のほりひがし。 東の感想ブログ

Netflixドラマ『地面師たち』続編小説『ファイナル・ベッツ』含めたあらすじ感想

ドラマ感想

Netflixシリーズ『地面師たち』を観てました。

2019年に発売された新庄耕による同タイトルの小説が原作
大根仁監督の手で実写ドラマ化が実現した作品です。

実話の不動産詐欺事件がもとに。
土地をめぐり騙す側、騙される側
そして地面師たちを追う者との間で繰り広げられる100億円規模の騙し合い。

またその内部にある派閥抗争や、事件に巻き込まれた人など
三つ巴の戦いはスリルに満ちたバクバクの展開でした。

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大根仁監督は2017年に起きた地面師詐欺事件に、当時から注目されていたとのこと。
大手不動産会社が55億5千万円を、10人の地面師によって騙し取られたという詐欺事件です。
そして後に、大根監督が書店で目にした『地面師たち』の書籍。
これらがきっかけとなってドラマ化の話が誕生したのでした。

あらすじ感想

地面師とは。

他人の土地の所有者になりすまし、虚偽の売却を持ちかけて大金を騙し取る詐欺グループです。

なぜ大手のプロが55億円にも及ぶ詐欺被害に遭ってしまったのか。
地面師の巧妙な手口がドラマを通して、映像で明らかになっていきます。

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メンバーは
リーダー:ハリソン山中(豊川悦司)
交渉役:辻本拓海(綾野剛)
交渉や仲介担当の法律屋:後藤義雄(ピエール瀧)
偽物の地主をキャスティングする手配師:稲葉麗子(小池栄子)
情報担当の図面師:竹下(北村一輝)

地面師集団は、この5人からなる詐欺グループです。

そして補佐として、免許証などの偽造担当兼ハッカーでもあるニンベン師の長井(染谷将太)の存在も。
長井は離れた場所から、地面師たちのサポートにあたっていました。

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ドラマの始まりは彼らの手口がどのようなものか、一連の流れを把握するフェーズ。
そして次に100億円規模のヤマを狙うための、彼らの計画が練られていく段階に入ります。

地面師たちは業界最大手のディベロッパーである石洋ハウスに
東京の高輪にある寺の駐車場の売買取引をもちかけて、100億を騙し取ろうとしていました。
綿密なミーティングを重ねて進められていく計画と
そこにこの完璧な編成で組まれたグループの人間模様が合わさって描かれていきます。

ですが凄腕のメンバーが揃い更なる大きなヤマを狙おうとしたことで、この地面師集団に綻びが。
彼らでさえ想定外の事態が待っていました。

そんな中でもハリソンには、ピンチや焦りなどは存在していないかのよう。
その代わり話が進むにつれて、ハリソンの奥底にある狂気が発露していきます。
彼の内にあるものと対峙できる人間は、死を知っている人だけでした。

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地面師たちは全員が極悪でありながら、一人ひとりが役割をもち強烈な個性を放つ集団です。
けど一般市民が容易に感情移入できる存在ではなく
次々起こる事件にのまれるようにして、ワアアアッとクライマックスへ。
ドラマの疾走感に次へ次へって、どんどん進みたくなる面白さでした。

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また追う側である警察によって暴かれていく拓海の過去。
警察は地面師を追いながら、その糸口となった拓海の過去を徹底的に調べ上げていくことになります。
ハリソンに気に入られて始まった2人の師弟関係。
どん底にいた拓海を地面師の交渉役として育てたのはハリソンでした。
なのでハリソンは拓海を、他の地面師たちとは違い優遇している場面が多々あります。

人情なんて知らなそうなハリソンにとって、拓海はどんな存在だったのか。
なぜ彼を地面師として育てようとしたのか。
逆に拓海にとってのハリソンはと、2人の関係性にも注目の作品です。

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そして原作小説との違いは、自分にとってだいぶ大きいものでした。
ドラマに出ていた人物が小説にはいなかったり、小説では死んでいない人がドラマでは・・・と。
ドラマにいて小説にいなかった人の役割だったり
ドラマで死んでしまった人たちのそのシーンが、どれも強烈だったので
登場人物の違いや場面のある無しで受けた印象の違いが、すごく大きかったです。

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またすでに原作のストーリーを知っていたとしても、最後まで何が起こるかわからない展開が待っています。
原作とドラマ版、2つの『地面師たち』。
同じだけど違う物語が描かれていました。

 

続編『地面師たち ファイナル・ベッツ』あらすじ感想


石洋ハウス事件の後の物語です。
ハリソン山中は日本を離れ、シンガポールに身を隠していました。
石洋ハウスの事件がきっかけで、それまでの地面グループは解散。
刑務所にて服役中の拓海は警察側につくことになります。

地面師集団VS警察、拓海。
追う者、追われる者の戦いが続く中、ハリソンは更なるヤマを狙いに新たな地面師グループを編成。
大きく動けないハリソンの代わりに、新しいメンバーが表に立ち、作戦を遂行していきます。

どんな人が地面師のメンバーになるかで、物語の空気が変わる面白さ。
今回は深い闇を抱えた拓海ではなく、カジノで大敗し無一文になった元Jリーガーの稲田がハリソンにグループへ招待される人物に。

どん底を知っていながらも陽気な雰囲気の稲田。
ハリソン相手に怯みつつも際どいところまで突っ込んでいく、彼の恐ろしさを知らない男でした。

そしてディベロッパーの吉沢宏彰、マレーシア出身の美女マヤたちと共に
大使館職員の川久保や、ハリソンと旧知の仲である菅原たちの手を借りながら
前作の100億を超える200億円規模のヤマを狙う計画を企てていくことになります。

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一方の警察は、新米刑事の佐藤サクラが中心となって捜査が進められていきます。
拓海によってハリソンの有力な情報を掴むこととなった警察側。
彼らはその情報をもとに地面師たちへと攻め込んでいくのでした。

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舞台は北海道。
地面師たちの犯行手口のベースは変わらず
メンバーがガラッと入れ替わっての、大きな賭け。

またシンガポールの大手不動産ディベロッパーの御曹司
ケビンがターゲットとなって、前作よりも大きなスケールで描かれていきます。

前回よりずっと困難なヤマに賭けるものの、以前のグループ程の見事な連携プレイを引き出すことは難しく。
稲田にとっては初めての犯行です。

また宏彰は、ハリソンと共に詐欺を成功させたことはあっても
前のメンバー程の手だれではない様子でした。
そして今回は手配師、法律屋、図面師などの明確な役割分担はなく
稲田と宏彰が中心となって、周囲から情報を得たりしつつ進んでいくという違いもありました。

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作品に手口の巧妙さや、様々な想定外の事象によるスリルなどを多く求めるのか。
人の深層心理を突くようなスリルが、より濃く感じられるかの違いがありました。

今作のターゲットは禅の道に励み、親友を大切にし
目の前に現れた美女に恋をし、父に認められたいがために大きな勝負に出ようとしていた人物です。
なぜケビンが選ばれてしまったのか不憫でならない展開が待っています。

そんなケビンが全てを失っていく様を、たまの想定外に冷や汗をかきつつも
先の200億を見て落としにいく地面師たち。
さらにそれを上から見ているハリソンや読み手にと。

稲田と宏彰を見ていると、クライムサスペンスなことを忘れそうになる時がありますが
読み終わった後は、前作とまた違う怖さが後からくる作品です。

前作はプロの地面師集団に一気に引き込まれていくのですが
今回は既にハリソンのやり方を知っているところに
地面師の世界に足を踏み入れたばかりの稲田が中心となって進んでいく犯行。

前のような疾走感よりも、その時にはいなかったタイプの人の精神状態をじっくり辿っていくものに感じています。
人やシチュエーションなどを見てると、運がハリソンの味方をしたって言ってしまいそうになる200億のヤマでした。

 

原作小説

 

配信


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