幼い頃のままで止まっていたのです。

そう考えると、再会も
静一にとっては30年くらいが
一気に進んだ感覚になっていそうでした。
 

静子と昔の記憶を辿っていった静一。

しげるを崖から突き落としたのは、静子なのか。
幼い静一を高台から投げ落としたのは、静子なのか。

昔のアルバムと一緒に
記憶が戻ってきた静子との
答え合わせがありました。
 

わからない、わからないと
彼女は繰り返していたものの
本当のことを知っているのは、静子だけなのです。

ここまでの道のり。

静一の道は
振り返るのも覚悟がいるような
険しかったでは済まない道です。

やっとと言うにはあまりにも長く
けど真実が明かされる瞬間は
ほんの僅かなものでした。
 

静一と静子、そして白い猫が
明るい景色の中にいる様子が描かれていきます。

物語が始まった時の
静子と静一が入れ替わったような時間です。

その景色があまりに優し気で
悲しくなってくるぐらいに
幸せそうな2人の姿が。

たんぽぽの綿毛のように感じる
2人の時間がありました。

 

静子の前に現れた三石しげる

束の間の幸せな時間。
ですがそれは、ほんのわずかなものでした。
なので余計に光が刺して感じています。

それでも過去にあったことの
真実を知れた静一。
彼にだけ見えていた
しげるにも変化があり
ひと段落と思った頃でした。
 

病院から掛かってきた一本の電話。
静子が病院に搬送されたと
静一に連絡が入ります。

急いで病院に向かった彼の見た
静子は、本当に静子?と
言いたくなるような表情をしていました。
 

ついこの間、過去と向き合い
静一にありがとうと言った時の
笑みを浮かべた彼女は
どこへ行ってしまったのか。

表情を無くした静子は
「もうこのまま…なにもしないで…」と呟くだけでした。
 

静子は、やっと生気を
取り戻してきていたのに。
静一も生活に変化が出てきたところで
この出来事でした。

振り出しどころか
彼女は自分で何もやろうとしません。
静一がいなければ
ご飯も食べず、トイレにも行かず。

本当に何もしないで
このまま死んでしまいそうでした。

 
静子が病院に搬送される前
彼女の見開いた目に映っていたのは
しげると、もう1人の姿が。

どうしてそこに彼らがいたのか。

静子が、そのことで
何を思っているのかも
誰も聞く人はいません。

過去と向き合い
静一との様子も
変わってきたところでの、この一件。

変わり果てた静子と
目に意思を取り戻してきていた
静一ですが、この出来事が
これからにどう響いてくるのか。
節目の巻に感じています。

 

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