漫画『エンジェル伝説』顔と心の食い違い伝説【あらすじ感想】
『エンジェル伝説』の世界に行ってきました。
作者：八木教広
月刊少年ジャンプで、1993年から2000年にかけて連載された全15巻（文庫版、電子書籍は全10巻）の漫画です。
『エンジェル伝説』のあらすじ
悪魔のような顔をもつ高校1年の北野誠一郎（声：飛田展男）。
大人子ども関係なく周囲から悪魔と恐れられている北野ですが
彼は見た目に反して、とてもピュアな心の持ち主でした。
そうとは知らない人たちにより、転校初日から不良と勘違いされた北野は
高校生活の中で、数々の伝説を築き上げていくことになります。
『エンジェル伝説』の感想
これは北野誠一郎の物語です。
お話には彼の日常が詰まっていました。
けど高校の楽しい行事だったり、悪魔のような特殊能力に目覚めた北野、ではなく
彼に対する周りの誤解が、大きな波紋を呼ぶ様子が描かれています。
とことんまで彼のお話でした。
多くの誤解からできていった北野の伝説
おもしろいのが全84話の中で、誤解でできている部分がどれだけ占めているんだろうということ。
碧空高校に転校した初日に、3年の黒田清吉（声：石井康嗣）が率いる番長グループを解散に追い込んだ北野。
解散するきっかけの出来事が起きた時の様子を
黒田側から見ると
麻薬中毒者で、そうとうな修羅場をくぐっているであろう大悪党の北野が
悪魔のような顔で折れた太い木をもって攻めてくるという。
北野の姿がそう見えていた黒田たち。
対する実際の北野は、校庭周辺のゴミ拾いの最中に見つけた太い木を抱えながらも
遭遇した黒田たちが怖くて、むしろその場から逃げようとしているまさかのエピソード。
さらに北野は足が震えて上手く動けず
黒田が見ているのとは別人の彼がいました。
絶対にこうだっていうフィルターのかかった黒田たちには
そのフィルター越しに見る北野が、相当恐ろしく見えていたんだろうなと。
意識の向けたものが増大して感じることがあるというのを聞いたことがあるけれど
まさにそれが生徒や教師たちの間で起きていました。
・・・
たくさんの人をまず顔だけで怖がらせることのできる北野。
顔の怖さは、本当の北野がどういう人なのかがわかると
彼の友達も言っていたように、怖さとは違う面が見えてきます。
ですがほとんどの生徒が、北野を悪魔のような人だと捉えたままでした。
その怖さや噂から北野に抱く恐怖心。
そんな周囲の期待とは裏腹に、実際は誰よりも純真な北野。
広まった北野のデビル伝説を知っていくと
本当に怖いのは、真実に気付かずに
誤った認識で対象を捉えていることなんだと思わずにはです。
碧空高校のドタバタ劇場は、北野のピュアな心がまったく伝わらず
彼もまた周りを勘違いしたままで噛み合っていないけど、それでも進んでいきます。
同じものを見ていながら、こうも違うのかとおもしろかった部分でした。
北野の噂に集まってきた未来の友達
このお話は本当にシンプルです。
色々な要素を付け足していったおもしろさのある作品が多いなかで
『エンジェル伝説』はその逆をいっていると思うストーリーでした。
・・・
その中で強さを求める男子や、そこに女子も混ざった闘いが描かれていきます。
北野自身には強敵を倒して名を広めたいなどという思いはなく
強くなるための修練を積んでいるわけでもなさそう。
もう運が味方してるとしか思えないようなバトルを
彼は絡んできた不良や、強い相手との間で繰り広げていきます。
そうして北野は色々な人と出会い
いつの間にか友達と呼べる人が、当たり前のようにそばにいる生活を送っていました。
平穏なはずの日常にあえて自分を危険に追いやり
闘うことを喜びとする個性豊かなキャラクターたちです。
悪魔のような顔のために、以前は友達のいなかった北野ですが
広まった噂が、本来縁のなかったところで生きる人たちと一緒に過ごすきっかけに。
噂が無ければ、絶対に関わることのなかったであろう繋がりができていきます。
それが誤解から生じたものでも、後に北野にとって大切な存在になる人たちを連れてきていたのでした。
不幸に見えることの中にあった幸運
彼らの日常を見ていると
ふとした時にどこか懐かしさを感じることがあります。
そこに天使な北野の心の声も入ってきて
学校生活の懐かしくて優しい部分を思い出してました。
まだ学校やその周辺が世界のすべてだった頃の
そこしか無い感じ。
その熱量は喜怒哀楽のいろんな感情をつれて、彼らの青春を彩っていきます。
・・・
幸運は不幸の姿をしてやってくる。
これも知られている言葉です。
学校中から悪魔認定されることがなければ
彼の大切な人たちとの関係が深まることはありませんでした。
また悪魔のような見た目をしながら、実は天使のハートをもつ主人公ですが
北野の友達になった人には、これほどまでのサプライズはないであろうという
他の人には理解できないところで北野との仲が深まっていきます。
同じ学校にいながら、北野と彼の友達だけが別世界。
校内に広まる噂に囲まれながら彼の周囲にいる人たちは、何を信じて北野とどう接していくのか。
そうした部分も見どころの作品でした。
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